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- 2022/05/26 掲載
大和ハウスやGLPら続々参入、倉庫より「ケタ違いに儲かる」データセンターの魅力とは
連載:「日本の物流現場から」
倉庫とデータセンターは意外と相性抜群?
物流不動産ビジネスを手掛ける営業にとって、データセンター案件は大物だよ──こう語るのは、倉庫をデータセンターへとリノベーションする案件の獲得経験を持つ、物流不動産業の営業マンである。先の営業マンは、「荷主から買い叩かれやすい貨物の保管料、入出庫料などをよりどころとする倉庫ビジネスに比べ、データセンタービジネスは、売上のケタが異なる」と、その魅力を語る。データセンターのほうが建築費にしても、物流施設よりも大きな投資を必要とするからだ。
倉庫とデータセンターでは、天井高や床耐荷重など、建築物として求められるスペックに共通項も少なくない。倉庫では、より多くの貨物を収納するために、天井高の高さや、重量物にも耐え得る床耐荷重が求められる。
対してデータセンターも、サーバを収納するラックの上下に、サーバを冷却するための空調ダクトや、通信ケーブル・電源ケーブルを通すためのスペースが求められるため、やはり高い天井高が求められる。複数のサーバを収納したラックは重いため、住宅・オフィス向け建築物では、求める床耐荷重を満たすことができない。
こういった事情から、倉庫をデータセンターへとリノベーションする動きは以前からあった。
たとえば、2000年に寺田倉庫が設立したビットアイル(現在は寺田倉庫から売却され、エクイニクス・ジャパンと商号変更)は、寺田倉庫が天王洲付近(東京都品川区)に保有していた倉庫をデータセンターに転用し、サービス提供を行っていた。
当時、筆者もビットアイルを利用していた。現地を訪問した際、担当者から「この先の倉庫も、今データセンターに改修中なんですよ」と言われ、「倉庫をデータセンターにするのか?」と驚いた覚えがある。
大和ハウスは“超野心的”プロジェクトを展開
とは言え、データセンターと倉庫では、求められるスペックで異なる点も多い。倉庫に比べ、データセンターは、フィジカルセキュリティに対する要求が圧倒的に高い。不届きな輩が不法侵入し、サーバや施設に損害を与えることがないよう、データセンター内への出入りは厳重に監視される必要がある。トラックなどが出入りする関係上、開放的な出入り口が多い倉庫とは、大きく異なる点である。
また、最近需要が増えているメガクラウド事業者向けのハイパースケールデータセンターでは、1平方メートル当たり2.0~2.5トンの床耐荷重が求められるという。旧来のデータセンターだと、求められる床耐荷重は1.2~1.5トンだったが、さすがに2.0トンを超える床耐荷重を実現している倉庫は一般的ではない。ほかにも、耐震・免震構造、UPS(無停電電源装置)・非常用発電機など、データセンターだからこそ、必須の設備もある。
しかし、大和ハウス工業は2020年10月、住宅やオフィスビル、物流施設などに続く新たなビジネスの柱として、データセンター事業を打ち出した。東京ドーム約7個分に相当する23万5000平方メートルで千葉県印西市の敷地内に、14棟のデータセンターを段階的に建設、総延べ床面積は約33万平方メートルになるという。完成すれば、日本最大級のデータセンター団地となる、野心的なプロジェクトである。
2022年3月には、2025年までに首都圏で6棟、1,000億円の投資を行い、データセンター開発を進めることを発表した。報道によれば、物流施設用に確保していた敷地の一部をデータセンター向けに計画変更したともある。
データセンターと倉庫の求められるスペックでは、共通項もあるが、異なる点も多い。にもかかわらず、大和ハウス工業に続き、大手物流施設デベロッパーがデータセンターに参入する理由はなぜだろうか。
【次ページ】日本GLPは「1兆円超」投資、目指すは日本最大
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