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- 2021/10/07 掲載
メタバース参入のマイクロソフトとフェイスブック、より現実的な解を出したのは…?
連載:米国の動向から読み解くビジネス羅針盤
「メタバース企業」に生まれ変わるフェイスブック
フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は7月のアナリスト向けの四半期決算発表で、50億ドル(約5500億円)を投じ、同社をソーシャルメディア企業から、「メタバース企業」に作り変えるビジョンを前面に打ち出した。ザッカーバーグCEOは、「モバイルは今日のプラットフォームだが、弊社は現在、明日のプラットフォームの(メタバースの)準備もしている」と語った。それは、「仕事や遊び、コミュニケーションの方法を変える」イノベーティブなものになるとの触れ込みだ。フェイスブックは、拡張現実や仮想現実のプラットフォームとなるメタバースを、極めて多人数が同時にオンラインで参加するゲーム(massively multiplayer online game、MMO)のようなものとして構想している。
具体的に、同社のVR機器のOculus Quest 2向け会議専用ソフトであるHorizon Workroomsでは、Web会議のZoomやTeamsでは困難だとされる、セレンディピティ(思わぬものを偶然に発見する環境)が提供できるという。
事実、現実空間でのWeb会議では、アジェンダをこなすことに重点が置かれるため、自由闊達な議論や「バズり」が生まれにくいことは、かねてから指摘されていることだ。そのため、メタバース内のHorizon Workroomsで参加者全員がアバターとなって、軽いノリでチャットを楽しめば、ひらめきが生まれるというのが、フェイスブックの主張である。
「Web会議ではイノベーションが生まれにくい」への回答か
フェイスブックのセールストークに根拠があるかはさておき、フェイスブックやマイクロソフトなどテック大手自身が、人と人との現実の交わりの中で芽を出す有益なアイデアを重視しており、新型コロナウイルス感染拡大が下火になれば、従業員をオフィスに戻したがっていると、米『タイム』誌が9月8日付の「シリコンバレー、リモートワークからの脱却に苦心」と題する特集記事で伝えている。その理由として『タイム』誌は、「テック大手は従前より、従業員を物理的な場所で一緒に仕事をさせて意見交換させることで、イノベーションが生まれると信じてきた。これは、(リモートワークなどの)孤立の中では不可能だと、IT企業は考えている」と分析している。
しかし同記事は、「一度ツボから脱け出した妖精(リモートワークやハイブリッド型の仕事)は、もう元に戻すことはできない」と論じている。フェイスブックのメタバースは、まさにこの「リモートワークの定着は不可逆、しかしWeb会議ではイノベーションやひらめきが生まれにくい」という課題への解答として売り込まれているのだ。
【次ページ】現実的なマイクロソフトのアプローチ
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