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  • 2020/09/28

不動産テックをわかりやすく解説 今なぜ重要?主要12分野の実態は?

不動産業界は現在、大きな課題を抱えています。生産性の低さやITリテラシーの不足は顕著で、これから人手不足が進むと、危機的状況に追い込まれる企業も少なくないでしょう。そこで今注目されているのが“不動産×テクノロジー”の「不動産テック」という分野です。本稿では、不動産テック協会設立メンバーであり不動産テックカオスマップを作成した赤木正幸氏が、不動産業界の現状と課題、そして活用分野ごとの不動産テックの特徴について解説します。(2018年7月初出、2020年9月最終更新)

リマールエステート 代表取締役CEO 赤木正幸

リマールエステート 代表取締役CEO 赤木正幸

リマールエステート株式会社 代表取締役社長CEO。一般社団法人不動産テック協会 代表理事。 森ビルJリートの投資開発部長として不動産売買とIR業務を統括するとともに、地方特化Jリートの上場に参画。太陽光事業会社CFO、三菱商事合弁の太陽光ファンド運用会社CEOを歴任。アセットクロージング実績は不動産や太陽光等にて3,500億円以上。2016年に不動産テックのリーディングカンパニーであるリマールエステートを起業。不動産実務のプロが不動産売買DXを実現するために、不動産売買プラットフォーム「キマール」を開発。また、日本初の不動産テック業界マップを発表するとともに「不動産テック案内所」によって不動産テック情報を発信。不動産テックセミナーやイベントに多数登壇するほか、不動産会社やIT企業に対して不動産DXコンサル、システム開発コンサルを実施。さらに、海外不動産テック企業へのアドバイザリーやパートナーシップ等、活動は日本に留まらない。2018年に一般社団法人不動産テック協会を設立し代表理事に就任。早稲田大学法学部を卒業後、政治学修士、経営学修士(MBA)を取得、政治学博士修了。コロンビア大学院(CIPA)、ニューヨーク大学院(NYUW)にて客員研究員を歴任。

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今注目を集める不動産×テクノロジー。事例や図をもとに、わかりやすく解説する
(©vege - Fotolia)


不動産テックとは何か

 不動産テック協会の定義では、「不動産テック(Prop Tech、ReTech:Real Estate Techとも呼ぶ)とは、不動産×テクノロジーの略であり、テクノロジーの力によって、不動産に関わる業界課題や従来の商習慣を変えようとする価値や仕組みのこと」です。

 単にインターネットやITツールを利用するだけではなく、テクノロジーを活用してこれまでの不動産ビジネスを変えようとしていることに焦点が置かれました。

 「不動産ビジネスの資料づくりにエクセルを使っているけど、弊社は不動産テック企業と言ってもよいでしょうか?」というような質問を実際に受けたことがありますが、さすがに不動産テックと言うのは、はばかられるのではないかとお答えしたことがあります。これを不動産テック企業とした場合、メールを用いてビジネスを行っている企業、つまりほぼすべての企業が「テック」企業になってしまうためです。

 この2、3年の動きとしては、海外や新興ベンチャー企業を中心に、シェアリングやクラウドファンディング、IoTやVRなど新しいテックが取り沙汰され注目されています。

 ITといえば0から1のイメージですが、特に日本の不動産テック分野ではまず不動産ありきなのが特徴です。それは、「情報化社会」などの文脈で語られる“情報”という言葉が、不動産業にとっては異なる意味を表すためです。

 不動産業が一番欲しい「情報」とは、「自分しか知らない情報」です。さらに、情報を第三者に渡すときは、内容や条件を相手によって変えることもあります。そのため、1つの物件について全体像を把握している人が誰もいない事態が起こります。弊社のITエンジニアは、この状況を「隠蔽と捏造(ねつぞう)の世界」と呼んでいます。

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不動産業界の暗黙のルール、「隠蔽と捏造の世界」

 このような「隠蔽と捏造の世界」は、一見するとIT化とは逆行しているように見えます。しかし、おのおのが持っている情報を可視化することは業界としてタブーとされており、実際、これまでにこのタブーを破ろうとして失敗してきた企業もいくつかありました。

 そのため、こと日本においては、この業界のルールを守りながらいかに業務を効率化するか、いかに物件に付加価値を付けるか、という視点で不動産テックが活用されているのです。

