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  • 2022/05/27 掲載

スーパー「トライアル」の革新的なPR術、“非計画購買”を促す2つのポイント

【連載】儲かる小売店の「つくりかた」

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前回の寄稿では、モバイル・マーケティングは消費者が基本的に受け入れてくれやすい、シンプルかつ切れ味の鋭いタイミングを探り、そのタイミングに向けてプロモーションを仕掛けていくことが重要であることを指摘した。今回はこの点に留意した上で、日本の市場でも受け入れられやすいタイミングについて、ディスカウントストア「トライアル」が手掛ける最先端な実例を交えて紹介したい。そのキーワードは「非計画購買」である。

執筆:中央大学 商学部 教授 寺本高

執筆:中央大学 商学部 教授 寺本高

1973年横浜市生まれ。慶應義塾大学商学部卒業、筑波大学大学院ビジネス科学研究科博士後期課程修了。博士(経営学)。流通経済研究所店頭研究開発室長、明星大学准教授、横浜国立大学准教授、教授を経て2022年4月より現職。主著に『小売視点のブランド・コミュニケーション』(千倉書房:日本商業学会賞奨励賞受賞図書)、『スーパーマーケットのブランド論』(千倉書房)などがある。

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非計画購買を利用したトライアルの革新的なPR手法とは
(写真:picture alliance/アフロ)

購入商品の8割を占める「非計画購買」とは

 非計画購買とは、消費者が買物をする際にあらかじめ買おうと予定していなかった商品を購入することを指す。対して、あらかじめ買おうと予定していたものについては、計画購買と言う。

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売上アップには非計画購買を促すPRが必要となる
(Photo/Getty Images)

 筆者の前職であり、現在もさまざまな共同研究を展開させてもらっている流通経済研究所では、非計画購買の実態調査を40年以上定期的に行っている。この結果によると、スーパーマーケットにおける非計画購買率は70~80%になる(注1)


 つまり、消費者がスーパーマーケットで商品を5点購入したとすると、そのうち4点は予定していなかったものを買っているということになり、つい買いすぎてしまうという状況を生んでいる。このような実態から、スーパーマーケットをはじめとした小売業や、そこに商品を供給するメーカー・卸売業は、来店する消費者の「非計画購買」をより促すための施策を店内にちりばめることに力を注いでいる(注2)

「非計画購買」が起きる4つの理由

 非計画購買が起きる理由は、研究者の解釈によって色々な捉え方があるものの、店内で買物をしている時に直接的に発生する理由として、次の4点が挙げられる(注3)

  • 想起購買:店内で思い出したことが起点となって購買すること。たとえば、マヨネーズが特別陳列されているのを見て、「あっ、そういえばマヨネーズ切れそうだったな」と気づいて、このマヨネーズを購買するというような状況である。

  • 関連購買:ほかに購買した商品との関連性から必要だと考えて購買すること。たとえば、夕食用にカレールーを買った時についでに福神漬けを買ったり、パンを買った時についでにジャムを買ったりする状況である。

  • 条件購買:値引きや単品ポイントといった対象商品のプロモーション条件により、購買意欲が喚起されて購買すること。たとえば、閉店間際に入店したところ、生鮮食品が半額にまで割引になっているのを見て、「安い!」と思って買ったりするような状況である。

  • 衝動購買:商品や売り方の新奇性から購買意欲が喚起されて購買すること。たとえば、新商品や限定商品の訴求によって「楽しそう!」「面白そう!」と思って買ったり、シズル感のある演出によって「おいしそう!」と思って買ったりするような状況である。

 消費者は買い物をする中で、さまざまな刺激に遭遇し、上記のような理由で非計画購買をするわけである。そのため、「消費者は非計画購買をたくさんするので、とにかく店内のあらゆる場所に非計画購買を促す仕掛け(プロモーション)をしよう」というのが今までの考え方であった。

 しかし、消費者には店内を回遊している時に、非計画購買をしやすい状況とそうでない状況という「タイミング」がある。そのタイミングを捉えて非計画購買を促す画期的な研究をここから紹介したい。

【次ページ】トライアルが実践、「非計画購買」を利用したPRは“2つのポイント”が革新的

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