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  • 2020/05/01 掲載

接触追跡・マップ公開・健康コード、テクノロジーの“反撃”はコロナ終息へ導けるか

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新型コロナウイルスの感染対策として、濃厚接触をテクノロジーで検出し、対策に役立てる取り組みが活発化している。すでに中国では、GPS機能を使った「健康コード」という仕組みが実績を上げ、アップルとグーグルもBluetoothを使った仕組みを共同開発すると発表した。ただし、いずれの場合もプライバシーを懸念する声も根強い。アップルとグーグル、中国、韓国、シンガポールなどの最新の取り組みから、日本はどのような選択をすべきか考えたい。

執筆:ITジャーナリスト 牧野 武文

執筆:ITジャーナリスト 牧野 武文

消費者ビジネスの視点でIT技術を論じる記事を各種メディアに発表。近年は中国のIT技術に注目をしている。著書に『Googleの正体』(マイコミ新書)、『任天堂ノスタルジー』(角川新書)など。

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各国が感染対策にテクノロジーを活用する中、苦悩するのは「公共安全」と「個人の権利」の衝突だ
(Photo/Getty Images)

アップルとグーグル共同開発「接触追跡機能」の仕組み

 新型コロナウイルスに対するテクノロジーの反転攻勢が始まった。アップルとグーグルは、共同して感染者との濃厚接触を通知する接触追跡機能(Contact Tracing Technology)をiPhone、Androidスマートフォンに搭載すると発表した。早ければ5月中にも公開される。

 アップルとグーグルが共同で開発している接触追跡機能の仕組みは極めてシンプルだ。近距離通信規格であるBluetoothを利用する。すでにワイヤレスイヤホンやワイヤレススピーカーなどでおなじみの技術だ。

 複数の人が近距離に一定時間とどまると、スマホ同士で自動的にBluetooth通信が行われ、どのスマホと近距離にいたかを記録する。後に、ある人が陽性と診断されると、接触記録を14日間さかのぼって、その人と濃厚接触をしたスマホがあぶりだされ、保健当局などから連絡がいくというものだ。

 アップルとグーグルが開発をするのはAPIなので、どのような使い勝手になるかは、このAPIを活用したアプリによる。多くの国で、このAPIを使ったアプリが、政府機関、保健当局などによってリリースされることになるだろう。

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グーグルのブログで公開された接触追跡機能の説明。スマートフォンがBluetooth通信を自動的に行い、近距離に10分間いると接触として記録される。後に、陽性の診断を受けた人が現れると、その人と接触した人すべてに保健当局などから連絡がいく仕組みだ
(出典:グーグル)

プライバシーは守られる?

 この接触追跡機能について、多くの人が気にしているのがプライバシー保護の問題だ。陽性診断された人が個人特定されたり、個人の接触履歴が明らかにされたりすることは避けなければならない。

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 この接触追跡技術については、すでにアップルとグーグルが共同で技術概要を公開し、その中でプライバシー保護についても説明している。仕組みとしては、ID(識別子)を時間で次々と変えていくことで、個人とのひも付けができないようにし、プライバシーを保護しようという考え方だ。

 まず、各スマホは個別の追跡鍵を生成する。これは固定で、スマホの外に出ることはない。この追跡鍵をベースにして、24時間ごとに変更される日鍵を生成する。これによって一連の接触記録が管理される。さらに具体的な接触記録は日鍵をベースに15分以内ごとに変更される識別子で管理をされる。つまり、15分ごとに接触記録を管理する識別子を変え、分割管理をすることでプライバシーを守ろうとする考え方だ。

 固定の追跡鍵を持っている本人は、自分のすべての接触記録にアクセスできる。しかし、運営者や第三者は、個々の接触記録にアクセスできるものの、それを結合して、特定の人の接触記録の全体を知ることはできない。さらに、接触記録は14日間たつと必要がなくなるため、自動的に消去されていく。このような方法で、プライバシーを保護しようとしている。

 アップルはすでにiPhone用の「マップ」で似たような仕組みを使っている。iPhoneのマップで検索、経路探索を行うと、Apple IDにはひもづけられず、毎回異なる識別子で別々に管理をされる。

 これにより、アップルはどのような施設、経路が検索されたかという統計情報を取得でき、マップアプリのサービス改善に生かすことができるが、誰がその検索をしたのかまでは分からない。また、特定のユーザーがどのような移動履歴を持っているかもアップルは知ることができない。一方で、移動履歴は本人のiPhone内に保存され、本人だけは過去の移動履歴を知ることができるというものだ。

 接触追跡についても、同様の考え方、技術が使われ、最大限のプライバシー保護が行われると見られている。ただし、すでに専門家から、プライバシー保護技術の不備を懸念する声も上がっていて、そのような不安を解消する技術を追加実装できるか、そして5月中に公開というスピードを達成できるかが焦点になっている。

シンガポール:政府が開発、市民にアプリで提供

 このような接触追跡技術は、すでにシンガポール政府が開発をし、アプリの形で市民に提供をしている。TraceTogetherというアプリで、AppStore、Google Playで公開されている(日本では非公開)。

 このTraceTogetherでは、プライバシー保護については、携帯電話番号とランダムに生成されるIDによる管理のみで、アップルとグーグルのものに比べると簡素化されている。その代わりに、GPSによる位置情報データは取得しない。場所は分からないが、陽性診断を受けた人と濃厚接触をしたことだけが分かるというものだ。

 さらに、他のアプリが接触記録データを利用することを禁じ、利用者の希望に応じていつでも全データの消去が可能であることを保証している。このようなBluetoothを使った接触追跡技術は欧州各国でもすでに開発、検討が始まっている。

 一方で、より簡単なGPSによる位置情報で濃厚接触を割り出そうとしているのが、韓国と中国だ。

【次ページ】「公共安全」と「プライバシー」の衝突をいかに乗り越えるか

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