 なお、海外の方が進んでおり、特に不動産会社の業務支援系のテクノロジーは細分化されています。DIYも盛んです。米国ではMLSという物件情報データを使って各社が物件の価値を推測したり、Zillowやredfinなどのポータルサイトがどんどんデータを集めています。米国以外にはイギリスや中国、インド、東南アジアなども進んでいます。東南アジアはもともとシステムのインフラが無いので、導入しやすいという背景もあります。

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アジア太平洋地域の不動産テックの数

なぜ不動産テックが必要なのか

 では、なぜ不動産テックが必要なのでしょうか。不動産業界には、ほかの業界と比べて2つの特徴があります。1つはIT投資が少なく、労働生産性が低いこと。もう1つは、年齢層が高くITリテラシーが低いことです。

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日本の不動産業界のIT資本投入は米国と比べ1割、労働生産性は4割にとどまる

 これまでは、人海戦術でひたすらアポを取る不動産会社や、顔が見える範囲で仕事をしてきたためITが必要なかった“街の不動産屋”もやっていけていました。

 しかし、今後はどんどん人が減っていきます。効率化と労働生産性を上げるためのテクノロジー導入が必須要件となるのです。

不動産テック市場を網羅的に分析した、「カオスマップ」

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不動産テックカオスマップ第6版(一般社団法人不動産テック協会)

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不動産テックカオスマップ第6版 英語版(一般社団法人不動産テック協会)

 2020年6月15日に不動産テックカオスマップの最新版である第6版が、一般社団法人不動産テック協会から発表されました。これは、2018年9月に設立された一般社団法人不動産テック協会の業界マップ部会の活動成果としての発表です。

 筆者は、今回の更新にも関与したため、最新版の詳細や特徴について説明します。なお、不動産テックカオスマップは、不動産テック協会サイトにも掲載されています。

 カテゴリーそのものの枠組み変更等は行わず、掲載サービスや掲載会社を精査することに注力した結果、第5版の掲載数305から、第6版では掲載数352に増加しています。内訳としては、56の追加に対して9の削除、結果として差し引き47の増加となっています。削除の大部分はサービス終了によるものですが、サービス統合によって掲載から削除されたものもあります。なお、それぞれのカテゴリーの増減状況は下表を見てください。

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不動産テックカオスマップ第6版のカテゴリー毎の掲載数

 それぞれのカテゴリーの第2版から第6版までの掲載数推移は以下のようになっています。

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不動産テックカオスマップの掲載数の推移

 ちなみに米国はどうかというと、VENTURE SCANNERというスタートアップ企業の調査会社が年に数回発行している不動産テックカオスマップがあります。最新版では1857のサービスや会社が掲載されています。

 ここで日本との比較のため米国の不動産テックカオスマップを掲載します。こちらは、VENTURE SCANNERというベンチャー企業やスタートアップ企業の動向を調査している会社が年に数回発行している不動産テックカオスマップです。最新版においては1815のサービスや会社が掲載されています。日本とは、掲載数とカテゴリーが異なります。

 特徴としては、Home ServicesのようにDIY文化のある米国ならではのカテゴリーが設けられていることや、業務支援が、Property Management、Constitution Management、Portfolio Management、Facility Management、Real Estate Agetnt Toolsに細分化されていることが挙げられます。

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REAL ESTATE TECHNOLOGY MAP
(出典:VENTURE SCANNER)

