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  • 2023/03/20 掲載

気付いたらリピーターに…お店でもらうスタンプカードに「つい頑張っちゃう」納得理由

【連載】儲かる小売店の「つくりかた」

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小売店や飲食店などでよく見かける、「スタンプ10個たまったら〇〇1つプレゼント」というスタンプカード。誰でも、「ついスタンプ集めに頑張ってしまい、気付いたらリピーターに」という経験をしたことがあるのではないだろうか。このスタンプ収集プロモーションにはあらゆる工夫が施されており、それによって店舗は売上アップにつなげている。本稿では、このようなプロモーションに隠された、消費者が「つい頑張ってしまう」秘密をひも解いていく。普段利用しているスタンプカードなどを思い浮かべながら、考えてみてほしい。
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スタンプカードなどを活用したプロモーションの秘密とは
(Photo/Shutterstock.com)

つい頑張ってしまう「消費者行動の理論」

 スタンプカードのように、消費者がプレゼント対象の商品やサービスといった報酬を獲得するという「ゴール」を目指して努力することを、消費者行動の理論では「目標指向行動(Goal-directed Behavior)」と言われている。多くの企業は、消費者が持つ目標指向行動を生かしたさまざまなプロモーションを行っている。

 典型例は、航空会社が提供しているプレミアムメンバーサービスだろう。航空サービスを利用する顧客は、搭乗回数や搭乗距離などの一定の条件を達成すると、専用ラウンジの利用、優先搭乗、預けた荷物の優先受け取りといった優遇サービスを受けることができる。「マイル修行」のような言葉が流行っているように、優遇サービスの獲得というゴールを目指して必死になっている消費者もいるわけである。

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マイル修行のように、優遇サービスなどの報酬獲得に向けて消費者が必死になってしまうカラクリとは
(Photo:T.B. photo/Shutterstock.com)

 企業が消費者に対して目標指向行動を促す基本的なメリットは、消費者のリピート購買を得られることである。スタンプ収集の場合であれば、消費者はスタンプを貯めて報酬を獲得するために定期的に対象商品・サービスを利用する。

 つまり、1回や2回ではなく、目標を達成するために何回も買ってくれるわけだ。

 また消費者の目標指向行動には、プロセスの1つを示す「目標勾配仮説」がある。これは、目標に近づくにつれてより頑張るという話であり、マラソンに例えると、「マラソンは非常につらいけど、ゴールに近づいているのがわかると力を振り絞って完走を目指す」ということである。

 目標勾配仮説はかなり昔から唱えられている。しかし、「コーヒー10杯購入で1杯無料」のスタンプ収集プロモーションを行った際、消費者は報酬条件に近づくにつれてコーヒーの購入回数が増えることが、調査によってわかった(注1)。これを契機に、スタンプ収集などのプロモーション方法がロイヤルカスタマーを育む「ロイヤルティ・マーケティング」に応用されてきた。

報酬獲得まで続かない…企業が留意すべき「2つの観点」

 一方、報酬条件や報酬内容の設定を間違えれば、消費者による次の購買につなげることはできない。ここでは、報酬条件の難易度と報酬の内容という2つの観点から説明する。

 まず、報酬条件の難易度によって消費者の行動が変化することが、研究を通して証明されている(注2)。難しい目標を達成した場合、消費者はその目標で得られた報酬を維持するためにさらに頑張るが、簡単な目標の場合には達成してもその次はあまり頑張らない。

 たとえば、先に述べた航空会社のプレミアムメンバーサービスでは、難易度の高い最上級会員になった顧客はそれを維持すべく航空利用を継続する。しかし、簡単に目標を達成して報酬がもらえるプロモーションでは、次のプロモーション機会で行動に至らないことが多いのである。

 もう1つの観点である報酬内容では、目標を複数段階で設定した時にその報酬が魅力的でないと、高い目標を目指さずに簡単な目標を達成するだけで済まされてしまう可能性がある。たとえば「10個買えば1個、15個買えば2個プレゼント」などのプロモーションで、報酬があまり魅力的でないと、消費者は頑張って10個買おうとするが、15個買うまでには至らないのだ。

 このような消費者の目標指向行動において、企業はその行動の「やる気」を注入する、つまりモチベーションを促していくことが重要だ。そのモチベーションを促す施策の理論を2つ紹介したい。 【次ページ】消費者のやる気を上げる「2つの理論」

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