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  • 2021/03/01 掲載

コロナ克服後も、ショッピングモールに“人が戻らない”悲惨な敗因

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中国に1000数百カ所以上あるショッピングモールが今、悲鳴を上げている。中国では、すでに街の人出は戻っているが、感染拡大期に新小売スーパー、デリバリーなどの「スマホ注文で宅配」の新小売サービスに慣れてしまい、わざわざ郊外のモールまで出掛けて買い物をするという習慣が失われてしまった。いずれ消費者の足が再びショッピングモールに向く日もやってくるかもしれないが、その日まで経営がもたないモールも多そうだ。アリババの創業者、ジャック・マー氏が2016年に予言した「すべての小売業は、新小売になる」が、コロナ禍で加速され、現実になろうとしている。

執筆:ITジャーナリスト 牧野武文

執筆:ITジャーナリスト 牧野武文

消費者ビジネスの視点でIT技術を論じる記事を各種メディアに発表。近年は中国のIT技術に注目をしている。著書に『Googleの正体』(マイコミ新書)、『任天堂ノスタルジー』(角川新書)など。

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終息モードの中国で、ショッピングモールに人が戻らない理由から見えてきた中国小売業の勢力地図の異変とは
(Photo/Fred Lee/Getty Images)


平常運転に戻った中国経済

 中国の実体経済が復調してきている。新型コロナの感染が拡大した2020年第1四半期には、GDP成長率が-6.8%と大幅な落ち込みとなったが、第2四半期には3.2%とプラスに転じ、第4四半期には6.5%と平常運転に戻っている。

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中国のGDP成長率。コロナ禍の2020年第1四半期には-6.8%という落ち込みを見せたが、2020年第4四半期には6.5%と、コロナ禍直前を上回る成長を見せている

 市民感覚でも3月の頭には終息が見え、6月には終息したと感じ、9月には中国政府が人民大会堂でコロナ感染対策の功労者の表彰式を行い、実質的な終息宣言を行った。現在でも、無症状感染者が発見され、散発的に小規模クラスターが発生しているが、コロナ対策チームが急行してその地区を封鎖し、住民、関係者全員を一斉にPCR検査をするという最後の掃討戦を行っている。

 市民は、新型コロナのことはすっかり忘れている印象だが、それでも公共交通機関を利用するときには健康コード(緑、黄、赤で感染リスクを表示するスマホアプリ)の提示、店舗を利用するときはマスク着用と体温検査、さらに長距離移動の制限、自粛は続いている。


今も苦しむ3大業種「旅客・飲食・大型小売店」

 多くの業種でコロナ禍の影響は薄れてきているが、いまだ苦しんでいるのが、旅客関係、飲食店、大型小売店の3つだ。

 旅客関係は、海外旅行、国内長距離移動が制限されているため致し方ないが、「内循環」と呼ばれる現象が起きている。移動制限を受けない都市内、省内で旅行を楽しむ現象だ。そのため、有名観光地では以前と変わらないにぎわいが戻ってきている。移動制限が解除されるに伴い、復調傾向も進むと期待されている。

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海外渡航、長距離移動が制限されているため、旅客数は2019年よりも大きく落ち込んだままだ
(出典:中国国家統計局の統計データより作成)

 飲食店は客足が戻り切らない。感染に対する不安というよりも、内食の習慣ができてしまったことが大きいと言われる。生鮮ECや新小売スーパーを利用して、生鮮食品を宅配してもらい、自宅で調理をする。また、火鍋など、本格的な味を楽しめる冷凍セットを各飲食チェーンがEC販売する「外食の小売化」も進んだ。

 さらに、フードデリバリーもごく日常のものとなり、客足は前年の8割程度という感覚だが、前年並みの売上を確保している飲食店も増えてきている。

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飲食業の売上は2020年の秋口には例年並みに戻った。しかし、多くの飲食店がデリバリー、外食の小売化を進めた成果であり、客足は8割程度の戻りだと言われている
(出典:中国国家統計局の統計データより作成)

 一方で、明るい兆しが見えないのが大型小売店、特にショッピングモールだ。ショッピングモールは、集客をすることが最優先事項のビジネスモデルであるため、中国で進んでいる新小売(店舗、デリバリー、ライブコマースなどを駆使して、店舗とオンラインの両方で顧客を獲得する業態)への対応が遅れた。

 ショッピングモールは、駅ビルの中や駅に隣接をした都市型モールと、郊外に立地する郊外型モールに大別できる。都市型モールでは、通勤や外出のついでに立ち寄る客がいるためまだ落ち込みは小さいが、わざわざ行かなければならない郊外型モールはいまだに苦しみ、店舗の撤退も始まっている。中には、店舗入居率が50%を切り、ショッピングモールの運営そのものが危うくなっているところもあるという。

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大都市、主要都市(一線都市、二線都市)のショッピングモールの空き店舗率。モール店舗は契約期間の都合ですぐには撤退できないため、2020年下半期はさらに空室率が上がるのではないかと懸念されている
(出典:「2020H1一二線都市ショッピングモール空き店舗率報告」(WIN DATA)より作成)

【次ページ】ショッピングモールに人が戻らない理由、中国小売業の勢力地図に変化

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