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- 2022/05/02 掲載
中国EC徹底解説:EC大国はこうして作られた、なぜ中国でばかり「巨大EC」が続々誕生するのか
世界のECランキングにみる「EC大国・中国」
国際連合貿易開発会議(UNCTAD)は毎年、世界のECに関する比較レポートを公開している。最新版で使用されているデータは2019年、2020年のものとやや古いが、国際比較ができる貴重なレポートだ。このレポートによると、世界のECの流通総額(GMV)ランキングは、アリババが1位、アマゾンが2位という結果となった。アリババは実質中国国内のみのサービスであり、アマゾンはグローバルであることを考えると、いかにアリババの「淘宝網」(タオバオ)、天猫(Tmall)が中国で浸透しているかがわかる。
さらに3位以下を見ても、ほとんどが中国と米国のECであり、それ以外はカナダのShopifyと日本の楽天が入っているだけだ。
さらに、国別でECのGMVを比較してみると、中国がいかにEC先進国であるかがわかる。中国のGMVは15.39億ドルで米国の12.61億ドルよりも20%ほど高いだけだが、GDP(国内総生産)に占めるGMV割合は、中国は10.7%で、米国の5.9%の1.8倍になる。日本でもコロナ禍以降、ECの利用が拡大しているが、日本のGMVは1.78億ドルで、中国のGMVは日本の8.6倍、GDP比率では3倍になる。
EC大国を作り上げた巨大ECプラットフォームの数々
なぜ、中国ではここまでECが利用されているのか。それはECが中国で独自の進化を遂げたからだ。アマゾンやタオバオは、実は実体店舗のオンライン化の域を脱していない。アマゾンは巨大なオンライン百貨店であり、タオバオは巨大なオンラインバザールだ。そのため、消費者は店舗での買い物に近い感覚で利用できる。だからこそ受け入れられ、広く普及した。欲しい商品をいったんカートに入れ、レジでまとめて決済をするのも実体店舗のアナロジーだ。以降で紹介する進化したECでは、このカートという概念すら存在しない。
中国では、アリババのタオバオと、家電に特化した京東(ジンドン、JD.com)の2大ECが市場を支配する時代が長く続いた。しかし、2010年代中頃になると、このようなベーシックなECとは異なるコンセプトのECが続々と登場してくる。InstagramとECを合体させたような小紅書(シャオホンシュー、RED)、SNSと組み合わせてグループ購入を促す拼多多(ピンドゥオドゥオ)などだ。
さらに、中国版TikTokである抖音(ドウイン)、快手(クワイショウ)のショートムービープラットフォームによるECも人気が高まっている。
抖音、快手は現在自社による商品物流の機能を構築している最中で、扱っている商品はタオバオ、京東、拼多多などに出品されている商品が多い。これを販売し、送客手数料を得るというビジネスが中心になっているため、独自GMVは小さいものの、全体では2021年の抖音のGMVが8,000億元(約14.4兆円)、快手が6,500億元(約11.7兆円)程度と推定されている。
現在、2/3から1/2程度が他ECの商品の販売になるが、両社とも自社扱い商品への転換を進めている。この数字は、先ほどのUNCTADの世界ランキングで5位から6位に相当するもので、両社の体制が整ったら、2つの巨大ECプラットフォームが登場することになる。
【次ページ】なぜ、中国で次々と巨大ECプラットフォームが登場するのか?
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