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  • 2019/09/13

不動産テックをわかりやすく解説 今なぜ重要?主要12分野の実態は?

不動産業界は現在、大きな課題を抱えています。生産性の低さやITリテラシーの不足は顕著で、これから人手不足が進むと、危機的状況に追い込まれる企業も少なくないでしょう。そこで今注目されているのが“不動産×テクノロジー”の「不動産テック」という分野です。本稿では、不動産テック協会設立メンバーであり不動産テックカオスマップを作成した赤木正幸氏が、不動産業界の現状と課題、そして活用分野ごとの不動産テックの特徴について解説します。(2018年7月初出、2019年9月更新)

執筆:リマールエステート 代表取締役CEO 赤木正幸、構成:編集部 渡邉聡一郎

執筆:リマールエステート 代表取締役CEO 赤木正幸、構成:編集部 渡邉聡一郎

森ビルJリートの投資開発部長として不動産売買とIR業務を統括するとともに、地方拠点Jリートの上場に参画。太陽光パネルメーカーCFO、三菱商事合弁の太陽光ファンド運用会社CEOを歴任。クロージング実績は不動産や太陽光等にて3,500億円以上。 2016年に不動産テックに関するシステム開発やコンサル事業等を行なうリマールエステートを起業。日本初の不動産テック業界マップを発表するとともに、不動産テックに関するセミナー等を開催するほか、不動産会社やIT企業に対してコンサルティングを実施。自社においても不動産売買支援クラウド「キマール」を展開。2018年、不動産テック協会の代表理事に就任。 早稲田大学法学部を卒業後、政治学修士、経営学修士を取得。コロンビア大学院(CIPA)、ニューヨーク大学院(NYUW)にて客員研究員を歴任。

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今注目を集める不動産×テクノロジー。事例や図をもとに、わかりやすく解説する
(©vege - Fotolia)


不動産テックとは何か

 不動産テック協会の定義では、「不動産テック(Prop Tech、ReTech:Real Estate Techとも呼ぶ)とは、不動産×テクノロジーの略であり、テクノロジーの力によって、不動産に関わる業界課題や従来の商習慣を変えようとする価値や仕組みのこと」です。

 単にインターネットやITツールを利用するだけではなく、テクノロジーを活用してこれまでの不動産ビジネスを変えようとしていることに焦点が置かれました。

 「不動産ビジネスの資料づくりにエクセルを使っているけど、弊社は不動産テック企業と言ってもよいでしょうか?」というような質問を実際に受けたことがありますが、さすがに不動産テックと言うのは、はばかられるのではないかとお答えしたことがあります。これを不動産テック企業とした場合、メールを用いてビジネスを行っている企業、つまりほぼすべての企業が「テック」企業になってしまうためです。

 この2、3年の動きとしては、海外や新興ベンチャー企業を中心に、シェアリングやクラウドファンディング、IoTやVRなど新しいテックが取り沙汰され注目されています。

 ITといえば0から1のイメージですが、特に日本の不動産テック分野ではまず不動産ありきなのが特徴です。それは、「情報化社会」などの文脈で語られる“情報”という言葉が、不動産業にとっては異なる意味を表すためです。

 不動産業が一番欲しい「情報」とは、「自分しか知らない情報」です。さらに、情報を第三者に渡すときは、内容や条件を相手によって変えることもあります。そのため、1つの物件について全体像を把握している人が誰もいない事態が起こります。弊社のITエンジニアは、この状況を「隠蔽と捏造(ねつぞう)の世界」と呼んでいます。

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不動産業界の暗黙のルール、「隠蔽と捏造の世界」

 このような「隠蔽と捏造の世界」は、一見するとIT化とは逆行しているように見えます。しかし、おのおのが持てつ情報を可視化することは業界としてタブーとされており、実際、これまでにこのタブーを破ろうとして失敗してきた企業もいくつかありました。

 そのため、こと日本においては、この業界のルールを守りながらいかに業務を効率化するか、いかに物件に付加価値を付けるか、という視点で不動産テックが活用されているのです。

 なお、海外の方が進んでおり、特に不動産会社の業務支援系のテクノロジーは細分化されています。DIYも盛んです。米国ではMLSという物件情報データを使って各社が物件の価値を推測したり、Zillowやredfinなどのポータルサイトがどんどんデータを集めています。米国以外にはイギリスや中国、インド、東南アジアなども進んでいます。東南アジアはもともとシステムのインフラが無いので、導入しやすいという背景もあります。

