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  • 2019/12/23

日本は「IoTおむつ」でトップになれる? “35年は安泰”と言えるワケ

おむつの中がぬれたらセンサーが感知、無線通信を介して保護者や介護者に知らせ、取り替えを促し下半身の清潔を保つ「IoTおむつ」。すでに市販されている製品もある。IoT(モノのインターネット)の中でニーズ、市場性ともにあり、政府の「働き方改革」「少子化対策」の追い風もあって早く普及しそうだ。国内市場は、少子化で出生数が減っても高齢者の需要は右肩上がりが予想される。海外に目を向ければ、出生増が続くと見込める地域がある。ベビーテックかつ介護テックでもあるIoTおむつの研究開発競争で、いま世界の最前線にいるのが、日本である。

経済ジャーナリスト 寺尾 淳

経済ジャーナリスト 寺尾 淳

経済ジャーナリスト。1959年7月1日生まれ。同志社大学法学部卒。「週刊現代」「NEXT」「FORBES日本版」等の記者を経て、経済・経営に関する執筆活動を続けている。

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「IoTおむつ」とは?
(Photo/Getty Images)

日本製「紙おむつ」の将来が明るいワケ

 誰でも人生で1度や2度はお世話になる「おむつ」。国内では、布おむつから便利な使い捨ての紙おむつに、全面的に切り替わっている。その紙おむつの生産数量はここ数年、乳幼児用も大人用もほぼ右肩上がりの成長を続けている。

 一般社団法人日本衛生材料工業連合会は、紙おむつの国内生産数量の統計を発表している。それによると、2018年1年間で乳幼児用は150億9500万枚、大人用は83億8400万枚が生産され、2010年比で乳幼児用は74.9%増、介護用など大人用は54.0%増だった。

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紙おむつの国内生産数量の推移
(出典:一般社団法人日本衛生材料工業連合会Webサイト「統計情報」)

 これは、国内向けも海外向けも合わせた数値。アジアでは、メイドインジャパンの紙おむつの品質の良さが知れ渡っているので、訪日外国人による国内購入分もある。そのため、国内の出生数の減少と少子化にかかわらず、乳幼児用紙おむつの生産の伸びは、人口の高齢化で伸びる大人用のそれをしのぐ。

 とはいえ、令和元年版「高齢社会白書」にある「国立社会保障・人口問題研究所の推計」によると、年間出生数は2020年の90.2万人から2055年の61.3万人まで、右肩下がりで32.0%減ると予測されている。乳幼児用紙おむつ市場は、約3割減るとみて良い。

 一方、75歳以上の「後期高齢者」は、2020年の1872万人から2055年の2446万人へ、ほぼ右肩上がりで30.7%増加する。後期高齢者全員がおむつを使うわけではないが、大人用紙おむつ市場は、約3割増えるとみて良いだろう。

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年間出生数と75歳以上人口の将来推計
(出典:内閣府「令和元年版高齢社会白書」)

 つまり、今後35年間は、出生数の3割減を高齢者人口の3割増がカバーして、紙おむつの国内市場は安定をみせると見込まれる。そこに、国籍、人種、民族、文化の差を問わない海外市場の伸びが加わる。

 たとえば、アフリカには出生数の増加、子どもの人口の増加が予想され乳幼児用の需要増が期待できる国がいくつもある。人口約13億人の巨大市場の中国は、かつての「一人っ子政策」の影響で、日本をしのぐ急速な人口高齢化が起き、大人用の需要の伸びが期待できる。日本製の海外での好評価はすでに確立している。

紙おむつが「IoT」で高付加価値化する

 消費市場のパイの拡大では、明るい未来が約束されている紙おむつだが、自動車やスマホなど他の工業製品同様、先進国の市場から「高付加価値化」の競争が起きている。

 紙おむつは、はいて使用するユーザーと購入する消費者(乳幼児用は保護者、大人用は介護者)が異なることが多く、購入者には「はく人の身体的な負担を減らしたい」とともに「おむつを取り替える手間を減らしたい」「自分ができるだけ楽をしたい」というニーズもある。

 これは、育児や介護の負担を軽減するという点で、政府の「少子化対策」「働き方改革」「一億総活躍社会」の方向性と一致する。紙おむつの進歩が国家の大計に影響を及ぼすこともありうる。

 紙おむつの高付加価値化ニーズとしては、1つは超吸収性、生分解性など素材のイノベーションが挙げられる。もう1つは「情報化」だ。

 情報で最も重視されるのは「中がぬれたかどうか」だ。ぬれたまま放置するとつけている本人には不快感があり、赤ちゃんなら泣くことがある。衛生的にも「おむつかぶれ」のような皮膚や泌尿器の疾患にかかるリスクが高まるので、保護者や介護者はできるだけ早く、ぬれたおむつを取り替えなければならない。しかし、従来はおむつを目視するか触れないと、中がぬれているかどうかの確認ができなかった。

 その問題を解決するのが、おむつ内の湿度を検知するセンサーと、「いまぬれている」という情報を伝達する通信システムだ。センサーと情報通信の組み合わせと言えば、まさに「IoT」(Internet of Things/モノのインターネット)である。

 IoTは、21世紀の「Society5.0」の一角をなす成長市場だ。

 IDCは、2019年の世界市場を前年比15.4%増の7,450億米ドル(約80兆円)と見積もり、2022年に1兆ドルを突破すると予測している。

 一般社団法人情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)が2019年7月に発表した「IoT市場動向調査報告」によると、国内市場の規模は、2018年度は6兆6,694億円だったが、5年後の2023年度には42.3%増の9兆4,918億円に達すると予測されている。

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国内IoT市場規模の将来予測
(出典:一般社団法人情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)「IoT市場動向調査報告」(2019年7月発表))

 IDCジャパンによる別の予測でも、IoTの国内市場は年平均13.3%の成長率で、2023年に11.8兆円に達する見込みだ。

 生活や産業を取り巻くさまざまなモノにセンサーが搭載され、必要な情報がリアルタイムに伝達されて利便性が増す、IoT社会。IoTプロダクツの中でも身近で、消費者(保護者、介護者)がその便利さ、有用性を実感しやすいのが「IoTおむつ」といえるだろう。それは「ベビーテック」と「介護テック」という2つの有望なテック市場にまたがる「ダブルマーケット」商品でもある。


 湿度(水分)を検知するセンサーは以前から存在し、技術的にも信頼性が確立しているので、通信とセットで小型化され、コストが下がれば実用化は早い。IoTと名乗っていなくても、すでに市販品がいくつかある。

【次ページ】すでに市販されている「IoTおむつ」とは? 日本は世界有数のIoTおむつ開発拠点

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