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- 2019/12/11 掲載
京都市が宿泊施設誘致方針を撤回、客室数“3年で1.5倍”オーバーツーリズムで方針転換
清水小学校跡では新たなホテルが来春登場
世界遺産の清水寺に近い東山区清水の市立清水小学校跡地でNTT都市開発が進めてきた校舎の改修工事が終わった。戦前の1933年に建築された古い校舎のアーチ型開口、軒下の腕木装飾など特徴的な外観を保存したまま、ホテルに改修したもので、ホテル名は「ザ・ホテル青龍 京都清水」。プリンスホテルが運営し、2020年3月に開業する。清水小学校は明治時代初期の1869年、下京第二十七番組小学校として開校したが、市立の小中一貫校・東山開睛館開校に伴って2011年3月で閉校した。京都の街並みを一望できる高台にあり、五山の送り火、法観寺八坂の塔を間近に見える。
工事は校舎内を全面改修し、付属施設を追加した。建物は4階建てで、延べ約6800平方メートル。48の客室を備えるほか、世界各地でミシュランの星付きレストランを運営するデュカス・パリのビストロが併設される。NTT都市開発は「この場所の特徴を生かし、ここにしかない施設が完成した」としている。
清水小学校跡地開発は2015年、市が公募型プロポーザル方式でホテルかブライダル施設とする計画を一般公募し、10社が応募した中でNTT都市開発の構想が採用された。当時、外国人観光客の急増で宿泊施設不足が深刻化していたが、市内はすでに満杯状態でホテルに利用できるまとまった土地がほとんどないため、市が小学校跡地を提供した形だ。
しかし、それから4年。市中心部はホテル開業ラッシュが続き、状況が一変した。近くを散歩していた年金生活の男性(74)は「またホテルができるのか。東京や外国の業者が金もうけするだけで、京都が食い物にされている気がする」と表情を曇らせた。
客室数は3年で1.5倍に、稼働率は低下する一方
市の京都観光総合調査によると、観光客数は2015年をピークに微減に転じているものの、2018年も5275万人を記録し、依然として高水準で推移している。宿泊客数は右肩上がりで増え続け、2018年に過去最高の1582万人に達した。特に増加が目立つのが外国人宿泊客で、2018年は450万人を超え、過去最高を更新している。急増する宿泊客受け入れを可能にしたのが、ホテルや簡易宿所の新規開業だ。市内の宿泊施設客室数は2018年度末で約4万6000室に達した。空前の開業ラッシュともいえる勢いで、3年間で1.5倍に増えている。
その一方で、需給バランスは崩れた。市観光協会によると、市内主要ホテルの客室稼働率は2015年の89.3%をピークに低下を続け、2018年は86.4%、2019年上半期は82.0%に落ちた。全体としては依然、混雑している数字だが、市内のホテル業者は「1泊1万円前後の施設は2015年から2割ほど客室単価が下がった」と嘆く。
開業ラッシュには外国資本や投資会社も参画してきた。このうち、全国でホテルを所有するいちごホテルリート投資法人は10月、中京区河原町通のホテルを売却した。いちごホテルリート法人の資産運用をするいちご投資顧問の岩坂英仁ホテルリート本部長は「施設の売り上げが落ちてきたうえ、短期的な回復が難しいと判断した」と説明した。
供給過剰感の広がりは簡易宿所の廃業増加にもつながっている。市内では2018年度末で2990の簡易宿所が営業しているが、1年間で147件が廃業した。前年度から2倍以上の増加で、2019年度は9月末までに100件近くが撤退している。
京都商工会議所が11月に中京区のホテルで開いた持続可能な観光を考える講演会では、右京区で旅館を経営する嵐山辨慶の磯橋輝彦社長が演壇に立ち「2、3年前のインバウンドバブルのような状況は終わった」と現状を報告した。
【次ページ】電車や路線バスは終日、通勤ラッシュ並みの混雑
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