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- 2022/02/18 掲載
優秀な学生は「ミネルバ大学」を選ぶ理由、なぜハーバード大学より人気があるのか?
【連載】成功企業の「ビジネス針路」
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ミネルバ大学とは
中にはハーバードやスタンフォードなどの超一流大学を辞退して来る学生もいます。前述した通り、ミネルバ大学には普通の大学には必ずあるものがありません。
ミネルバ大学は、校舎や図書館、運動グラウンドなどの学校施設を持っていません。同大学は全寮制(学生寮は賃貸)となっており、サンフランシスコ、台湾、ブエノスアイレスなど世界7カ国の都市に滞在しながら、授業を受けることとなります。滞在する都市そのものがキャンパスと位置付けられています(現在は、コロナ禍の影響で5カ国)。
ミネルバ大学の授業の最大の特徴は、すべての授業がオンラインで行われていることです。授業は、学生同士のディスカッションが中心で、必要な知識は事前に学習した上で授業に臨みます。教員は、知識を説明するための講義は行わず、授業中に10%以上話してはいけないルールとなっています。
授業内容はすべてPC上で録画されており、教員は学生の授業中の発言や活動状況を確認した上で、学生へのフィードバックや成績評価を行います。録画された授業内容は教員の評価やフィードバックにも使われます。これは、「実社会ではテストが行われることがない」ことが理由となっています。
ミネルバ大学の人気の理由は?
上記の通り、キャンパスも、講義も、テストもないミネルバ大学がなぜ高い人気を誇っているのでしょうか。主な理由を以下にまとめてみます。1つ目は、独自の教育プログラムです。授業は、アクティブラーニング(生徒が能動的に学ぶ学習法)を実践するため、独自開発のオンライン・プラットフォームを活用して、学生からのリアルタイムでのフィードバックを基に進められます。各学生の表情や課題の進捗が把握できる、グループ討議が瞬時にできるなど、オンラインのメリットを最大限活用しています。
もう1つの特徴として、世界7カ国に滞在しながら、企業、自治体、NPOとの共同プロジェクトなどのオフラインによる教育プログラムを通じて、実践的な問題解決スキルを習得が可能となっています。
2つ目は、質の高い教員です。前述の元ハーバード大学のコスリン教授をはじめ、ミネルバ大学には、質の高い教員が揃っています。ミネルバ大学の教員には、通常の大学教員に与えられるテニュア(終身雇用の保証制度)も、大学の研究施設もありません。それにも関わらず、オンライン授業のため勤務地の制約がないこと、年功序列ではなく授業内容によって評価が決まること、最新の教育理論に基づいた教育方法を実践することが出来ることから、特に若くやる気のある教員にとっては、魅力的なポジションとなっています。
3つ目は、学費です。たとえば、ハーバード大学の学費は年間500万円にも及びます。これに対し、ミネルバ大学の学費は年間150万円程度とハーバード大学の3分の1以下となっています。受験料は無料で、財務支援制度も充実しており、アフリカや東南アジアなど、所得水準の低い国々の学生にも門戸を開いています。実際、ハーバード大学は約3割が国内の学生なのに対して、ミネルバ大学では約8割が留学生となっています。
こうして、世界中から選りすぐられた優秀な学生や教員が集まり、「高等教育を再創造した大学」として、教育関係者やメディアからも高い評価を得ています。
こうしたミネルバ大学の人気を受け、王者ハーバード大学がミネルバ大学と同じような戦略(同質化戦略)をとってしまえば、ミネルバ大学には打ち手が無くなってしまうのですが、実際はそのような結果とはなりませんでした。それは、ミネルバ大学の戦略上の打ち手が優れていたからにほかなりません。
ここからは、ハーバード大学の戦略とミネルバ大学の戦略をそれぞれ比較しながら、ハーバード大学がどうやってもミネルバ大学に勝てない理由を解説していきます。
【次ページ】「ハーバード大学」が「ミネルバ大学」を真似できない理由
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