アジャイル開発ツールベンダー16社
アジャイル開発を実施する場合に有効なのが、企業向けアジャイル開発計画ツール(Enterprise Agile Planning Tools:以下、EAPツール)だ。調査会社のガートナーは、EAPをアジャイル型ソフトウェア開発の管理のために、ビジネス成果主導のアプローチの実施を支援するためのツールとして定義している。
そのうえで、ビジネスの成果に基づいて月次、週次、日次で数値を更新しているか、Scaled Agile Framework(SAFe)などのエンタープライズアジャイルフレームワークのサポートがあるか、製品ロードマップの優位性、仕事の流れの可視性・コラボレーション機能の充実度といった視点から、各ベンダーを評価している。
なお、SAFeは、生産性向上、市場投入までの時間の削減、品質や従業員のエンゲージメントの改善など、アジャイルを拡張するためのフレームワークとして、Scaled Agile社が提供しているものだ。
2021年4月発表の「Magic Quadrant for Enterprise Agile Planning Tools」では、ベンダーを以下のようにリーダー、チャレンジャー、ニッチプレイヤーに分類している。
主要な企業向けアジャイル開発計画ツールベンダー(EAP)
リーダー |
アトラシアン(Atlassian) |
Digital.ai |
プランビュー(Planview) |
サービスナウ(ServiceNow) |
ブロードコム(Broadcom) |
ギットラボ(GitLab) |
ターゲットプロセス(Targetprocess) |
チャレンジャー |
マイクロソフト(Microsoft) |
シーメンス(Siemens) |
IBM |
ニッチプレイヤー |
Inflectra |
Planisware |
Digte |
マイクロフォーカス(Micro Focus) |
TCS |
Farvo |
(ガートナーの資料を基に筆者作成) |
ここではリーダーとされている企業を中心に、各社の主なツールを見ていこう。
Atlassian
Atlassianが提供するEAPツールは「JiraAlign」だ。複数のエンタープライズアジャイルフレームワークをサポートする大規模企業向けツールである。2020年10月にはJiraAlignのクラウドへの移行と、今後オンプレミスのサーバー版のサポートを終了すると発表している点に注意が必要だろう。
Digital.ai
Digital.aiの「Digital.aiAgility」は、SAFe、LeSS、DADなどのエンタープライズアジャイルフレームワークをサポートしている。2020年にCollabNetVersionOne、XebiaLabs、Experitest、Numerify、Arxan Technologiesが合併してDigital.aiを結成後、ツール全体に大幅な改善を施した。
ServiceNow
ITサービスを提供するServiceNowのプラットフォーム上に、ITBusiness Management(ITBM)として提供している。中規模から大企業を対象とし、過去1年間SAFeのサポートを拡大、AzurePipelinesやGitLabなどのサードパーティツールと統合するなど拡張を続けている。
Broadcom
Broadcomが提供するRallyはポートフォリオプランニングで、Clarityは管理機能で、エンタープライズ規模のアジャイル開発を支援する。価格競争力に優れる点も特徴となっている。RallyとClarityが別製品であることや、全体として大企業向けであるため、中小企業が導入するには負担が大きい可能性があるという。
GitLab
GitLabは幅広いユーザーと寄稿者コミュニティで開発されている点で、他製品と異なっている。GitLabによるSAFeのサポートが限られている点に注意が必要だ。
Targetprocess
社名と同名のツールであるTargetprocessにより、組織はリーンでアジャイルな開発を大規模に推進できる。年10%ほどのペースで着実に成長しているが、競合他社に比べると成長が遅く、規模も小さい。アクセンチュアが主要なパートナーだが、直接販売をメインとしている。
ここまでがリーダー企業だが、これを追う形で、マイクロソフトやIBMなどの主要企業がチャレンジャーとしてツールを提供している。
マイクロソフト
マイクロソフトは開発サービスであるAzure DevOpsスイートの一部としてAzure Boardsを提供している。
IBM
IBMはEngineering Lifecycle Management(ELM)スイートの一部としてIBM Engineering Workflow Managementを、EAPツールとして提供している。
アジャイル開発は、企業システムで急速に進むクラウドシフトやDXへの取り組みによって、今後さらにアプリケーション開発手法の主流になると見込まれている。各社の組織体制強化状況などを参考に、ツールの効果的な利用を含めて、ビジネスにおける競争優位性確保ための一策として準備しておきたいところだろう。