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アジア太平洋地域の不動産テックの数

なぜ不動産テックが必要なのか

 では、なぜ不動産テックが必要なのでしょうか。不動産業界には、ほかの業界と比べて2つの特徴があります。1つはIT投資が少なく、労働生産性が低いこと。もう1つは、年齢層が高くITリテラシーが低いことです。

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日本の不動産業界のIT資本投入は米国と比べ1割、労働生産性は4割にとどまる

 これまでは、人海戦術でひたすらアポを取る不動産会社や、顔が見える範囲で仕事をしてきたためITが必要なかった“街の不動産屋”もやっていけていました。

 しかし、今後はどんどん人が減っていきます。効率化と労働生産性を上げるためのテクノロジー導入が必須要件となるのです。

不動産テック市場を網羅的に分析した、「カオスマップ」

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不動産テックカオスマップ第5版(一般社団法人不動産テック協会)

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不動産テックカオスマップ第5版 英語版(一般社団法人不動産テック協会)

 2019年8月22日に不動産テックカオスマップの最新版である第5版が、一般社団法人不動産テック協会から発表されました。これは、2018年9月に設立された一般社団法人不動産テック協会の業界マップ部会の活動成果としての発表です(2016年6月初版作成、その後随時更新)。

 筆者は、今回の更新にも関与したため、最新版の詳細や特徴について説明します。なお、不動産テックカオスマップは、不動産テック協会サイトにも掲載されています。

 今回は、第4版作成時とは異なりカテゴリーそのものの枠組み変更等は行わず、掲載サービスや掲載会社を精査することに注力しました。結果としては、第4版の掲載数263から、第5版では掲載数305に増加しています。 それぞれのカテゴリーの掲載数を第2版から第5版までを集計すると下表となります。

 価格可視化・査定は第2版からの増加は少なく、IoT、VR・AR、物件情報・メディア、マッチング、リフォーム・リノベーションは3版と4版の増加は多かったですが、今回の5版での増加は多くありません。一方、クラウドファンディング、スペースシェアリング、管理業務支援、仲介業務支援は、毎回コンスタントに増加し続けています。

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不動産テックカオスマップの掲載数の推移

 ちなみに米国はどうかというと、VENTURE SCANNERというスタートアップ企業の調査会社が年に数回発行している不動産テックカオスマップがあります。最新版では1857のサービスや会社が掲載されています。

 日本との大きな違いは、掲載数とカテゴリーです。特徴としては、Home ServicesのようにDIY文化のある米国ならではのカテゴリーが設けられていることや、業務支援が、Property Management、Construction Management、Portfolio Management、Facility Management、Real Estate Agent Toolsに細分化されていることが挙げられます。

 直近約2年間の各カテゴリーの日米の掲載数の増加率を示したものが下記です。米国では、IoT HomeやIndoor Mappingはほとんど増加していませんが、日本のIoTは5倍以上に増加しています。逆に、日本では価格可視化・査定の増加率は低いですが、米国では、Long-Term SearchやCommercial Searchのように価格推計を活用したサービスの増加率は相応に高くなっています。

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日本の不動産テックカオスマップの掲載数の増加率


 下記が、日本の不動産テックカオスマップにおける各カテゴリーの定義です。

カテゴリー名定義
AR・VRVR・ARの機器を活用したサービス、VR・AR化するためのデータ加工に関連したサービス
IoTネットワークに接続される何らかのデバイスで、不動産に設置、内蔵されるもの。また、その機器から得られたデータ等を分析するサービス
スペースシェアリング短期~中長期で不動産や空きスペースをシェアするサービス、もしくはそのマッチングを行うサービス
リフォーム・リノベーションリフォーム・リノベーションの企画設計施工、Webプラットフォーム上でリフォーム業者のマッチングを提供するサービス
不動産情報物件情報を除く、不動産に関連するデータを提供・分析するサービス
仲介業務支援不動産売買・賃貸の仲介業務の支援サービス、ツール
管理業務支援不動産管理会社等の主にPM業務の効率化のための支援サービス、ツール
ローン・保証不動産取得に関するローン、保証サービスを提供、仲介、比較をしているサービス
クラウドファンディング個人を中心とした複数投資者から、Webプラットフォームで資金を集め、不動産へ投融資を行う、もしくは不動産事業を目的とした資金需要者と提供者をマッチングさせるサービス
価格可視化・査定さまざまなデータ等を用いて、不動産価格、賃料の査定、その将来見通しなどを行うサービス、ツール
マッチング物件所有者と利用者、労働力と業務などをマッチングさせるサービス(シェアリング、リフォームリノベーション関連は除くマッチング)
物件情報・メディア物件情報を集約して掲載するサービスやプラットフォーム、もしくは不動産に関連するメディア全般


