※本記事は2020年10月16日開催「Withコロナ環境下でのお店の在り方(主催:イグニション・ポイント)」の講演をもとに再構成したものです。
目的地型が苦戦する一方、機能型店舗は堅調
衆議院議員 鈴木馨祐氏(以下、鈴木氏):コロナ禍で来店者数はどのように変化しましたか?
三越伊勢丹プロパティ・デザイン 中北 晋史氏(以下、三越伊勢丹 中北氏):非常に影響を受けました。休業期間もありましたが、再開してからも(前年比で)50%くらい落ち込んでいます。私が担当している竹下通りに至っては前年比で20%まで落ち込んでしまいました。
一方で、来客数は減ったものの、一回当たりの買い上げ単価は上がったという傾向があります。弊社ですと立川や浦和にも実店舗があるのですが、そこでは前年比よりもプラスの売り上げを上げるところもあります。都心以外は、戻りが早い印象です。
タレント 黒田有彩氏(以下、黒田氏):伊勢丹は大学のころから大好きでよく利用するのですが、コロナへの対応が徹底されていて安心できるので好きです。 今日の服も、実は全部、伊勢丹なんです。
三越伊勢丹 中北氏:ありがとうございます。ただし、課題として、これはコロナ以前からの課題なのですが、物販がオンライン化により厳しくなっている状況がありました。私たちは実店舗を「目的地型」と「機能型」の2つに分けて考えることが多いのですが、最近はやはり「街の機能」を担っている店舗はコロナの影響下でも非常に堅調です。たとえば弊社のグループ会社にクイーンズ伊勢丹というスーパーがありまして、こちらは前年比で二桁ほど伸びていましたので、比較的近郊・郊外のスーパーは堅調な形でした。一方で、都心を中心とした「目的地型店舗」が苦戦している印象です。
鈴木氏:今後は機能型に特化していくのでしょうか。それともコロナを一時的なものと捉えて方向性は変えずにいくのでしょうか。
三越伊勢丹 中北氏:コロナが明けたときのために目的地型はより骨太に強化していきながら、それ以外は新しい形に変化させていく方針です。たとえば、FOOD&TIME ISETAN YOKOHAMAのフードコートでは、ロボットによる検温を行うことで、注意喚起を行いながらも、実店舗ならではの楽しさを体感してもらう試みも進めています。
崎陽軒は冷凍に着目し新たな価値を提供
鈴木氏:崎陽軒はシウマイ弁当というイメージで駅やデパートに多い印象ですが、コロナがピークだった時期はやはり売り上げは落ちていたのでしょうか。
崎陽軒 野並晃氏(以下、崎陽軒 野並氏):前年比70~80%ほどダウンしましたね。一方で、住宅立地のところにある店舗のような、人と会わずに行けるようなお店の売り上げは堅調でした。
鈴木氏:これからの経営を考えたときに、どのように変化に対応していこうと思っていますか。
崎陽軒 野並氏:もともと食は景気に左右されにくいものですが、ここまで移動が制限されると、弊社のような商売の仕方は非常に難しい局面に立つと実感しています。
店舗で頑張っても売れないので、ECの活用や宅配などのサービスをもっと頑張っていかないといけません。もともとECサイトなどはもっていましたが、店舗での販売が堅調だったため、なかなかそちらには集中できていませんでした。今回の件で我々の弱い部分を知ることができたので、ここはチャンスと捉えてやるべきことを考えていかないといけないな、と思っているところです。
鈴木氏:変えたところや、今後変えなくてはいけないことはありますか。
崎陽軒 野並氏:もともと弊社では消費期限が短いもの、お客さまが直接来ていただかないと手に入りづらいものを多くラインナップしていました。ただこのような時代になり、運ぶほうに時間をかけてでもお客さまにお届けしなければならないという点で、冷凍に着目するようになりました。そこで「おうちで駅弁シリーズ」という、冷凍でお客さまの元に届けるサービスを、このコロナ禍を機に始めました。
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