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- 2021/12/02 掲載
クラウドERP導入による3+3のメリット、ガートナー本好氏が解説する最適導入方法
クラウドERPは大手主導による本格普及段階に
多様なアプリケーションのクラウド化が進む中、その波はオンプレが当然であったERPにも押し寄せている。ガートナーでは約5年前、生産や販売などの現場に近い実行系ERPについて、業務プロセスの複雑さに起因するカスタマイズの必要性がネックとなり、そのクラウド移行率は2020年まで5%未満にとどまると予測。「しかし、結果的にそれは誤りでした」として予想が上振れたことを打ち明けるのは「Gartner IT Symposium/Xpo 2021」に登壇したガートナー ジャパン リサーチ&アドバイザリ部門 ビジネス・アプリケーション担当 バイス プレジデント アナリストの本好宏次氏だ。上振れの一番の要因が、機能の多様化と統合化を進めた結果、ERPが迅速な変化対応の“足枷”となった対応策として、機能や稼働基盤の適材適所の使い分けに向けた分散化が約5年前から一気に進み始めたことだという。
「柔軟なコンポーネントの組み合わせや組み換えが可能な『コンポーサブルERP』に向け、分散化の粒度は当初の各業務ロジック単位から、今ではマイクロサービス単位にまで細分化されています。その稼働基盤としてスピードと柔軟性を兼ね備え、マイクロサービスと親和性が高いクラウドの必然的な選択がクラウドERP化を加速させています(図1)」(本好氏)
後述する「コンフィギュレーション」や「エクステンション」によるカスタマイズも可能なことから、クラウドERP市場は管理系だけでなく実行系でも堅調な伸びを見せているという。
ガートナーの21年の両製品のマジッククアドラントを見ると、リーダー企業として前者ではオラクルやSAP、Workday、後者でもオラクルやマイクロソフト、Inforといった大手ベンダーが名を連ねる(図2-1/2)。
「その意味するところは、ERPの主戦場がクラウドに移りつつあるということ。その点からも、今後のERPのクラウドシフトはまず間違いのないところなのです」(本好氏)
クラウドのERP化で見込める3+3のメリット
本好氏によると、ERPのクラウド化を通じた、企業は “+α”のメリットを見込めるようになるという。まず、コスト削減に直結するメリットとして従来から、自社開発が不要になることでの「ITコスト削減」や、導入に合わせて実施されるBPRでの「プロセス改善」が挙げられてきた。
そこに新たに加わるのが、(1)アドオンの一掃や機能的なカスタマイズの制約による「技術的負債解消を通じたITコストの削減」、(2)クラウドのコスト負担法に起因する「ITコスト構造変革」、(3)AIやRPAなどのクラウドサービスの併用による「さらなる自動化」の3つだ。
また、金銭には換算できないメリットとしては、各種データの一元化による「決算早期化」や「情報の見える化」、情報共有を通じた「社内外のコラボレーション改善」に加え、新たに(1)クラウドの特性に起因する「即応性/柔軟性向上」、(2)機能進化が早いことでの「最新機能/技術活用、(3)本質的にクラウドではエンドユーザーがオーナーシップを握りやすいことでの「ITとビジネスとの連携強化」などを期待できるようになる。
さらに、「企業としての戦略的なメリットも見逃せません」(本好氏)。具体的には、ベストプラクティスの取り込みを通じた「変革やM&Aの基盤づくり」や、業務標準化を通じた浮いたリソースによる「差別化/革新への注力」、クラウドERPの継続的なアップグレードを通じた各種業務の「デジタル化」と、その延長としてのリモートワークなどによる「新たな働き方」「さらなるリソースシフト」などだ。
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