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- 2020/12/08 掲載
ECすら終焉か、「独身の日」バイトダンスの成功は小売業の“一大事”だ
記録更新続きの「独身の日」セールに異変
中国全土が買い物に熱狂する11月11日の「独身の日」セール。2020年の流通総額は、アリババの天猫(Tmall)が3,723億元(約5.9兆円)、第2位の京東(ジンドン)は2,715億元(約4.3兆円)と記録を更新した。11月11日単日で開催されていた例年と異なり、2020年の独身の日セールは11月1日から11日までの12日間にわたって開催されたため、Tmallの全期間での流通総額は4,982億元(約7.9兆円)という桁外れのものになった。コロナ禍の影響が心配されていたが、その不安を払拭(ふっしょく)するほどの成功だった。
しかし、本当に“成功”しているのだろうか? というのも、ここ数年は独身の日セールの金属疲労もささやかれるようになっている。その原因は返品率の高さだ。
中国メディアの多くが、独身の日セールの返品率は、服飾品で30%超、その他の商品でも30%近いと報じている。返品率を非公開にしている販売業者がほとんどであるため、この数値の信用度は不明なところもあるが、多くの消費者が30%という返品率に納得をするだろう。利用者の実感に合っているのだ。それほど返品が日常的な行為になっている。
業者も消費者も「返品前提」、浮き彫りになってきた“疲れ”
返品率の高さの原因は、独身の日セールの施策戦略にある。セール期間に多くの人が買い物をするのは、他の期間よりも安く買えるからだ。その安さの理由になっているのが大量の割引クーポンで、主流になっているのが「満減券(マンジエンチュエン)」と呼ばれるもの。「満300減40券」であれば「購入金額が300元に達すると40元割引」になるという、日本語に言い換えるとすれば「利用条件付き定額クーポン」だ。たとえば、販売を促進したい電子機器を295元の値付けにし、満300減40券を配布する。消費者はその電子機器を購入しただけではクーポンが利用できないため、300元に達するように10元の充電ケーブルを同時に購入する。購入額の305元からクーポンが適用されて265元となり、支払額は安くなる。
ところが業者から見ると、295元の本体は仕入れ値ぎりぎりで利益がほとんどでないが、充電ケーブルの方は利益がたっぷりと乗せてあり、こちらで利益を確保しようとする。
消費者は愚かではない。他の業者では同じ充電ケーブルが5元で販売されていることを知っていて、後から充電ケーブルだけを返品する。この場合、クーポンが適用されるのかしないのかは販売業者のルールによる。また、複数のクーポンをどのように組み合わせることができるのかなど、もはやクーポン利用は難解なパズルになっていて、クーポン疲れを起こしている消費者もいる。
また、衣類や靴などのサイズがあるものは、複数サイズを注文して、不要なものを返品する。色違い、素材違いなども写真では判断がつかないので、全部注文して、不要なものを返品する。返品は、賢い買い物のテクニックとして認知されていて、販売業者側も返品を見越して販売計画を立てるようになっている。
このようなゲーム的な買い物に夢中になっている人もたくさんいるが、うんざりしている人も増えている。それでもこの日に購入をするのは「他の日に買うと損をする」からだ。11月11日には、トイレットペーパーや洗剤などの日用消耗品をまとめ買いするだけという冷めている人も増えている。
【次ページ】初参加でアリババ4年目相当を達成したバイトダンス、同社の成功が示すECの未来
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