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- 2018/10/29 掲載
ブロックチェーンのビジネス活用を考えたら、まず知っておきたい基礎知識
ブロックチェーンが今なぜビジネスで注目されているのか
今年5月、世界初のブロックチェーンを用いた電子投票による選挙がシエラ・レオネで実施された。技術サポートをしたのはスイス発のスタートアップAgoraだ。ケニアでもIBMが技術担当し、ブロックチェーンを使った選挙の準備を行っている。また、アメリカにおいてもウェストバージニア州の選挙でパイロットプロジェクトが進められている。急速に、仮想通貨以外へのブロックチェーンの実用化の現実味が出始めてきた。さまざまな可能性が、最近のアメリカのテック記事を騒がしている。ブロックチェーンの社会応用に関する技術ニュースは、AIのそれに匹敵するほど一時期は増えていた。
シリコンバレーでは年々ブロックチェーン関連の投資が増加している。世界の大物投資機関であるAndreesen Horowitzまでも初のブロックチェーン関連のスタートアップOasisLabsに巨額投資を行ったことも注目を集めた。
このスタートアップはブロックチェーンを用いたセキュアなクラウドプラットフォームサービスの提供を目指している。ブロックチェーンプラットフォームサービスといえば、今やIBMをはじめ、マイクロソフト、アマゾン、オラクル、グーグルまでもが提供を始めているし、日本でも日立、NEC、富士通などでも提供を行っている。
このブロックチェーンの勢いはどのような背景から来ているのか。ついこの間まではブロックチェーンを基盤とした仮想通貨のICO(仮想通貨を新規に発行する資金調達方法)ブームによるものだったかもしれないが、近年のそれは仮想通貨に向けられたものではない。
思うに、その裏にあるのは、(1)フェイスブックやグーグルなどのユーザーデータスキャンダル、(2)AIなどビッグデータ分析技術の進展、(3)ブロックチェーン技術者の増加、があると考える。
(1)のユーザーデータスキャンダルによって、人々はITテック大手によって膨大なデータを独占され、望まずにそれをシェアされたりのぞかれたりすることをよしとせず、自らがブロック、コントロールすることができる手だてを欲した。
(2)の分析技術の進展によって、AIに必要なビッグデータを数社のインターネットサービス企業に独占されることなく、全員でシェアできるようなプラットフォームを欲した。
(3)の技術者の増加によって、具体的なブロックチェーンの特長を生かした業種サービスが検討可能になってきた。ブロックチェーンの未来はさまざまな時代のシグナルと合わさって、その可能性に期待が高まってきている。
そもそもブロックチェーンとは何か
ブロックチェーンの定義
ブロックチェーンとは、複数のコンピューターノードがそれぞれP2P(Peer to Peer,人と人)でつながって、取引勘定や契約などの「情報」を記録し、分散したデバイス同士で共同で管理する技術である。分散型デジタル台帳技術とも呼ばれ、その性質上中央管理する存在を必要としない。中央管理するデータベースと逆で、非中央集権的な仕組みとも呼ばれている。
この技術は、仮想通貨に用いたとき、銀行や国の許可や信用に裏付けを必要とせずに流通・発行を可能にする。あくまでデジタルの数字が記帳されるにしかすぎないので、紙幣や貨幣を発行せずともよい。
最初にこの仕組みが出てきたのは、2008年のサトシ・ナカモトという偽名で発表された論文だった。ここで公開された技術がベースになり、オープンソースソフトが開発され、それを使った最初の仮想通貨がビットコインが誕生するきっかけになった。今では、このオープンソースソフトを活用して世界では数百種類もの仮想通貨が存在しており、次々に消えてはまた新しく生まれる、を繰り返している。
また、ブロックチェーンの応用として、台帳に書くのを貨幣勘定だけにせず、契約文書としても利用することで、契約書(コントラクト)をスマートに自動決済をする仕組みとして、スマートコントラクトと呼ばれる技術も誕生している(代表的なもので、イーサリアムがある)。
ブロックチェーンの仕組み
ブロックチェーンの仕組みの特徴として、ネットワークに参加するすべてのノードが、個々のノード間でやり取りした取引情報を共有・管理して、相互にその取引を相互認証しあい、安全を担保するという点がある。これは分散処理ならではの特徴だ。
すべてのブロックチェーンネットワーク内のノードに、取引情報はすべて通知され、その取引の正当性を確認するためのアルゴリズムが走り、特定のデバイスが承認された複数の取引情報をブロックとしてまとめ、台帳に記載するようになっている。
このブロックは、取引情報が複数単位で入っていて、時系列にそって、チェーン状態につながって連続した台帳となっている。そして、新しい取引ブロック台帳が追加されると、すべてのノードにその情報が共有され、取引が動いたことが確認されるようになる。
なお、特定のデバイスがこの計算と記帳を行った場合は報酬として仮想通貨が一定額得られることにもなっていて、これをマイニングと呼ばれている。この仕組みの信頼性の担保には、ハッシュ関数や電子署名の技術等が使われており、暗号技術を組み合わせたものといえる。このような仕組みを用いることで以下のようなメリットがある。
・中央集権的な高速計算コンピューターを必要とせずシステムダウンも起きない・取引の透明性と安全性が高い信頼性で担保される、改ざんやヒューマンエラーもない・セキュリティ機能が標準実装されており、オープンソース、コストを抑えて世界中にスケールも簡単で、運用できる
なぜ「第二のインターネット」と呼ばれるのか
ブロックチェーンは時に「第ニのインターネット」とも呼ばれるが、これはブロックチェーンの本質が、世界中のノード・コンピューターに接続してネットワークでつながることができ、情報を共有することができる性質を持つためである。
インターネットが端末からサーバに情報をリクエストすると自動的に情報を送信処理する仕組みと似ている。
ブロックチェーンがインターネットよりもさらにすごい点は様々ある。一つは仮想通貨のようなデジタル経済圏を第三者の承認なしに構築できて自動的に決済までできること、そして、セキュリティに強くサイバー攻撃などによる不正な改ざんが非常に困難なことだ。インターネットはもともと、信頼できるもの同士でのネットワーク形成を原則としており、不正な攻撃を埋め込まれた時の防御に脆弱だ。
・ブロックチェーンのネガティブな側面とは何か
・技術としてのブロックチェーンの現在地や、今後の市場規模予測
・ブロックチェーンへのビジネス活用事例:保険業界、ヘルスケア、……
・著作権管理やスマートシティ、二酸化炭素削減への応用も
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