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  • 2019/12/03 掲載

ジェフ・ベゾスはなぜ「アマゾンも必ずいつかは崩壊する」と言い切るのか

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大成功を収めた企業について、人々は「どうしたらあのようにすごい結果を出せるのだろうか?」と思い、何とかして成功の秘訣を解き明かそうとする。元アマゾン幹部ジョン・ロスマン氏は、自身に何度も投げかけられてきたその問いに対するアンサーとして、著書『アマゾンのように考える』を上梓したという。「アマゾンには結果を出すための一貫した戦略、信念体系、やり方がある。それらを理解できれば、あなたもベゾスのように考えられるようになるはずだ」とロスマン氏。かつて“ベゾスの右腕”を務めていた彼だからこそ知る、アマゾン流の成功のヒントを紹介しよう。

ジョン・ロスマン

ジョン・ロスマン

アマゾン社の元幹部であり、「アマゾン・マーケットプレイス」の立ち上げ、また、Target.com、NBA、Toys R Us その他のトップブランドの責任者として、エンタープライズサービス事業を率いた。現在、ロスマン・パートナーズにて、デジタル時代におけるクライアントの成功と繁栄を支援するビジネスアドバイザー業務を行なう。ゲイツ財団、マイクロソフト、ノードストローム、T-Mobile、ウォルマートなどの取締役顧問。ニューヨークタイムズ、CNBC、ブルームバーグ などにも出演。

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元アマゾン幹部の証言によって、ベゾスの思考法を紐解く
(写真:AP/アフロ)

ジェフならどうするだろう?

 1990年代、「イエス・キリストならどうするだろう?」を意味するWWJD(What would Jesus do?)という略語が書かれたバンパーステッカーやTシャツが、米国中で見られるようになった。

 その後、さまざまなバリエーションが現れた。科学者は「ダーウィンならどうするだろう?」、デッドヘッド(グレイトフル・デッドの熱狂的ファン)たちは「ジェリーならどうするだろう?」と問いかけた。「アティカス・フィンチ(『アラバマ物語』に登場する弁護士)ならどうするだろう?」と書かれたステッカーまで見たことがある。どれも元来の意味から大きくかけ離れているが、当時はそのくらい流行っていた表現なのだ。

 過去5年間、私はクライアントや、著書の読者たちから、同様の質問を何度もされた。「ジェフ・ベゾスならどうするだろう?」と。もちろん彼らが「WWJD?」と問うとき、本当に聞きたいのは、おそらくこういうことだ。

 「“ビーイング・デジタル”ってどういう意味なんですか?」「ディスラプション(破壊的イノベーション)をどうしたら避けられるんでしょう?」「アマゾンはこの分野、あるいは地域に進出するでしょうか?」「アマゾンはどうやってこんな結果を出せるのだろうか?」「アマゾンは私との提携に興味を持ってくれるでしょうか?」「アマゾンはこの会社を買収しようと思うだろうか?」「どうすればアマゾンのように買い物しやすいWebサイトができるのですか?」。

 これらすべてを一言でまとめると「ジェフならどうするだろう?」ということになる。

 なぜ彼らは、私がそれらの質問に答えられると思ったのか。ひいては、なぜこの本を書いて、デジタル時代に競い合っている人々を助けられると思ったのか。2005年にアマゾンを辞めて以降、私はさまざまな業界の、違う目的を持つクライアントたちに、たくさんのシナリオを示して、これらの質問に答えてきた。

 しかし「ジェフならどうするだろう?」という問いに答えるために本当に必要なのは、ジェフ・ベゾスとアマゾンの問題対処法、事業やテクノロジーの展開のやり方、新しいアイデア、市場、成長についての考えが、まったくぶれていないと認識することなのだ。

 言い換えると、アマゾンには結果を出すための一貫した戦略、信念体系、やり方がある。それらを理解できれば、あなたもアマゾンのように考えられるようになるはずだ。本書に書かれた幅広いシナリオや実例は、あなたの質問に直接答えるものではないかもしれないが、ジェフの全般的な考え方を理解できれば、彼の見識や信念を、あなたの環境に合わせて上手に使うことができる。


最良の攻撃は、さらに強力な攻撃

 現在のフォーチュン1000社の80パーセントが、これからの10年で入れ替わると考えられるのはなぜだろう? “ディスラプション(破壊的イノベーション)”は、なぜ脅威なのだろう? 複雑な質問に簡潔すぎる答えを出すことにリスクはあるが、私はこう答えるだろう。

 第一に、会社は以前の考え方やモデル、アプローチが絶対と考えてしまう。

 第二に、変化を起こすのは本当に難しい。“トランスフォーメーション(変換)”という概念は、とても素晴らしく思えるが、実は、とてつもなくわかりにくい。この組織やビジネス活性化のための大いなる理想は、持続的な変化や長期的な価値創造ではなく、短期的なプロジェクトやエネルギーとして現れることが多い。

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過去の成功例にしがみついていては、イノベーションは起こせない
(Photo/Getty Images)

「企業の命は短いので、アマゾンだっていつかは崩壊する」と、ベゾスは2013年のインタビューで話している。「そんなことは心配していない。それは避けられないとわかっているからだ。会社は生まれては消える。ある時代、最も輝き最も重要と考えられていた企業も、20年もすればなくなっている」(Charlie Rose, 2013)

 古いモデルや過去の成功にとらわれない企業はリーダーであり続け、次の時代をつくる力を維持する。そして、この変動の激しい時代に変化し成長することができる。そのような力を育くみ維持するには、世界レベルの思考の敏捷性が求められる。そのためアマゾンは、既存のビジネスの勢いに安住するのではなく、現在も元手を取るのに何年もかかる(取れずに終わるかもしれない)ものに投資を続けている。

 2018年6月に行われた、オンライン薬局ピルパックの買収は“さらなる攻撃”例の一つである。

 ピルバックは顧客に処方された薬を、1回分ずつ個別包装をして家まで届けてくれる。顧客の都合に合わせた包装と配送を採用したのだ。もしあなたがたくさんの薬を飲まなければならず、薬局まで行きたくない、あるいは物理的に行けない事情がある人にとって、ピルパックは他の普通の薬局よりもはるかに利便性が高い。アマゾンは今、ヘルスケア市場に参入する必要はないが、すでに小さな一歩を踏み出している。

 今後、同社はこの事業の内容、ピルパックの機能と医薬品を販売する州の免許を活用する(いずれホールフーズを薬局に?)ことを、全体的な戦略の一部として、多くの角度からの視点を持ち、さまざまなビジネスモデルを検討していくだろう。

【次ページ】AWSがなぜアマゾンから生まれたのか

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