 米国の不動産テックカオスマップの直近約3年間の各カテゴリーの掲載数推移も、下図に掲載しています。

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米国の不動産テックカオスマップの掲載数の推移

 下記が、日本の不動産テックカオスマップにおける各カテゴリーの定義です(第4版作成時に整理)。

カテゴリー名定義
AR・VRVR・ARの機器を活用したサービス、VR・AR化するためのデータ加工に関連したサービス
IoTネットワークに接続される何らかのデバイスで、不動産に設置、内蔵されるもの。また、その機器から得られたデータ等を分析するサービス
スペースシェアリング短期~中長期で不動産や空きスペースをシェアするサービス、もしくはそのマッチングを行うサービス
リフォーム・リノベーションリフォーム・リノベーションの企画設計施工、Webプラットフォーム上でリフォーム業者のマッチングを提供するサービス
不動産情報物件情報を除く、不動産に関連するデータを提供・分析するサービス
仲介業務支援不動産売買・賃貸の仲介業務の支援サービス、ツール
管理業務支援不動産管理会社等の主にPM業務の効率化のための支援サービス、ツール
ローン・保証不動産取得に関するローン、保証サービスを提供、仲介、比較をしているサービス
クラウドファンディング個人を中心とした複数投資者から、Webプラットフォームで資金を集め、不動産へ投融資を行う、もしくは不動産事業を目的とした資金需要者と提供者をマッチングさせるサービス
価格可視化・査定さまざまなデータ等を用いて、不動産価格、賃料の査定、その将来見通しなどを行うサービス、ツール
マッチング物件所有者と利用者、労働力と業務などをマッチングさせるサービス(シェアリング、リフォームリノベーション関連は除くマッチング)
物件情報・メディア物件情報を集約して掲載するサービスやプラットフォーム、もしくは不動産に関連するメディア全般


掲載ガイドライン

  1. AI(人工知能)、IoT、ブロックチェーン、VR/AR、ロボットなど現時点において先進的なテクノロジーを活用しているビジネスまたはサービス

  2. 一般的なITやビッグデータを活用することで、従来(インターネット普及以前)には無かった新しい価値や顧客体験をつくりだしているビジネスまたはサービス

  3. 一般的なITやビッグデータを活用することで、従来(インターネット普及以前)には無かった新しいビジネスモデルや収益モデルを実現しているビジネスまたはサービス

  4. 一般的なITやビッグデータを活用することで、既存の業界課題の解決や商習慣・慣例を打破しているビジネスまたはサービス

  5. 一般的なITやビッグデータを活用することで、オンラインプラットフォームを実現しているビジネスまたはサービス

 ではここからは、カオスマップの分類に従い各カテゴリーの特徴について、第6版で追加された最新事例を交えながら説明していきます。

管理業務支援の不動産テック

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管理業務支援の不動産テック一覧

 不動産管理会社等の主にPM業務の効率化のための支援サービス、ツールです。不動産情報や顧客情報の管理・運営を支援するシステムなども提供しています。この分野はtoBとtoCで大きく様相が異なり、またプレーヤーによって非常に多種多様です。

 まだBtoCのサービスが多く、BtoBのサービスは発展途上中です。これは、不動産テック企業にBtoB不動産事業に精通した人材が少なく、さらに不動産業界が独特の商習慣等を持てっていることから生じるミスマッチが原因です。

 第6版で追加されたサービスをピックアップするなら、不動産テック特化型iPaaSサービスとして、急増する不動産テックサービス間のクラウドデータ・自社データを連動し一本化するSynca、玄関口に吊るすだけで、在不在に関わらず自宅玄関前で荷物が受け取れる置き配バッグサービスであるOKIPPA、企業の総務・管財部門で管理するさまざまな不動産情報や履歴、契約関係書類や建築図面などを網羅したCRE(企業不動産)情報整備ツールのCREXαが挙げられます。

仲介業務支援の不動産テック

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仲介業務支援の不動産テック一覧

 不動産売買・賃貸の仲介業務の支援サービス、ツールです。

 賃貸仲介系への活用が近年増えていますが、賃貸仲介は利益幅が小さく労働集約的なビジネスでもあるため、不動産テックサービスによる業務効率改善に期待が持てる領域です。これまで仲介業務では、モノとヒトを一元管理しなければならず、単純に既存のCRMを適用すれば効率化するというわけではありませんでした。そこでエクセルと記憶に頼っていたのですが、この分野のサービスによってCRMと物件管理を結びつけることが可能になるのです。

 第6版で追加されたサービスは、不動産会社間の業務を効率化するものが多く、BtoBサービスが増加傾向にあります。第6版で追加されたサービスをピックアップするなら、売買不動産仲介営業を効率化するシステムであるプロポクラウド、携帯電話やスマートフォンのSMS(ショートメッセージサービス)で反響を長期追客するための不動産業界に特化したサービスであるSMSハンター、RPAで成果を最大化する自動入物件入力ツールの入力速いもんなどが挙げられます。

【次ページ】残り10分野の不動産テックと、不動産テック導入の3ステップ

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