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  • 2022/10/21 掲載

茨城最強カフェ「サザコーヒー」の独自戦略、世界のスタバに負けない3つのこだわり

連載:大手企業に勝つ地方企業

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人口約15万人の茨城県ひたちなか市──。カフェ業界でひときわ存在感を示す会社の本店がある。1969年に開業した「サザコーヒー」だ。国内で最も店舗数が多い「スターバックス コーヒー」(1727店=2022年6月現在)や、2位の「ドトールコーヒーショップ」(1067店、同年8月現在)に比べると、サザの店舗数はわずか15店。実にスタバの1/100の規模だが、それでも茨城県内における集客では随一である。では、なぜ地方の個人系チェーン店が全国的な知名度を持つ大企業と伍しているのか。鈴木 太郎社長に話を聞いた。

聞き手・執筆:経済ジャーナリスト・経営コンサルタント 高井 尚之、写真:吉成 大輔

聞き手・執筆:経済ジャーナリスト・経営コンサルタント 高井 尚之、写真:吉成 大輔

経済ジャーナリスト・経営コンサルタント 高井 尚之
学生時代から在京スポーツ紙に連載を始める。卒業後、日本実業出版社の編集者、花王情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画・執筆・講演多数。近著に『20年続く人気カフェづくりの本』(プレジデント社)などがある。

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サザコーヒー 代表取締役社長 鈴木 太郎 氏
東京農業大学卒業後、サザコーヒー入社。2020年に同社代表取締役社長に就任。2020年より筑波大学大学院農産食品加工研究室に在籍

創業50年、香りにこだわり「コーヒーの価値」を訴求

「この夏、コーヒー生産地を訪れました。コロナ前は年間150~180日も海外に滞在していたのですが、3年ぶりの渡航です。コロンビアの自社農園や現地の様子を視察し、エチオピアのコーヒーオークションでは、今年いちばんおいしいコーヒー豆を落札できました」

 インタビュー取材で訪れた筆者に対して、鈴木太郎社長はこう切り出して胸を張る。機動力を生かし、経営者が率先して生産地に直接買い付けを行うのが同社の特徴だ。

 太郎氏は1990年代後半、父の鈴木誉志男会長が購入した南米コロンビアの「サザコーヒー農園」に派遣され、試行錯誤の末、現地の運営を軌道に乗せた。2005年には東京に進出。JR品川駅内に店を出し来店客を大きく増やす。JR大宮駅(埼玉県)構内にも出店した。

 今年3月24日には、東京・JR新橋駅構内の「エキュートエディション新橋」に新店をオープンさせてメディア取材が殺到するなど、近年の同社躍進の立役者でもある。

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茨城を軸に着々とファンを増やし続けている同社。どのような戦略とこだわりがあるのか

 だが、社長就任は2020年6月19日。コロナ初年で世の中がピリピリしており、外食への逆風が吹き荒れる中だった。自問自答の末、就任にあたり「コーヒーを通し、高い価値を提供する」を掲げる。その思いを発展させたのが、次の3点だ。

  1. (1)「しあわせは香りから」
  2. (2)「しあわせの共有」
  3. (3)「コーヒーの香りに永遠の命を吹き込む」

 具体的な活動で説明してもらった。

「『しあわせは香りから』は、たとえば焙煎(ばいせん)や加工に工夫して、コーヒー本来が持つ香りをお客さんに届けるものです。『うまい×うまい=とてもうまい』になると思っています」


世界最高級豆「ゲイシャ」を買い続け、ワンコインで提供

 (2)の「しあわせの共有」には、さまざまな意味を込めた。

 「パナマゲイシャ」(中米パナマ産のゲイシャ品種)という最も評価が高いコーヒー豆がある。その価値を広めるのがスペイン語も堪能で、一般社団法人・日本スペシャルティコーヒー協会(SCAJ)理事兼コーヒーブリュワーズ(競技会担当)委員長も務める太郎氏だ。

「パナマゲイシャは2004年に初めて発見された、コーヒー豆の歴史の中ではとても新しい品種です。名前の由来は、原木が栽培されていたエチオピアのゲイシャ村から来ています。

 ぼくは2005年に初めてこの豆に出合い、恋に落ちました。発見したエスメラルダ農園の経営者一家と親交を持ち、2009年からはコーヒーオークションで落札し続けています」

 2021年9月に行われたパナマ産ゲイシャのオークションで、同氏は100ポンド(約46キログラム)の豆を約2,833万円(当時のレート換算)という史上最高値で落札した。

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世界一のコーヒー「パナマゲイシャ」のほか、グアテマラ、エチオピア、コロンビアなどさまざまな国のコーヒーを提供

 輸送費、検疫費、焙煎(ばいせん)費や利益を勘案すると、コーヒー1杯あたり3万6,000円で出さないと採算が合わない。これほど高額なコーヒー豆を「しあわせの共有」として提供する。

 同年11月12日と13日に各店舗で開催された「第3回パナマゲイシャ まつり」では、焙煎(ばいせん)したばかりの同じ豆を1/4分量のミニカップ(9,000円相当)にし、採算度外視の「500円」で提供。都内の店では行列ができ、テレビの取材も入るほど人気を呼んだ。

【次ページ】サザコーヒーの工場内部を公開、「コーヒー賞味期限を3年」に延ばせた理由

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