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  • 2021/03/26

デジタルフォワーダーとは何か、「非効率の極み」を解消する貿易DXの可能性

連載:「日本の物流現場から」

貿易には手間がかかる。輸送の手配、各国での通関業務など煩雑な業務が多く、またアナログな紙文化も根強く残っているために、効率化の妨げとなっているのだ。そんな貿易に関係する業務処理において、ここ数年、急速にデジタル化が進み始めている。そのキーワードの1つが、デジタルの力で貿易手続きを効率化する「デジタルフォワーダー」だ。国内初のデジタルフォワーダー、Shippioの佐藤孝徳CEOへの取材も交え、貿易にDX(デジタルトランスフォーメーション)が必要とされる背景とともに解説していく。

物流・ITライター 坂田 良平

物流・ITライター 坂田 良平

Pavism 代表。元トラックドライバーでありながら、IBMグループでWebビジネスを手がけてきたという異色の経歴を持つ。現在は、物流業界を中心に、Webサイト制作、ライティング、コンサルティングなどを手がける。メルマガ『秋元通信』では、物流、ITから、人材教育、街歩きまで幅広い記事を執筆し、月二回数千名の読者に配信している。

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非効率的な貿易手続きを変えるデジタルフォワーダーとは?
(写真は筆者撮影の本牧ふ頭)

とにかく手間がかかる貿易の手配と手続き

 仮にあなたが、A国で製品を作り、日本へ輸入、販売するとしよう。荷主であるあなたは、さまざまなことを考え、手配しなければならない。

  • A国から日本までの輸送を担う、飛行機ないし船、いずれかの輸送手段の判断と手配
  • A国内での、飛行場ないし港までの輸送手段(航空、水運、鉄道、トラック輸送)の手配
  • 海運を利用する場合、コンテナの手配。また、コンテナ一本を借り切るのか(FCL/Full Container Load)、それとも混載するのか(LCL/Less Than Container Load)の判断や手配
  • A国から輸出するための通関手続き
  • 日本に輸入するための通関手続き
  • 日本国内で一時保管するための倉庫の手配や、販売先まで輸送するトラック、鉄道、船など輸送手段の判断と手配

 貿易においては、まず自分の貨物が、どこにあるのか、どういった状態にあるのかを把握するだけで手間がかかるのだ。

 たしかに、多くの国の税関では、通関処理の状況を問い合わせし、確認できるシステムが提供されている。コンテナ船を運行する海運事業者も、コンテナを追跡できるシステムを提供している。だがこういった情報は一元化されていないため、荷主は、さまざまな会社、さまざまな国(税関等)が提供している、それぞれのシステムにアクセス、情報を確認し、総合的に貨物の状況を判断せざるを得ない。

 加えて、イレギュラーが発生すれば、その対応も必要となる。天候や国際情勢などにより船の到着が遅くなる、もしくは通関手続きで問題が生じ、追加で手続きや対応が発生するケースもあるからだ。

 手間がかかれば、ミスも発生しやすくなる。ミスが発生すれば、その回復のために、さらなる手間が発生する。貿易に関係する業務においては、非効率な業務が悪循環し、さらなる非効率を生む日常が繰り返されてきた。

なお、こうした煩雑な手続きのすべて、もしくは一部を荷主に代わって行う役割を果たす事業者を「フォワーダー」と呼ぶ。貨物を輸出入したいというメーカーや商社、もしくは小売などの荷主の要望に従い、貨物を希望の場所から場所へと輸送するための手配業務を行う。やや業務範囲は異なるが、「通関事業者」「乙仲(おつなか)」も近い意味で使われる言葉だ。

政府の取り組むNACCSは浸透していない?

 もちろん、行政も貿易関連業務の煩雑さに、ただ手をこまねいているわけではない。日本の税関では、手続きにかかる負担を減らすため、「NACCS(Nippon Automated Cargo and Port Consolidated System)」を運用し、輸出入に関連する行政手続きのオンライン化が進められている。

 もともと、航空貨物に関する「Air-NACCS」と、海上貨物に関する「Sea-NACCS」に分かれていたものを2008年に統合、現在では、関係する港湾系サブシステムを統合するなどして、港湾および空港に関する物流情報を総合的に提供するプラットフォームとして活用されている。

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NACCSの浸透は、実際にはそれほど多くはない

 では、NACCSの利用は進んでいるのか。税関の公表資料によれば、通関関係書類がPDF等を用いペーパーレスで申告された割合は、2013年は輸出27%、輸入10%であったが、2017年には輸出90%、輸入89%と大幅に増加している。だが、これは提出全体に対する割合であり、通関事業者に対するアンケートからは別の現実が見えてくる。

 アンケートによれば、NACCSを利用し、ペーパーレス(電磁的記録)で通関関係書類を申告したことがある事業者は、81%に留まる。また、ペーパーレスでの申告をしたころがある事業者においても、「申告のうち、8割以上をペーパーレスで行った」と答えたのは、海上輸出で70.5%、海上輸入で59.9%に留まる。「申告をペーパーレスで行う割合は、3割以下である」と答えた事業者も、海上輸出で14.5%、海上輸入で19.3%存在する。

 私の知る、ある中堅どころのフォワーダーは、ペーパーレス化に積極的になれない理由を、このように語った。

「結局、物流って、貨物という現物があったうえでの仕事じゃないですか。たとえば、なにか問題があれば、貨物がある現場や、税関に足を運ばなきゃいけないわけですから。だったら、最初から紙で書類を提出したほうが、二度手間にならずに済みますからね」

 気持ちは分かる。

 だが、紙で提出された書類を、情報の一元管理を実現し、デジタル化による再利用の利便性を高めるためには、再入力という手間を必要とする。そもそも、デジタル化されない情報は、共有もできない。IT化・デジタル化する仕組みはあっても、現場がついてこない現実がある。これが、貿易に関する諸業務において、手間がかかる一因となっているのだ。

【次ページ】Shippio 佐藤CEOインタビュー、「デジタルフォワーダー」の可能性は

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