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  • 2018/12/11

不動産テックをわかりやすく解説 今なぜ重要?主要12分野の実態は?

不動産業界は現在、大きな課題を抱えています。生産性の低さやITリテラシーの不足は顕著で、これから人手不足が進むと、危機的状況に追い込まれる企業も少なくないでしょう。そこで今注目されているのが“不動産×テクノロジー”の「不動産テック」という分野です。本稿では、不動産テック協会設立メンバーであり不動産テックカオスマップを作成した赤木正幸氏が、不動産業界の現状と課題、そして活用分野ごとの不動産テックの特徴について解説します。(2018年7月初出、2018年12月更新)

執筆:リマールエステート 代表取締役CEO 赤木正幸、構成:編集部 渡邉聡一郎

執筆:リマールエステート 代表取締役CEO 赤木正幸、構成:編集部 渡邉聡一郎

森ビルJリートの投資開発部長として不動産売買とIR業務を統括するとともに、地方拠点Jリートの上場に参画。太陽光パネルメーカーCFO、三菱商事合弁の太陽光ファンド運用会社CEOを歴任。クロージング実績は不動産や太陽光等にて3,500億円以上。 2016年に不動産テックに関するシステム開発やコンサル事業等を行なうリマールエステートを起業。日本初の不動産テック業界マップを発表するとともに、不動産テックに関するセミナー等を開催するほか、不動産会社やIT企業に対してコンサルティングを実施。自社においても不動産売買支援クラウド「キマール」を展開。2018年、不動産テック協会の代表理事に就任。 早稲田大学法学部を卒業後、政治学修士、経営学修士を取得。コロンビア大学院(CIPA)、ニューヨーク大学院(NYUW)にて客員研究員を歴任。

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今注目を集める不動産×テクノロジー。事例や図をもとに、わかりやすく解説する
(©vege - Fotolia)


不動産テックとは何か

 不動産テック協会の定義では、「不動産テック(Prop Tech、ReTech:Real Estate Techとも呼ぶ)とは、不動産×テクノロジーの略であり、テクノロジーの力によって、不動産に関わる業界課題や従来の商習慣を変えようとする価値や仕組みのこと」です。

 単にインターネットやITツールを利用するだけではなく、テクノロジーを活用してこれまでの不動産ビジネスを変えようとしていることに焦点が置かれました。

 「不動産ビジネスの資料づくりにエクセルを使っているけど、弊社は不動産テック企業と言ってもよいでしょうか?」というような質問を実際に受けたことがありますが、流石に不動産テックと言うのは、はばかられるのではないかとお答えしたことがあります。これを不動産テック企業とした場合、メールを用いてビジネスを行っている企業、つまりほぼすべての企業が「テック」企業になってしまうためです。

 この2、3年の動きとしては、海外や新興ベンチャー企業を中心に、シェアリングやクラウドファンディング、IoTやVRなど新しいテックが取り沙汰され注目されています。

 ITといえば0から1のイメージですが、特に日本の不動産テック分野ではまず不動産ありきなのが特徴です。それは、「情報化社会」などの文脈で語られる“情報”という言葉が、不動産業にとっては異なる意味を表すためです。

 不動産業が一番欲しい「情報」とは、「自分しか知らない情報」です。さらに、情報を第三者に渡すときは、内容や条件を相手によって変えることもあります。そのため、ひとつの物件について全体像を把握している人が誰もいない事態が起こります。弊社のITエンジニアは、この状況を「隠蔽と捏造の世界」と呼んでいます。

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不動産業界の暗黙のルール、「隠蔽と捏造の世界」

 このような「隠蔽と捏造の世界」は、一見するとIT化とは逆行しているように見えます。しかし、各々が持つ情報を可視化することは業界としてタブーとされており、実際、これまでにこのタブーを破ろうとして失敗してきた企業もいくつかありました。

 そのため、こと日本においては、この業界のルールを守りながらいかに業務を効率化するか、いかに物件に付加価値を付けるか、という視点で不動産テックが活用されているのです。

 なお、海外の方が進んでおり、特に不動産会社の業務支援系のテクノロジーは細分化されています。DIYも盛んです。アメリカではMLSという物件情報データを使って各社が物件の価値を推測したり、Zillowやredfinなどのポータルサイトがどんどんデータを集めています。アメリカ以外にはイギリスや中国、インド、東南アジアなども進んでいます。東南アジアはもともとシステムのインフラがないので、導入しやすいという背景もあります。

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アジア太平洋地域の不動産テックの数

なぜ不動産テックが必要なのか

 では、なぜ不動産テックが必要なのでしょうか。不動産業界には、ほかの業界と比べて2つの特徴があります。ひとつはIT投資が少なく、労働生産性が低いこと。もうひとつは、年齢層が高くITリテラシーが低いことです。

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日本の不動産業界のIT資本投入は米国と比べ1割、労働生産性は4割にとどまる

 これまでは、人海戦術でひたすらアポを取る不動産会社や、顔が見える範囲で仕事をしてきたためITが必要なかった“街の不動産屋”もやっていけていました。

 しかし、今後はどんどん人が減っていきます。効率化と労働生産性を上げるためのテクノロジー導入が必須要件となるのです。

不動産テック市場を網羅的に分析した、「カオスマップ」

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不動産テック カオスマップ(第4版:2018年11月更新)

 2018年11月28日に不動産テックカオスマップの最新版である第4版が発表されました。これは、2018年9月に設立され、私が理事を務める一般社団法人不動産テック協会の活動成果としての発表です。

