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  • 2022/08/08 掲載

テレビCMは無駄だった? クーポンで“爆買い”させる絶好のタイミングとは

【連載】儲かる小売店の「つくりかた」

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消費者の購買意欲を湧き立たせるモバイル・マーケティングはどういったものなのだろうか。前回の寄稿ではディスカウントストア「トライアル」を例に挙げながら、店内回遊時にモバイル・マーケティングを仕掛ける、シンプルかつ切れ味の鋭い絶好のタイミングについて解説した。今回はもう1つのタイミングについて紹介したい。それが買い物に行く前に仕掛けるべきモバイル・マーケティングだ。ではどのような手法が効果的なのだろうか。そのキーワードは「買い物メモ」と「可視化」である。

執筆:中央大学 商学部 教授 寺本高

執筆:中央大学 商学部 教授 寺本高

1973年横浜市生まれ。慶應義塾大学商学部卒業、筑波大学大学院ビジネス科学研究科博士後期課程修了。博士(経営学)。流通経済研究所店頭研究開発室長、明星大学准教授、横浜国立大学准教授、教授を経て2022年4月より現職。主著に『小売視点のブランド・コミュニケーション』(千倉書房:日本商業学会賞奨励賞受賞図書)、『スーパーマーケットのブランド論』(千倉書房)などがある。

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買い物に行く前のタイミングで仕掛けるべきモバイル・マーケティングの方法とは
(Photo/Getty Images)

計画購買とは何か

 前回の寄稿でも述べたが、消費者が購入した商品には、あらかじめ買おうと予定していた商品と、そうでない商品がある。前者を計画購買と言い、後者を非計画購買と言う。後者については前回取り上げたが、今回は前者の計画購買に着目したい。


 計画購買には2種類あり、1つは「〇〇のビールを買おう」というように購入予定の商品の種類と具体的なブランドまで決まっている「具体的計画」がある。もう1つは「ビールを買おうとは思っているけど銘柄までは考えていない」というように、商品の種類までしか決まっていない「概略的計画」だ(注1)

 実際の買い物に占める計画購買の割合だが、1回の買い物で購入する点数が多いスーパーマーケットでは低い傾向にある。しかし、購入点数が比較的少ないコンビニエンスストアやドラッグストアでは計画購買の割合が高い傾向にある。

 前回でも述べた通り、特にスーパーマーケットでは非計画購買の割合が高いという実態がある。そのため多くの小売企業やそこに商品を供給するメーカーは販売促進と消費者の接点を店内と定め、店内を回遊する消費者が「思わず買ってしまう」、つまり非計画購買を促す店内プロモーションに依存してきた。

 しかし、こうした傾向は変わりつつある。

コロナ禍で利用者が増えた「買い物メモ」

 流通経済研究所が実施した「ショッパーマインド定点調査」の結果によると、買い物時に取り組んでいることとして、「事前に買う商品を決めて買い物リストをメモする」の該当率が2020年10月聴取時(回答者2515人)には24%であったのが、1年後の2021年10月(回答者2474人)には32%となり、8ポイントも上昇していることがわかった。つまり、コロナ禍を契機に、購入したい商品を事前にメモする傾向が強くなっていることが考えられる。

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コロナ禍で、購入したい商品を事前にメモする傾向が強くなっている
(Photo/Getty Images)

 消費者にモバイル・マーケティングを仕掛けるタイミングの1つとして、前回の寄稿では「店内回遊時」であることを述べたが、もう1つ重要となりそうなタイミングが「買い物メモを作成している時」である。消費者が「何かを買おう」と思っている、つまり「買い物モード」になっている時にこそモバイル・マーケティングはより効果を発揮できる。

 一方でその買い物モードを「可視化」できないと、企業としてはマーケティングを仕掛けることが難しい。しかし、かつては手書きだった「買い物メモ」は、今ではモバイル上で作成する人が増えてきている。

 つまり、モバイルの普及によって、買い物メモを作成しているタイミングが可視化できるようになってきたのである。この買い物メモの作成をモバイルで行っている消費者に向けて、マーケティングを仕掛けてみるのが良さそうではないだろうか。とはいえ具体的にどういった手法があるのだろうか。ここからは買い物メモ作成のタイミングの可視化と併せて事例を挙げながら解説していく。

【次ページ】CM・広告が“ムダ”だった理由と米スーパーの成功事例を解説

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次のページ以降では、買い物メモ作成時に有効なマーケティング手法について探るとともに、効果的な施策を進める米スーパーマーケットの事例について解説します

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