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  • 2019/11/29 掲載

ヤマトも赤字…「物流ソリューション」は苦境の業界を救えるか? 最新動向まとめ

連載:クルマの進化が変える社会

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少子高齢化社会を迎えた日本では、どの業界も人材不足という課題を抱えている。中でも深刻なのが、物流業界である。宅配大手のヤマトホールディングスが、中間決算で「2年ぶりの赤字」を計上したのは記憶に新しい。圧倒的な人手不足の一方で、荷主側の要求も肥大化し続けている。「コストを抑えつつ、より速く、確実に」という要求に対して、物流業界からは悲鳴が上がっている。こうした課題を解決するため、革新的なテクノロジーを活用したソリューションが続々登場している。日本の物流は今後どう変革するのだろうか。

自動車ジャーナリスト 高根 英幸

自動車ジャーナリスト 高根 英幸

1965年、東京都生まれ。芝浦工業大学工学部機械工学科卒。理論に加え実際のメカいじりによる経験から、クルマのメカニズムや運転テクニックを語れるフリーランスの自動車技術ジャーナリスト。最新エコカーから旧車まで幅広くメカニズムを中心に解説を行っている。WEBでは『日経テクノロジーonline』(http://techon.nikkeibp.co.jp/)や「MONOist」(http://monoist.atmarkit.co.jp/)、『Response』(http://response.jp/)などに寄稿。近著は『カラー図解エコカー技術の最前線』サイエンス・アイ新書)。『図解カーメカニズム パワートレーン編』(日経BP社刊)日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。

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物流業界は課題が山積み。革新的なテクノロジー導入で激変するか
(Photo/Getty Images)

負のスパイラルに陥っている物流業界

 2019年10月末に発表された中間決算によると、ヤマトホールディングスは赤字に転落した。このニュースは驚きをもって伝えられたが、物流業界の苦しさが改めて浮き彫りになったとも言える。

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宅配便取扱個数の推移
(国土交通省「平成30年度 宅配便取扱実績について」より)
 日本国内の荷物取扱量は、右肩上がりで上昇し続けている。国土交通省が2019年10月に発表した「平成30年度 宅配便取扱実績について」によると、平成30(2018)年度の宅配便取扱個数は、43億701万個で、前年度と比較して5568万個・約1.3%の増加となった。10年前と比較すると3割以上も増えている。

 ヤマト運輸を筆頭に宅配便の送料は値上がりし、アマゾンでも送料の有料化が図られるなどユーザーの負担も上昇しているが、荷物取扱量の増加傾向は変わらない。ただ、重量ベースで見ると、直近10年はほぼ横ばいで推移している。そのため、国内の物流は「小型軽量化」が進み、取扱個数の大幅な上昇が続いている傾向が分かる。

 日本の物流業界は「薄利多売で価格勝負、スピード配達勝負」という負のスパイラルに陥っているように見える。そのため物流業界で働く人は、ほぼすべての人が多くの負担を強いられていると言える。

 この状況を改善するには、人件費の抑制や作業の効率化を進め、少人数で従来以上の作業量を時間内に終わらせるしかない。国内の生産工場は自動化が進んでいるが、物流はまだまだ人の手に頼っている部分が大きい。その結果、作業効率を高めることが難しく、労働時間の短縮が叶わずに、長時間労働や人手不足を招いているのである。

大型トラックでも自動運転を実現、ドライバーの負担を軽減

 そこで、物流業界の効率を高めるため、新しいテクノロジーを活用したソリューションが続々登場している。

 その筆頭となるのは物流の要となるトラックの「自動運転」だ。「東京モーターショー2019」では、三菱ふそうが大型トラックに「レベル2」(アクセル、ブレーキ、ハンドリング操作をシステムが行うが、人の監督が必要)の自動運転を装備することを発表した。



 ダイムラー・トラックは、全米で「レベル4」(運転の全操作をシステムが行うが、道路、敷地、天候等の条件が付帯)の自動運転トラックを公道実験しており、「レベル2」に関してはすでにメルセデス・ベンツのトラック部門が、大型トラックのアクトロスに搭載して欧州で発売している。

 パワーステアリング機構が油圧式なため、これまで操舵支援の実現が難しかった大型トラックだが、各トラックメーカーは電動パワーステアリングの技術を組み合わせることで、トラックの操舵支援を実現しつつある。国内では三菱ふそうが、その先陣を切ることになる。

 こうしたシステムの導入により、高速道路上でのドライバーのわき見運転や過労運転、居眠り運転による追突事故、路線逸脱事故は確実に減少していくだろう。しかし、今後販売されるトラックに普及していくには相当な時間がかかる。そこで注目したいのは、「後付け可能」な安全性向上のためのシステムだ。

 日立物流が開発した「SSCV(スマート安全運行管理システム)」は、AI(人工知能)とクラウドを活用して運行管理とドライバーの体調管理を実施することで、コスト削減と安全運行を実現させるというものだ。既存の車両にIoTドライブレコーダーと後付けの危険運転検知器、生体情報をセンシングできるハンドルカバーを装着する。

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日立物流のSSCV(スマート安全運行管理システム)

 これにより、走行中のドライバーの疲労による集中力の低下や事故の危険性を検知。運行管理者がその場で連絡を取り、休憩を促すことも可能だ。警告装置だけでは過労運転の抑止力は限られるが、常に運行管理者側が見守れる環境にあれば、さらに高い安全運行が実現するというものだ。

【次ページ】インテルは輸送中の商品の状態をモニタリングできるシステムを開発

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