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  • 2020/01/23

「ローカル5G」のインフラに“ケーブルテレビ”が選ばれるこれだけの理由

2019年は「5G元年」と言われた。日本でも2020年春に通信大手の「全国5G」のサービスが始まる。それとほぼ同時期に、もう1つの5G、「ローカル5G」も商用サービスが始まる予定になっている。大手商社の住友商事が中心になり、インフラに全国のケーブルテレビを活用するローカル5Gプロジェクトが動き始めている。ケーブルテレビによるローカル5Gは、通信大手の全国5Gと比べると技術的、ビジネス的、さらには“地方創生”の観点でもさまざまなメリットがある。住友商事 メディア事業本部 ケーブルテレビ事業部長の小竹 完治氏は、「地域をよく知り、地域の課題解決に取り組んできたケーブルテレビの強みが生かせるのではないか」とみている。

経済ジャーナリスト 寺尾 淳

経済ジャーナリスト 寺尾 淳

経済ジャーナリスト。1959年7月1日生まれ。同志社大学法学部卒。「週刊現代」「NEXT」「FORBES日本版」等の記者を経て、経済・経営に関する執筆活動を続けている。

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「ローカル5G」のインフラとして、ケーブルテレビが注目される理由とは?
(Photo/Getty Images)

2020年前半、日本で「5G」が商用サービスを開始

 2019年、米国、韓国では4月、中国では11月に大手通信キャリアが5G(第5世代移動通信システム)の商用サービスを開始し「5G元年」と呼ばれた。日本でも2019年5月に通信大手各社の「全国5G」に周波数が割り当てられ、2020年春には商用サービスが始まる予定である。

 第4世代の4G・LTEに代わって登場する5Gには、「超高速・大容量」「超低遅延」「多数同時接続」という3つの大きな特長がある。

 4K、8K動画がアッという間にダウンロードできるようなモバイル通信のメリットだけではない。遠隔医療、防犯や防災目的の遠隔監視、あらゆるモノがネットにつながる「IoT(Internet of Things/モノのインターネット)」や自動車の自動運転に適しているので、産業界からも大きな期待が集まる。

 総務省の「平成30年版情報通信白書」によると、5Gは2025年までに全世界で11億回線、人口カバー率34%に達する見込み。基地局などの5Gネットワークのインフラ市場も、ガートナーグループが2019年8月に発表した見通しによると、全世界で2019年の22億1,140万米ドルから2021年の68億560万米ドルへ、わずか2年で3倍以上に拡大すると予測されている。

 5Gはまさに、直近での市場の急成長が約束されている次世代通信テクノロジーだ。

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世界の5Gネットワークインフラ市場の推移と予測

 国内市場も現状のゼロから立ち上がって急拡大。野村総合研究所が2019年11月に発表し、『ITナビゲーター2020年版』(東洋経済新報社)に収録されている予測によると、2025年度の5G携帯電話端末の販売台数は1982万台(携帯電話全体の56.0%)に、5G契約回線数は5498万回線(携帯電話端末で用いられる契約回線全体の46.4%)になる。

 あと5年もたてば、iPhoneでもAndroidでも、5Gスマホが当たり前のように使われていることだろう。

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国内の5G携帯電話端末の販売台数と5G契約回線数の予測

通信大手による5Gだけではない、「ローカル5G」とは?

 2019年5月に5Gの周波数割り当てを受けた全国5Gは、NTTドコモ、au(KDDI/沖縄セルラー)、ソフトバンクモバイル、楽天モバイルの4事業者。総務省は「人の居住地に限らず着実な全国展開」「5Gの特性を生かした多様なサービス」「十分なセキュリティ対策」など、条件をつけている。

 しかし、5Gの免許が与えられるのは彼らだけではない。総務省はそれと別に自治体や企業などの「ローカル5G」事業者にも免許を与え、早ければ2020年前半にもローカル5G商用サービスが始まるとみられている。

 「ローカル5G」は、名前にローカルとつくように「地域限定」「施設限定」の5Gのこと。全国で市町村限定、公共施設限定、工場限定など数多くの5G事業者が通信サービスを開始し、全国5Gと並び立つ。

 総務省は全国5Gに「3.7GHz帯」「4.5GHz帯」「28GHz帯」の3つの周波数帯を割り当てたが、4.5GHz帯(センチ波)と28GHz帯(ミリ波)では「ローカル5G用」の周波数帯域も用意しており、申請があれば調整した上で割り当てる方針。ローカル5Gの申請は2019年中にすでに受け付けられ、2020年早々にも周波数の割り当てが始まりそうだ。


住友商事、IIJ、ケーブルテレビ各社が手を組んだ

 2019年12月24日、総合商社の住友商事、MVNO(仮想移動体通信事業者)など通信事業を手がけるインターネットイニシアティブ(以下、IIJ)、秋田、栃木、東京、三重、愛媛のケーブルテレビ5社、地域ワイヤレスジャパンの8社は、共同出資で「グレープ・ワン」を設立したと発表した。

 事業目的は、「ローカル5Gの活用を目的とした無線プラットフォーム事業の展開」。ケーブルテレビのインフラや技術、営業基盤などを活用しながら、無線で5G通信を行うインフラを整備し、ローカル5G事業を立ち上げる。

 住友商事は、通信事業として1984年以来全国のケーブルテレビ事業者への出資、支援、育成に力を入れてきた。1995年に設立したジュピターテレコムは、番組供給も行う国内最大のケーブルテレビ統括会社で、提携先の事業者を通じ「J:COM(ジェイコム)」ブランドを全国に浸透させた。J:COMには、光回線や4GのMVNOのサービスもある。

 そんな経緯で、住友商事と一般社団法人日本ケーブルテレビ連盟は関係が深く、グレープ・ワンは連盟と連携してケーブルテレビ事業者のローカル5G事業の免許取得、立ち上げ、運営を支援する。そして将来は、ケーブルテレビ・ローカル5Gの全国ネットワーク構築を目指している。

 国内全世帯の50%を超える約3000万世帯が加入する有線のケーブルテレビは、光回線化が進み「大容量・双方向」の地域通信インフラをおおむね構築済み。だが、末端(ラストワンマイル)で無線のローカル5Gを行うには、新たに基地局を設置し、基幹システム「無線コアネットワーク」を構築しなければならない。MVNOや、情報格差の解消を目指した地域BWA(広帯域移動無線アクセス)の運営を通じて「無線」の技術ノウハウを持つ事業者もあるが、数はそれほど多くはない。

 グレープ・ワンは、IIJ、地域ワイヤレスジャパンとの技術連携や、商社系ならではの情報力、スケールメリットなどを発揮して、ケーブルテレビ事業者の設備投資や運用面の負担を軽減させ、ローカル5Gの普及にはずみをつけようとしている。具体的には無線コアネットワークの提供、回線サービスの提供、基地局や端末の設備の選定、調達、設置、運用、保守まで、幅広くサポートする。

 住友商事とケーブルテレビ業界は、2019年6月から国内初のローカル5G屋内外実証実験を行って、商用化に向けた基礎的な運用課題などを確認した。12月にはまずケーブルテレビ6社が地方総合通信基盤局に免許申請を提出。早いところでは、2020年前半にも商用サービスを開始できる見通しだという。

 「ケーブルテレビ・ローカル5G」には、どんな強みがあるのだろうか?

【次ページ】ケーブルテレビによる「ローカル5G」の強みとは? 住友商事に聞いた

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