 筆者は、今回の更新にも関与しましたが、かなり「悩ましい」場面が多く、「このサービスはどのカテゴリーに分類すべきか?」という議論が繰り広げられました。たとえば、「リフォームのマッチングサービスがあった際、マッチングカテゴリーなのか?リフォームカテゴリーなのか?」といった具合に、カテゴリーをまたぐサービスが多かったのです。

 これは、不動産ビジネスが非常にたくさんのジャンルや対象から構成され、それらが組み合わさることから生じる複雑さが理由です。不動産の用途(オフィス、住宅、商業等)、不動産の変更(建設、管理、修繕等)、不動産の顧客(個人、企業等)がそれぞれ組み合わさって不動産ビジネスが成り立っていて、不動産テックもこれに連動して各種サービスや企業が存在します。このことが、不動産テックを捉えづらいものにしている一因でもあります。

 今回の更新においては、このような「悩ましさ」や「分かりにくさ」を少しでも減らすためにカテゴリー定義を作成するとともに、どのようなサービスを掲載しているかを明示するために掲載ガイドラインを定めました。結果として、掲載数は263となり、第3版の1.5倍へと増加しました。

 なお、不動産テックカオスマップは、不動産テック協会サイトでも開示されています。

 下記が、各カテゴリーの定義です。なお、第3版からカテゴリー数は変更されていませんが、「シェアリング」が「スペースシェアリング」に名称変更されています。

カテゴリー名定義
AR・VRVR・ARの機器を活用したサービス、VR・AR化するためのデータ加工に関連したサービス
IoTネットワークに接続される何らかのデバイスで、不動産に設置、内蔵されるもの。また、その機器から得られたデータ等を分析するサービス
スペースシェアリング短期~中長期で不動産や空きスペースをシェアするサービス、もしくはそのマッチングを行うサービス
リフォーム・リノベーションリフォーム・リノベーションの企画設計施工、Webプラットフォーム上でリフォーム業者のマッチングを提供するサービス
不動産情報物件情報を除く、不動産に関連するデータを提供・分析するサービス
仲介業務支援不動産売買・賃貸の仲介業務の支援サービス、ツール
管理業務支援不動産管理会社等の主にPM業務の効率化のための支援サービス、ツール
ローン・保証不動産取得に関するローン、保証サービスを提供、仲介、比較をしているサービス
クラウドファンディング個人を中心とした複数投資者から、webプラットフォームで資金を集め、不動産へ投融資を行う、もしくは不動産事業を目的とした資金需要者と提供者をマッチングさせるサービス
価格可視化・査定さまざまなデータ等を用いて、不動産価格、賃料の査定、その将来見通しなどを行うサービス、ツール
マッチング物件所有者と利用者、労働力と業務などをマッチングさせるサービス(シェアリング、リフォームリノベーション関連は除くマッチング)
物件情報・メディア物件情報を集約して掲載するサービスやプラットフォーム、もしくは不動産に関連するメディア全般


掲載ガイドライン(第4版)

・AI(人工知能)、IoT、ブロックチェーン、VR/AR、ロボットなど現時点において先進的なテクノロジーを活用しているビジネスまたはサービス

・一般的なITやビッグデータを活用することで、従来(インターネット普及以前)には無かった新しい価値や顧客体験をつくりだしているビジネスまたはサービス

・一般的なITやビッグデータを活用することで、従来(インターネット普及以前)には無かった新しいビジネスモデルや収益モデルを実現しているビジネスまたはサービス

・一般的なITやビッグデータを活用することで、既存の業界課題の解決や商習慣・慣例を打破しているビジネスまたはサービス

・一般的なITやビッグデータを活用することで、オンラインプラットフォームを実現しているビジネスまたはサービス

※掲載ガイドライン策定にともない、第3版までは掲載していたものを第4版では未掲載としたもの(Webサイト作成会社、一括査定サービス、オウンドメディアなど)もあります。

 第3版の掲載数は173でしたが、今回の掲載数はその1.5倍の263となりました。不動産情報以外はすべて増加していますが、特に、物件情報・メディア、リフォーム・リノベーション、IoTは前回の2倍以上の増加幅となり大きな変化が見られます。

 増加したサービスの大部分は、前回から今回までの間に立ち上がった新規サービスではなく、既存サービスを今回の更新にあわせて掲載したものです。不動産テックサービスには、個別カテゴリーのなかでもさらに機能特化したものも多く、まだ網羅的に把握できていないことの現れであるといえます。

 ではここからは、カオスマップの分類に従い、各カテゴリーの特徴について説明していきます。

管理業務支援の不動産テック

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管理業務支援の不動産テック一覧

 主に不動産事業者の業務を効率化するシステムを提供しているのがこのカテゴリーです。不動産情報や顧客情報の管理・運営を支援するシステムなども提供しています。この分野はtoBとtoCで大きく様相が異なり、またプレーヤーによって非常に多種多様です。

価格可視化・査定の不動産テック

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価格可視化・査定の不動産テック一覧

 さまざまなデータなどを用いて、不動産価格、賃料の査定、その将来見通しなどを行うサービス、ツールです。

 不動産の価格や価値などを何らかのテクノロジーを用いて算出するサービスに限定しており、いわゆる一括見積もりサイトなどは含まれません。

 価格といっても、自宅マンション等の実需価格を出すものから、投資用不動産の収益価格を出すもの、そして、価格相場を出すものなど、サービスラインナップは増えています。一方で「勘と経験と度胸」、そしてエクセルがいまだなお多用されているカテゴリーでもあります。

 課題を挙げるとすれば、各社がデータを独自に収集して分析しているので、(データを集める)クローリングやロジックが適正なものかの判断が難しい点です。不動産業界の性質上、実際に成約した売買価格や賃料は関係者以外は誰も知りえないためです。

【次ページ】残り10分野の不動産テックと、不動産テック導入の3ステップ

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