掲載ガイドライン

  1. AI(人工知能)、IoT、ブロックチェーン、VR/AR、ロボットなど現時点において先進的なテクノロジーを活用しているビジネスまたはサービス

  2. 一般的なITやビッグデータを活用することで、従来(インターネット普及以前)には無かった新しい価値や顧客体験をつくりだしているビジネスまたはサービス

  3. 一般的なITやビッグデータを活用することで、従来(インターネット普及以前)には無かった新しいビジネスモデルや収益モデルを実現しているビジネスまたはサービス

  4. 一般的なITやビッグデータを活用することで、既存の業界課題の解決や商習慣・慣例を打破しているビジネスまたはサービス

  5. 一般的なITやビッグデータを活用することで、オンラインプラットフォームを実現しているビジネスまたはサービス

 ではここからは、カオスマップの分類に従い各カテゴリーの特徴について、第5版で追加された最新事例を交えながら説明していきます。

管理業務支援の不動産テック

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管理業務支援の不動産テック一覧

 不動産管理会社等の主にPM業務の効率化のための支援サービス、ツールです。不動産情報や顧客情報の管理・運営を支援するシステムなども提供しています。この分野はtoBとtoCで大きく様相が異なり、またプレーヤーによって非常に多種多様です。

 まだBtoCのサービスが多く、BtoBのサービスは発展途上中です。これは、不動産テック企業にB to B不動産事業に精通した人材が少なく、さらに不動産業界が独特の商習慣等を持てっていることから生じるミスマッチが原因です。

 第5版で追加されたサービスをピックアップするなら、建設業界専用の書類作成や電子契約を行うアプリケーションである建設PAD、相続と資産運用を一元的にとらえたシミュレーションソフトであるSUPERREIFA、スマートフォンアプリと連動したデジタルサイネージ広告のRIS、不動産エレベーター広告のmark&earth、間取り図作成ソフトであるSUPERLinksWebが挙げられます。

 建設PADは建設テックにも分類され、不動産業界同様にIT導入が遅れている建設業界のデジタル化を促進しています。また、相続と資産運用を支援するSUPERREIFAは、非常に高度な知識やノウハウが必要とされる不動産運用の間口を広げています。RIS、mark&earth、SUPERLinksWebは不動産テック以前から存在する領域ですが、スマートフォンやVR等の最近のデジタルテクノロジーと結合することによって新たな付加価値を提供しています。

仲介業務支援の不動産テック

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仲介業務支援の不動産テック一覧

 不動産売買・賃貸の仲介業務の支援サービス、ツールです。

 賃貸仲介系への活用が近年増えていますが、賃貸仲介は利益幅が小さく労働集約的なビジネスでもあるため、不動産テックサービスによる業務効率改善に期待が持てる領域です。これまで仲介業務では、モノとヒトを一元管理しなければならず、単純に既存のCRMを適用すれば効率化するというわけではありませんでした。そこでエクセルと記憶に頼っていたのですが、この分野のサービスによってCRMと物件管理を結びつけることが可能になるのです。

 今回追加されたサービスは、不動産会社間の業務を効率化するものが多く、B to Bサービスが増加傾向にあります。

 第5版で追加されたサービスをピックアップするなら、不動産業の営業担当者同士をつなぎ合わせるマッチングシステムであるTRG、非対面決済サービスであるH'OURSなどが挙げられます。

 H'OURSは、決済前日までにすべての確認作業と手続きを完了し、非対面で決済を完了させることができるサービスで、ブロックチェーンを用いたスマートコントラクト化が進んだ際には今後の展開が期待されます。

【次ページ】残り10分野の不動産テックと、不動産テック導入の3ステップ

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