新規会員登録再開のお知らせ

新規会員登録を9月14日9:30より再開いたしました。ログアウト状態になっている方はお手数ですが再度ログインをお願いいたします。

  • 会員限定
  • 2022/03/14 06:10 掲載

5分でわかるEMS(製造受託企業)、Tier1の仕事を奪う?台湾ホンハイら主要企業を解説

連載:デジタル産業構造論

3
会員(無料)になると、いいね!でマイページに保存できます。
メーカーから製品の製造を受託する「EMS(製造受託企業)」が製造業の主役になる日が近づいている。これまで世界中のメーカーの製品製造を請け負ってきたEMSには、ものづくりにおけるあらゆるノウハウが蓄積されており、ほかの製造業企業を脅かすほどの実力にまで成長してきている。ここでは、そもそもEMSとは何か、広がりつつあるEMSの役割とビジネスモデル、さらには注目を集めるEMS企業などについて、図解を交えながら分かりやすく解説する。
執筆:法政大学 デザイン工学部システムデザイン学科 准教授 小宮 昌人

法政大学 デザイン工学部システムデザイン学科 准教授 小宮 昌人

法政大学 デザイン工学部システムデザイン学科 准教授 / d-strategy,inc / Third Ecosystem,inc / Inclusive AI,inc 代表取締役CEO

 野村総合研究所、産業革新投資機構JIC-VGIなどを経て現職。法政大学 デザイン工学部 システムデザイン学科 准教授として、産業価値デザイン研究室にて生成AI・AIエージェントや、フィジカルAI・AIロボット、データスペースなどデジタル技術・先端技術をビジネスや社会の価値へ転換するための手法論の教育・研究を実施。

 戦略・DX支援企業のd-strategy,inc(企業のAI変革、DX戦略、デジタルソリューション戦略)を創業し代表取締役として、フィジカルAI、AIエージェントをはじめとするデジタル化・自動化・技術変化の中での企業やスタートアップのDX/ソリューション・イノベーション戦略を支援。

 また、グローバルでのスタートアップエコシステム連携プラットフォームのThird Ecosystem,incの代表取締役CEOとして海外・国内のスタートアップエコシステム(VC/CVC/企業/大学/政府機関/スタートアップ)の連携・活性化、スタートアップ企業やエコシステム企業の海外展開支援や、海外スタートアップの日本展開に取り組む。

 Inclusive AI,incにおいて盲ろう者(目が見えない・見えづらく、耳が聞こえない・聞こえづらい)、視覚障害者、高齢者等向けのAIエージェントなどのAIサービス開発を実施。「制約のある方を含めすべての方が前向きに活き活きと暮らし、学び、挑戦できる世の中」をAIエージェントやフィジカルAIを通じて実現していくことを目指す。

 最新刊として『フィジカルAI進化論~自律するロボットとともに作る産業の未来~』(SBクリエイティブ)を26年10月1日に出版予定。

 その他、近著に『生成DX~生成AIが生んだ新たなビジネスモデル~』(SBクリエイティブ)、『メタ産業革命~メタバース×デジタルツインでビジネスが変わる~』(日経BP)、 『製造業プラットフォーム戦略』(日経BP)、『日本型プラットフォームビジネス』(日本経済新聞出版社)があり、ビジネス+IT連載『デジタル産業構造論』、MONOist等にてWebメディア連載。

 youtubeチャンネル『フィジカルAI時代の産業論 (d-strategy / Third Ecosystem 小宮昌人)』 @dstrategyinc にて生成AIをはじめ産業のデジタル化を解説

photo
台頭する「EMS(製造受託企業)」は業界へのインパクトが大きい…Tier1企業は仕事を奪われてしまう?(後ほど詳しく解説します)

EMSとは何か?

 EMS(electronics manufacturing service)とは製造受託企業を意味し、他社の製品の製造を請け負う企業を指す。

 国内には、製品の設計・生産などを自前で行う企業もあるが、そうでない場合の多くは、外部の企業に製造を委託している。その際、メーカーから依頼を受け、製造工程の一部またはすべてを受託するのがEMS企業だ。

 EMSで有名な企業としては、アップルのiPhoneや任天堂Wiiなどの製造を担っている台湾の「鴻海精密工業(フォックスコン)」などが挙げられる(そのほか主要企業は後ほど解説する)。

 EMSは、他社の製造を請け負うEMS専業の企業と、自社のものづくりを行っており、そのノウハウを生かしてEMS展開も行う企業も存在する。2014年にソニーから独立したVAIOは、自社ブランドのPC製造や、ソニー時代のアイボ製造の経験をもとにEMS展開も行う。

 また、Electronics Manufacturing ServiceというEMSの名称から見られるように、元々EMSは電子機器の製造・設計などを請け負うことが多かったが、近年は請け負う製造領域が自動車や医療・ヘルスケア、ロボット・産業機器、航空・宇宙などに拡大してきている。

画像
図表1:EMS(製造受託企業)が請け負っている主な製造領域
(出典:筆者作成)

