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働き方が多様化し、終身雇用を前提とした「メンバーシップ型雇用」から業務を特定して採用する「ジョブ型雇用」への移行を検討する企業が増えている。日本企業も欧米型の雇用に近づきつつあるといわれる中で、個人としてどんな働き方を選択し、サバイブしていけばよいのか。『
転職2.0』を上梓したLinkedIn(リンクトイン)日本代表の村上 臣氏と、『
1行書くだけ日記 』の著者で、Zアカデミア学長の伊藤羊一氏が激動の雇用環境を生き抜く術を語った。
聞き手・構成:ビジネス+IT編集部 松尾慎司、執筆:阿部欽一
聞き手・構成:ビジネス+IT編集部 松尾慎司、執筆:阿部欽一
コロナ禍で「働き方」や「キャリア」について考える人が増えた
コロナ禍によって経営環境の不透明さは増している。2020年平均の有効求人倍率は1.18倍と、前年より0.42ポイント低い低水準だった。こうした状況で転職を取り巻く環境はどうなっているのか。
村上氏は「この1年、リモートワークを続けている状況だ」と述べた上で、コロナ禍によって自宅にいる時間が増えたことで、キャリアについて考える人が増加している傾向があると話した。
転職市場は業種によって明暗が分かれるものの、ITセクターは人材不足も相まって採用に積極的だ。「これまで採用を控えていた大企業も昨秋頃から徐々に中途採用を増やしており、全体的に転職市場は活況さを取り戻しつつある」という。
伊藤氏は、「昨年の緊急事態宣言を経て、7月頃からはリモートを前提にした働き方がある程度、受け入れられる下地が整った印象がある」と話す。通勤時間がなくなり、その時間を使って副業をはじめる人や、プラスアルファの取り組みをはじめる人、2拠点生活をはじめる人など、働き方の変化を実感する出来事があったそうだ。
ただし、伊藤氏は「自分は当時ヤフーにいて、全面リモートワークに移行した環境にあった。オフィスワークを前提にした仕事の人も当然おり、そのあたりの感覚とは異なるかもしれない」と述べる。
村上氏は、「昨年の緊急事態宣言下では大企業を中心に50%くらいの企業がリモートワークを経験し、今も25%くらいの企業が継続している」とした上で、「東京においては大企業を中心にリモートワークを経験した人が多いものの、約70%はオフィスワークを中心とした従前の働き方に戻っている状況ではないか」と述べた。
「キャリア2.0」の中核をなす「ジョブ型雇用」とは何か
村上氏は『転職2.0』という書籍の中で、キャリアに対する考え方のOSを根本的に入れ替え、転職をバージョン2.0にアップデートすべきだと提唱している。
「2.0」というのは、新卒一括採用、終身雇用を前提とした「メンバーシップ型雇用」を1.0として、営業職や経理職、人事職などの職種やマネジメントなどのポジションをベースとした「ジョブ型雇用」への変化を説いたものだ。
「メンバーシップ型は、新卒で企業に入り、入社後に配属が決まります。異動を繰り返してゼネラリストとして会社のことに詳しくなり、定年まで会社に属する働き方といえるでしょう」(村上氏)
一方、ジョブ型は日本以外のアジアを含む海外で一般的な働き方だ。企業は採用前にジョブディスクリプション(職務記述書)で、求める人材の職務の内容を明記する。応募者はそれを見て、求められる分野における専門性を備えていれば応募する。
メンバーシップ型は、社内でさまざまな職種を経験できる一方、ジョブ型では、会社にポジションがなければ他社に移る。アメリカでは平均勤続年数が4年から5年といわれ、ポジションで自分の専門性を高めていくのが一般的だ。
DXで進む「ジョブ型雇用」、当座はハイブリッドに
村上氏は「大企業を中心に、日本でも5社に1社はジョブ型雇用で採用するようになったといわれる」と述べ、転職市場においても、これまでのように総合職を中途採用することから、ジョブ型雇用を採用する企業が増えていると主張する。
一方で、「メンバーシップ型が日本経済を成長させてきた仕組みであることは事実だ」とした上で、企業が今後、競争力確保のためグローバルでビジネスを行う上で、グローバル人材を確保するためにも「ジョブ型採用を増やしていくことは不可避の流れだ」と語る。
これに対して伊藤氏は、「メンバーシップ型とジョブ型、両者のいいところを融合させる必要性を企業は認識しているものの、具体的な導入は本格化していないように感じる」と述べた。
その点について村上氏は、「従来の製造業や大手商社などでもDX(デジタルトランスフォーメーション)を担うデジタル部門を子会社化してジョブ型雇用を進めるなど、取り組みを進める企業がある」とし、終身雇用で採用された人材とジョブ型で採用された人材が混在するハイブリッド状態はしばらく続くだろうと話した。
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