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  • 2020/01/10

ヨーロッパ人が日本の“お家芸”モバイルアーキテクチャに憧れるワケ

小堀哲夫のオフィス探訪 東大 髙岸輝氏対談(後編)

建築家 小堀哲夫氏と東京大学大学院 人文社会系研究科 准教授の髙岸輝氏が対談を行い、時宗の宗祖一遍の生涯を描いた絵巻「一遍聖絵」を見ながら、移動することの意義と、これからの働く環境を議論した(前編)。後編では、ヨーロッパと日本の建築の違いに触れながら、それぞれの「中世」の在り方を比較し、具体的にこれからのオフィスを考える。

聞き手:編集部 佐藤友理、構成:桑原晃弥、撮影:編集部 伊藤孝一

聞き手:編集部 佐藤友理、構成:桑原晃弥、撮影:編集部 伊藤孝一

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東京大学大学院 人文社会系研究科 准教授 髙岸輝氏(左)と建築家 小堀哲夫氏(右)

前編はこちら(※この記事は後編です)


小堀氏設計のROGICと「一遍聖絵」

──今回、小堀さんとの対談ということで、「一遍聖絵」をテーマとして挙げていただきました。なぜでしょうか。

髙岸氏:小堀さんが設計したROKI Global Innovation Center(以下、ROGIC)の写真を見た時に、これは「一遍聖絵」の世界だな、と感じました。

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ROGIC(ROKI Global Innovation Center)外観
(写真:新良太)

 「一遍聖絵」には、踊念仏の舞台や、路上に生活する人々の小屋など、屋根と柱と床だけでできた仮設の建造物がたくさん描かれています。ROGICは全体がガラス張りで、中にも外にも木と緑がありますね。外の世界と中の世界の境界が取り払われ、構造材が見えるところもあり、絵巻に描かれた仮設の建造物を思わせるつくりになっています。

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「一遍聖絵」に見られる仮設の舞台の例
(国宝「一遍聖絵」第六巻第一段より、画像協力:時宗総本山 遊行寺)

 仮設のものが自然の中にふわりと存在しているような感じ、ばらして撤収すれば、この場所が元の自然に戻るような感じから、絵巻の世界観と通じるものを感じました。

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ROGIC内観。光や風を取り入れるために、天井にはフィルターが使われている
(写真:新井隆弘)



「完成形」のヨーロッパ建築と「変化し続ける」日本建築

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小堀氏:日本の建物のつくり方というのは床と屋根が基本で、最初に完璧を求めず、その後も増改築を繰り返していくのに対し、ヨーロッパは引くことも足すこともできない「完成した」建築を好みます。

 それは絵画も同様で、ヨーロッパの絵画は一回描くと終わる完成形なのに対し、たとえば日本の絵巻は、どんどん横に描き足していける。そこには「変わり続ける」「朽ちて生まれ変わる」というような日本的な世界観があるように感じます。

 ヨーロッパの都市は固定的で、ずっと変わらないところがあり、かつて日本人はそれに憧れていましたが、ヨーロッパの人たちは逆に日本の都市や建物に興味を持っています。日本の都市の常に変わっていく様子や、パッチワーク感。今の東京もどこが中心か分からないような場面展開がずっと続いています。

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右から左へ進んでいく絵巻。もっと中身を増やしたければ横に延ばせばよい

 それでいうと、ROGICは天井の開閉をすることで、自然の風が下から上に通るようにできていたり、わざと中の温度や湿度にむらができるように設計しています。人工の建築物でありながら、そうした自然の変化をわざとつくり、統制しない。そうした日本的な「変化し続ける環境」であるところが、「一遍聖絵」の仮設の小屋に通じるのかもしれません。

【次ページ】「自由なアーキテクチャ」は日本のお家芸

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