将来、EMSが「製造業の主役」になると言えるワケ

 従来、EMSは新興国における製造や特定製品の製造を複数メーカーから受注し、規模の経済を働かせ製造コストを抑えるといったモデルを武器に拡大してきた。

 しかし、現在ではその役割や機能も大きく広がってきている。EMSが製造のみならず製品設計・開発も請け負うODM(製品設計・開発+製造受託企業)化するとともに、あらゆる企業のものづくりニーズに応えてきた経験を生かして独自にソリューションを展開するなど、単なる受託製造企業として役割から拡がってきている。

 たとえば、シンガポールに本社を置く大手EMSフレックスは、シンガポール・ドイツ・イスラエルにグローバルR&D(研究開発)拠点を持ち、世界中の顧客の製造案件を引き受けてきた経験を基に、先端の製品設計をはじめ、生産技術・ラインエンジニアリングの開発を行うようになっている。つまり、顧客のモノづくりニーズに応じた最適なラインの構想・設計・導入を行うラインビルダ―としての機能を持つようになってきているのだ。

 また、EMS企業はその収益規模や量産技術を生かして先端のスタートアップのインキュベーションを行っている。これは、スタートアップの持つ先端技術の取り込みを行うとともに、EMSとしての製造ノウハウをスタートアップの技術と組み合わせて、ロボットや製造IoTソリューションの外販を行うためだ。

 このように、世界中の企業から製造を請け負う中で、先端のものづくりのニーズを把握・蓄積できるほか、先端技術を試す「現場」を持つ立場にあるEMSが、今後製造業においてキープレイヤーになっていくことは間違いない。

画像
図表2:従来の役割から進化するEMS
(出典:筆者作成)

EMS企業の主要プレイヤー

 EMSは、1980年代などからシリコンバレーでIBMやヒューレット・パッカードなどのPC関連企業の製造を受託する中で拡大してきた。加えて、メーカーの売却した製造部門を吸収するなどをして成長してきた。日本においてもソニーなどのエレクトロニクス企業がEMS企業への製造機能の売却・委託を進めていった背景がある。

 現在では、フォックスコンを中心とする台湾勢や、シンガポールを本社のフレクトロニクス、北米本社のジェイビルやサンミナなどがグローバルで大手EMSとして拡大している。そのほか、主要EMS企業は下記の通りだ。

画像
図表3:主なグローバル大手EMS企業
(出典:筆者作成)

EMS台頭のインパクト(1):Tier1企業の仕事を奪う

 進化し続けるEMSは、彼らへの製造委託が一般的になっている電子機器・エレクトロニクス企業に限らず、既存の強固なサプライチェーン構造が存在する自動車業界も大きく変えようとしている。その変化の構造としては下記の通り。

  1. (1)Tier1がEMSと争わなければならない時代へ(EMSによるTier1飛ばし)
  2. (2)新たなものづくり標準を通じた既存サプライチェーンの組み替え(フォックスコンによるMIHプラットフォーム)
  3. (3)自動車メーカーが担ってきた車体製造をEMSが担い、誰もが車を作れる時代へ(マグナによるEVなどの車体製造請負)

画像
図表4:EMSが与える自動車業界へのインパクト
(出典:筆者作成)

 まず、(1)「Tier1がEMSと争わなければならない時代へ(EMSによるTier1飛ばし)」であるが、近年日本の屋台骨の自動車部品産業においては今まで担ってきたTier1サプライヤーのポジションを新興国のEMS企業(製造受託企業)に奪われるケースもでている。

 従来は部品企業が自動車メーカーと部品を設計した上で自社工場のライン設計を行い、製造、製品を納入してきた。しかし、それらのプロセスを製品開発力も持つEMSが行うようになり、自動車メーカーが直接EMSに依頼し、EMSが製品開発・製造を担う「Tier1飛ばし」の構図も生まれてきている。

画像
図表5:EMSの存在が、Tier1企業を脅かすようになってきた
(出典:筆者作成)

 エレクトロニクス製品においては、グローバルでありとあらゆるモノづくりを行い圧倒的な価格競争力とノウハウ蓄積を図るEMSの台頭により、既存の部品メーカーは特定分野においては、彼らと受注にあたり競争しなければならない状況になっているのだ。

【次ページ】EMS台頭のインパクト(2)~(3)、効果的にEMSを利用、EMS展開する日本企業(ソニー・VAIO・浜野製作所)の事例を解説
関連タグ タグをフォローすると最新情報が表示されます
あなたの投稿

    PR

    PR

    PR

処理に失敗しました

投稿したコメントを
削除しますか?

あなたの投稿コメント編集

通報

このコメントについて、
問題の詳細をお知らせください。

ビジネス+ITルール違反についてはこちらをご覧ください。

通報

報告が完了しました

コメントを投稿することにより自身の基本情報が
本メディアサイトに公開されます

基本情報公開時のサンプル画像
報告が完了しました

「」さんのブロックを解除しますか?

ブロックを解除するとお互いにフォローすることができるようになります。

ブロック

さんはあなたをフォローしたりあなたのコメントにいいねできなくなります。また、さんからの通知は表示されなくなります。

さんをブロックしますか?

ブロック

ブロックが完了しました

ブロック解除

ブロック解除が完了しました

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

ユーザーをフォローすることにより自身の基本情報が
お相手に公開されます

基本情報公開時のサンプル画像