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  • 2022/06/30 掲載

2024年問題や脱炭素…課題だらけの物流は持続するのか? ESGで超重要な「8つの対策」

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物流業界では2024年問題や脱炭素など多くの課題が山積していますが、物流機能を維持するにはESGの観点がとても重要な役割を担います。たとえば、厳しさの増す環境規制に対応しなければトラックを走らせることすらできません。また働きやすい労働環境を整備しなければ人材を確保できず事業を継続することが難しくなります。ESGの取り組みは物流の維持に直結するのです。では、具体的にどのような取り組みがあるのでしょうか。本稿では物流業界が直面するESG経営の実態や取り組みを詳しく解説していきます。

執筆:船井総研ロジ ロジスティクスコンサルティング部 部長 田代 三紀子

執筆:船井総研ロジ ロジスティクスコンサルティング部 部長 田代 三紀子

製造業・小売業を中心とした荷主企業に対して、物流の改善提案を行い物流拠点の見直し、コスト削減策の提案を実施し、物流子会社に対しては存在価値、あるべき姿の策定、他社との競争力評価を行っている。得意なカテゴリーは、化学・小売・日用雑貨など。物流をテーマにした数少ない女性コンサルタント。最近ではESGロジスティクス、カーボンニュートラルロジスティクスをテーマに活動を進めており、2024年問題への対策にも対応している。

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物流業界が直面しているESGの実態と取り組むべき施策とは
(Photo/Getty Images)

CO2排出量は日本全体の20%、でも削減率は「最低」

 ESGとは地球環境の問題(E)、人権問題・差別といった社会問題(S)、コーポレートガバナンス(G)のことを指します。物流業界でもこのESGに大きな注目が集まっています。

 まず物流業界における環境面では、温暖化の要因となる二酸化炭素(CO2)の排出量の多さが問題視されています。CO2排出量を部門別でみると、運輸部門が日本国内の排出量の約20%を占めています(図1)。

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図1:CO2の排出量は日本全体に対して運輸部門が約20%も占める
(出典:環境省「2019年度温室効果ガス排出量」)

 これに対し、CO2排出量の削減率を部門別で比較すると、運輸部門は最も低い削減率で推移しています(図2)。

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図2:運輸部門は多くのCO2を排出している部門だが、削減率は全体の中で最も低い
(出典:全国地球温暖化防止活動推進センター「温室効果ガス排出の現状等」)

 この理由として得意先のニーズに合わせた「多頻度小ロット配送」が挙げられ、その結果、荷合わせがうまくいかず「積載率の低下」につながります。またECで起こりがちな「再配達の発生」といったことも要因として挙げられます。

 このように物流業界はCO2排出量が多い産業である一方で、排出削減が遅れているのが現状です。このため、環境に配慮した業務内容への見直しが求められています。

 では社会問題の観点ではどうでしょうか。物流業界においては想像しづらいことかもしれません。しかし、人権問題や差別なども大きな問題として捉えられています。記憶に新しいのはコロナ禍におけるドライバーの差別です。

 ドライバー自身もコロナ感染の恐怖と直面しながらも、医療機器や食料品など人々の生活に必要なものを届けています。それにもかかわらず、コロナ感染を恐れた消費者から差別のような対応をされたという話が話題となりました。

 物流は、経済を回していくために必要不可欠な社会インフラです。このことを社会に理解してもらうことは、業界差別をなくし、ひいては経済や物流を持続させるために必要なことです。

 ここまでは物流業界の実態とESGに関係する事例を挙げました。次からはESGを項目別に分けて、物流業界の実情を踏まえながら、取り組むべきことについてさらに詳しく解説していきます。

環境(E):取り組むべき「4つの対策」

 地球温暖化を防ぐためにはCO2排出量の抑制が必要となります。そのためにはEVトラックの導入や、物流センターへの太陽光パネル設置といった設備投資が1つの手段として挙げられます。しかしここでは新たな設備投資の取り組みだけではなく、日々の業務を見直すことで実行できる4つの環境対策について解説します。

・モーダルシフト
 モーダルシフトとは、トラック輸送から、環境負荷の小さい(CO2の排出量がトラックより少ない)鉄道や船舶を利用した輸送に切り替えることです。同じ荷物の量を同じ距離だけ運んだ場合、船舶に切り替えた時のCO2排出量はトラック輸送の6分の1、鉄道に切り替えた時は11分の1に抑えられます。運賃の面でも、鉄道や船舶を利用した方が廉価になるケースがあります。

 しかし、トラックより輸送サイズが大きいため輸送ロットを大口化する必要があります。また、トラックは基本全て陸送で輸送されますが、鉄道はレール+陸送、船舶の場合は海上輸送+陸送と、輸送ルートの切り替えが発生します。さらに予め決められた時刻表に沿って運行するため、すべて陸送で輸送するトラックと比較して納品日が長くなります。

 このようなことも踏まえ、発地と着地でコミュニケーションをとりながら、荷量や納品日を調整することが必要です。

・拠点配置や越境配送の排除
 本来の配送エリアではない地域に配送する「越境配送」が増えると、全体の輸送距離が長くなりCO2排出量にも影響します。越境配送が発生する理由としては、在庫管理や拠点配置が関係してきます。

 欠品により遠方の拠点からの配送が発生、または市場環境の変化により得意先の配置と拠点配置にミスマッチが生じ配送距離が長くなってしまうことが要因として考えられます。拠点は簡単に変えられるものではありませんが、得意先への販売動向を見ながら、必要に応じて配置を変える必要があります。

・ペーパーレス化
 物流業務において使用する、配車表、出庫指示書、納品書といった帳票類は紙を使用した運用が多く残っています。一定期間は保存し、その後は廃棄となる帳票類は大量に排出される廃棄物の1つでもあります。

 また、紙の場合は紛失のリスクがあり、紛失時の帳票の捜索といったひと手間も発生します。紙を使用せず、タブレット端末や音声・画像による指示で作業できるように、業務の運用自体を見直すことも必要です。ペーパーレス化を進めるには、設備投資が必要になり、また電気が止まった際の対応も検討しなければなりません。

【次ページ】環境面で取り組むべきもう1つの対策とは

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