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- 2022/10/26 掲載
需要予測AIは「ノーコード」で民主化する? 圧倒的な成果を生み出す「6つの要素」
【連載】現役サプライチェイナーが読み解く経済ニュース
需要予測AIを構築する「2つの方法」
事業会社が需要予測AIを構築・導入するためには、大きく2つの方法があります(図1)。まず1つが、IT企業に依頼し、自社のデータを渡して需要予測モデルを構築してもらい、その精度を評価する、といった流れで需要予測AIを構築する方法です。多くの事業会社にはデータサイエンティストはいません。自前でプログラムを書いて需要予測AIを構築するのは珍しい例と言えるため、一般的な方法と言えます。
この方法のメリットは、自社の商材に特化した予測モデルを構築してもらえることです。コストについても、パッケージを導入するよりも安くなる傾向があり、気軽に試しやすいと言えます。
一方で、予測精度はデータサイエンティストの経験や腕によって正確さが変わってしまうところがあります。さらに需要に影響する要素を加えたり、精度検証の中でアルゴリズムをブラッシュアップしたりなど、試行錯誤するには、常にデータサイエンティストの協力が必要になってしまいます。
そこで少し前から活用が増えてきているのが、もう1つの方法であるノーコードのAIツールです。
ノーコード活用のメリット・デメリット
ノーコードによる需要予測は日経新聞の記事でも掲載されるなど、プログラミングが不要で、より手軽な方法として注目を集めています。記事で取り上げられているAI inside以外にも、DataRobot(筆者が化粧品メーカー在籍時に新製品の需要予測で協働)やdotData(筆者が現在所属するNECからカーブアウトした企業)など、すでにノーコードのAIサービスをグローバルで展開している企業もあります。DataRobotやdotDataは、下記のような予測分析で、すでに大きな効果を創出したことが公表されています。
DataRobot
- 化粧品メーカー資生堂における新製品発売前の需要予測精度向上による過剰在庫と販売機会損失の削減
- インターネット広告のセプテーニにおける広告効果予測モデルの自動構築による業務スピードの向上とコスト削減
dotData
- 三井住友銀行におけるターゲティング精度向上による成約率の向上
- ADKマーケティング・ソリューションズにおける視聴率予測精度の向上による広告枠買い付け戦略の最適化
これらのサービスは基本的に、クラウドAIツールを使うためのライセンス契約を結びます。そしてデータは自社で用意し、それをアップロードすることで、予測モデルを自動で構築できるというものです。事業会社はプログラムを書かなくて良いので、一見、トライするハードルは低く感じられます。
しかし、以下3点のような業務については意外と簡単ではありません。
- 自社が扱う商材の需要に関する因果関係を整理する
- 需要の原因要素をデータでそろえる
- 予測結果を解釈し、学習させるデータを更新する
特に自社が扱う商材、顧客、市場については当然、その事業会社の社員が一番詳しいので、需要の因果関係の想定はコンサルタントやSIerに頼らず、自分たちで改革をリードするという意識が重要になります。
【次ページ】需要予測の精度を高める「6つの要素」
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