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- 2022/11/11 掲載
【研究で判明】カルディの試飲コーヒーに隠された「おもてなし」だけじゃない凄い効果
【連載】儲かる小売店の「つくりかた」
日本人らしさを生かした「実演販売の効果」
スーパーマーケットなど小売店の店頭や店内において、メーカーの販売員が商品を調理して見せた上で、その商品を買い物客に試食してもらう風景をよく目にするだろう。このプロモーション活動を「デモンストレーション販売」と言う(注)。業界では略して「デモ販」と呼ばれることが多く、一般的には実演販売と言われる。最近では、コロナ禍により店内での飲食行動が制限されていることから、デモンストレーション販売の実施が控えられている。しかし、昔から行われている伝統的なプロモーション方法である。
デモンストレーション販売は、買い物客1人ひとりに対して商品の魅力を直接訴求できるため、売上効果を大きく期待できる。買い物客は調理した商品の見た目や匂いからシズル感がかき立てられ、それが購買につながるわけだが、返報の意識が働いて買ってしまうこともある。返報の意識とは、相手から厚意を受けるとその人に対して何らかのお返しをしなくてはならない、というものである。
たとえば、コンビニエンスストアでトイレを使ったら、「トイレを使わせてもらったので何か1品買おう」と思ってしまうような状態である。このような、いかにも日本人らしい意識もデモンストレーション販売の効果に寄与している。
実演販売で利益を出すのはハードルが高い?
先に述べたように、試食などのデモンストレーション販売は売上への効果がある。しかし、コストもかなりかかる。実際に多く占めるのは、デモンストレーションを実施する販売員(業界ではマネキンと呼ばれる)の人件費だ。単純に考えて、販売員を1人確保するコストが2万円だとしたら、最低限、その金額以上の粗利益を獲得しなければならない。デモンストレーション販売には、買い物客がその場で購入することへの効果だけでなく、たとえば新製品を知ってもらう(認知)ことや、その後のリピート購入への効果なども期待されている。とはいえ、実施した時点で相当な数量を買ってもらわないことには、元が取れない方法であると言えよう。
また、デモンストレーション販売は特定のブランド商品を対象に行われることが多い。買い物客がその対象商品を購入したとはいえ、それにつられて店内にあるほかの商品を買うという、いわゆる関連購買への効果は定かではない。
店頭や店内でデモンストレーションのためのスペースを貸す小売業者としては、買い物客が対象商品を購入するだけでなく、関連購買を通して「買い物客1人の1回当たりの支出額」の向上を期待したいはずである。
【次ページ】研究事例:買い物前のコーヒーがもたらす“スゴイ効果“
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