- 会員限定
- 2021/07/01 掲載
「フェイスブックに買収されてもいい」、VARK加藤卓也氏に聞くVRで勝負するワケ
連載:メタバース・ビジネス・インサイト
6億円調達はまだ「入場チケット」に過ぎない
──取材直前に資金調達のニュースが飛び込んできました。6億円の増資はどのように決まったのですか?加藤卓也氏(以下、加藤氏):第三者割当増資の募集をスタートして2ヶ月後には早々にジャフコ グループがジャッジしてくれ、さらに博報堂DYベンチャーズが決めてくれたので、その時点でとりあえず6億円の出資を達成しました。ここに至る2~3年で70社くらいに断られ続けていますから、ようやく調達できたという印象です。
──なぜ、苦戦続きだった状況から今、資金が集まったのでしょうか?
加藤氏:VARKの事業が伸びてきたこともあると思いますが、それ以上にVRが“普通の存在”になってきたということではないでしょうか。ただ、6億円といっても僕らにとっては「入場チケットを手に入れた」くらいで、これでようやくスタートラインに立てたぐらいと思っています。VARKのライブ1回あたりにかかるコストに対して、収入はそのコストを補うほどではありません。プラットフォームとして大規模開発を求められるので資金が必要でした。
──本当はどのくらい必要だとお考えですか?
加藤氏:たとえばゲームでは大型タイトルの開発を行うために少なくとも100億円は必要です。僕らも当初から50~100億円はかかるだろうと見込んでいました。でも「100億もかからないでできる」ということを見せていきたいと思っています。
世界を見渡しても今、競合はいない
──新型コロナによる追い風や影響は感じますか?加藤氏:うちはあまり関係ないですね。コロナで始まったものは、コロナとともに終わっていく可能性があります。一方、僕らは2018年からバーチャルライブをやっています。コロナ禍になり、これまでは一部の人たちが熱狂的に良いとしていたものが一般の人たちにまで広まりました。バーチャルに対する大規模なマーケティングが行われた、というような印象です。
この1年余りで、色々な企業がVR事業にチャレンジしては手を引いていきました。特にバーチャルライブは技術的に開発が難しい面があります。そのため、開発にかかる負荷やコストも大きくなります。
そのうえ、ユーザーはもちろん、アーティストにも満足してもらわなければ続かない。クオリティが非常にモノを言います。その点、VARKのライブは満足度98%に達しており、クオリティが群を抜いていると自負しています。
──そんなVARKの競合はどこですか?
加藤氏:僕たちの見解としてはいないと思います。世界を見渡してもバーチャルライブを本気でやっているのは、日本、米国、あとは中国くらいで、各国1社くらいしかいません。2018年の勃興期にヨーロッパではどの国からも出てきませんでした。そのタイミングでスタートできてないと、後から参入するのは厳しいと思います。現時点での主なマーケットも米・中・日の3カ国です。
──ベンチマークしているところはありますか?
加藤氏:フェイスブック社の動きは常に見ています。今やフェイスブックの社員の1/5はVRやARに関わっています。「Oculus(オキュラス)」アプリはフェイスブック社のチェックがないと出せませんし。いつ、何を、何台、どこで、いくらで出すのか。そしてメタバース(注1)を視野に入れた注目の「Horizon(ホライズン)」はいつ出るのか(笑)。
Horizonは2019年の秋、全世界に向けて華々しく発表されましたが、まだ出てきません。「Done is better than perfect」のザッカーバーグが出してこない理由はなぜなのかが気になります。
ほかにチェックしているのは、世界中のVTuber(バーチャルYouTuber)をはじめバーチャル空間で活動している人たちの動きです。彼ら彼女らが何をクリエイトしているかはいつも気にしています。
【次ページ】エンタメVRの未来はハードかソフトか
関連コンテンツ
PR
PR
PR