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- 2020/02/04 掲載
マイクロソフト、オラクル、SAP、IBMらメガベンダーとの契約交渉術、ガートナーが指南
交渉相手の目的が何かを理解する
市場では、2つの力が働いている。1つは、売り手側であるベンダー側の「アップセル」の動き。特に上場しているメガベンダーは、前年比8~10%の売り上げ増が毎年の重要命題となっている。もう一つは、買い手側、ユーザー企業の「コスト最適化」の動きだ。メガベンダー各社は、現在クラウドを積極的に推進している。その理由は、サブスクリプションにより一定期間の安定的な売り上げが見通せることや、ユーザーが拡大してもコスト増が比例せずに済むことなどが挙げられる。従来インフラのイメージが強かったクラウドを、ソフトウェアの領域にも広げるべく、各社はクラウドのビジネスソフトウェアを戦略的な製品と位置づけ、営業に力を入れている。
一方、ユーザー企業の目的は、コスト最適化にある。ガートナーが250社の企業に対して行った調査によると、約3割の企業において、コスト最適化は調達・ソーシング部門の最大の目的と見なされている。ユーザー企業は、目的の相反するベンダーと「交渉」を通じて目的を達していかねばならないということだ。
サッコ氏は、効果的な交渉は4つの柱で成り立っていると話す。その柱とは、「戦術」「テンプレート」「契約条件」「タイミング」の4つだ。
チームで連携を図りベンダーに対して隙を見せない
「『戦術』において重要なのは、チーム・アプローチを取ること」だとサッコ氏は話し、メガベンダーと交渉を始める前には、社内の適切な人と連携を図っておくことの重要性を説いた。「なぜかというと、近い将来M&Aをする予定があるか、またはされる側になるのか、分社化の予定があるかといったことから、設備投資と運用どちらが大事なのか、といった経営の方針を理解しておかなければならいないからです。メガベンダーは非常にパワフルですから、IT・調達部門と話して情報を引き出せなければ、直接CIOやCEOに接触を図ります。そのような動きも想定して、社内のステークホルダーを特定し、連携して交渉のチーム体制を組むことが大事なのです」(サッコ氏)
交渉に臨む組織体制を整えた上で、次に重要になってくるのは競争環境を生み出すこと。分かりやすくいえば「相見積もりを取ること」である。そのための第一歩は、どのベンダー同士が、あるいはどの製品同士が競合となるのかを把握することだ。サッコ氏が「マイクロソフトの競合は、マイクロソフト自身である」というように、競合関係にあるのは他社・他社製品であるとは限らない。
「マイクロソフトは、3、4年後には次の製品をクラウドでリリースするはずです。その時には、顧客にはクラウドへアップグレードしておいてもらわなければ困るわけです。そして、そのために今、クラウド移行を進めています」(サッコ氏)
他にもサッコ氏は、オラクルの一番の競合がAWSであること、またオラクルが従来主力だったデータベースからアプリケーションの市場に入り込もうとしているのに対してSAPがHANAでデータベースの市場に乗り込む状況を示し、競合する複数のベンダーを特定し交渉に引き込むことで競争環境をつくることを提案した。
テンプレート(決まった質問)を使い、ベンダーに質問する
交渉の柱としての「テンプレート」というと分かりにくいかもしれないが、買い手からベンダーに投げかける「決まった質問」のことだと考えるといいだろう。「交渉においては、ベンダーが優位で常に『何を買ってほしいか』を伝えてくるが、買い手である客のほうから『私たちが欲しいのはこういうものだ』と伝えなければならない。そのために質問(テンプレート)を用意しておく必要がある」とサッコ氏は説明し、5つの質問例を示した。
<質問例>
1)デリバリの選択肢は?
── オンプレミス、プライベート・クラウド/ホスト型、パブリック・クラウドなど
2)ライセンス・モデルの選択肢は?
── 永久、SaaS、期限付き、使用量ベースなど
3)価格設定メトリック(指標)の選択肢は?
── プロセッサ、売り上げ、デバイス、ユーザー、生産性、資産、APIなど
4)ライセンス保守の選択肢は?
── 基本、プレミアム、サブスクリプションvs. テクニカル・サポート、サードパーティなど
5)契約のモデルと選択肢は?
── ELA、無期限、従量課金、柔軟な使用、リザーブド・インスタンスなど
これらの質問をある種のフレームワークとして使用する。社内のIT財務担当者を巻き込みながら、あらゆる選択肢を分析し、隠れたコストや不明なコストを明らかにしていくことが有効だ。
【次ページ】契約条件(タームズ&コンディション)のチェックリスト
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