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  • 2023/09/05 掲載

地方局の行末を決めるのは「この要素」、再編・統廃合が困難なワケ

稲田豊史のコンテンツビジネス疑問氷解

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地域メディアとしての存在意義が問われているローカル局(地方局)。テレビ業界全体として広告収入が落ち込む中、前回・前々回の記事ではローカル局制作の番組がTVerではなかなか見られないこと、放送外収入確保の難しさなどが浮き彫りになった。一方で、ローカル局にしかできない報道や地域で確立された信頼性、ブランディングは大きな強みでもある。全3回の最終回である今回は、ローカル局に求められている役割や統廃合の現実感について、関係者へのヒアリングをもとに考える。
執筆:編集者/ライター 稲田豊史

執筆:編集者/ライター 稲田豊史

キネマ旬報社でDVD業界誌編集長、書籍編集者を経て2013年よりフリーランス。 著書は『セーラームーン世代の社会論』(すばる舎リンケージ)、『ドラがたり のび太系男子と藤子・F・不二雄の時代』(PLANETS)、『ぼくたちの離婚』(角川新書)、『「こち亀」社会論 超一級の文化史料を読み解く』。おもな編集書籍は『押井言論 2012-2015』(押井守・著/サイゾー)、『ヤンキーマンガガイドブック』(DU BOOKS)、『団地団 ~ベランダから見渡す映画論~』(大山顕、佐藤大、速水健朗・著/キネマ旬報社)。「サイゾー」「ビジネス+IT」「SPA!」「女子SPA!」などで執筆中。 (詳細

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ローカル局の生き残り
(出典:LivePark)

楽天市場とローカル局が組む「のぞいてニッポン」

 前回記事前々回記事に登場した安藤聖泰氏が特別顧問・ファウンダーを務めるLiveParkは今年7月、楽天グループとコンソーシアム「のぞいてニッポン運営委員会」を設立。楽天市場内に「のぞいてニッポン」というサイトを開設した。

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のぞいてニッポン
(出典:LivePark 報道発表

 「のぞいてニッポン」には、参画する13のローカル局が制作した番組の切り出し動画が多数置かれており、その地元ネタを入り口に「楽天市場」による通販、「楽天ふるさと納税」「楽天トラベル」といったサービスが利用されることが期待されている。プレスリリースには「これまで地域内の放送エリアに限定されていたテレビ番組を全国発信し、地域経済の成長に貢献していきたい」とある。

 とはいえ疑問もある。ローカル局の番組が全国の人の目に触れる、それはいい。しかしその先、ローカル局側にはどんな経済的メリットがあるのだろうか。実際、記者会見の席では全国紙の記者から同様の質問が飛んだ。

 楽天市場側のメリットは明確だ。動画コンテンツ視聴後のEコマース誘導、つまり自社商流での取引増加である。ではローカル局側は? 中部地方の系列局局員・D氏は「のぞいてニッポン」についてこんな感想を抱いた。

「ローカル局からすると、どうやってWeb上やデジタルの世界で自分たちを知ってもらうか、接点を作るかは大きな課題なので、これはこれで1つのトライだと思います。ただ、ローカル局の番組動画をネットに出したから見てもらえるかどうかで言うと、TVerの例もあるとおり全然ですね。いちユーザーとしても、この動画を見るかと言われると見ない。ちょっとユーザーの視聴動機が想像できません。ローカルの起爆剤になるかというと、見えない部分が多い」(中部地方の系列局局員・D氏)

 関西の独立局幹部・B氏は、「番組をプラットフォームに配信する際の一般論として」と前置きした上で、以下のように述べた。

「放送済み番組の切り出しだからコストはかかっていないと思いきや、エンコードする作業や配信用の権利処理作業が必ずついてくる。人員と予算をかつかつでやっている弊社みたいな局だと、それを社内でできるかといったらできない。エンコードを外注する必要があるので、そのぶんの費用を回収できるかというと……」(関西の独立局幹部・B氏)

 他の意見も総合すると、プロジェクトの意義は理解するものの、ローカル局側からみた費用対効果については「見えない」という感じだ(なお、上記2局は本プロジェクトに参画していない)。正直なところ、筆者も記者会見では似たような印象を抱いた。

全国を相手に番組を作らなければ磨かれない

 当のLivePark安藤氏にローカル局側のメリットについて聞くと、「最初のうちは、とんでもなくダイレクトな収益というものはないが、パナー広告の掲載料などをレベニューできるような形にはなっていく」との答え。ただ、同氏は単純な収益性とはやや違ったものを見ている。

「このプロジェクトの前に、ローカル局のアナウンサーが外ロケをして、誰が一番聞き上手かを争う『聞き上手グランプリ』を楽天さんと開催したんです。ただ、言い方は失礼ですが、上手い局もあれば、あまりお上手じゃないところもあるんですよ、撮り方が。たとえば、アナウンサーが聞き上手かどうかを判定するんだから、マイクを持っているアナウンサーも映さなきゃいけないのに、料理や取材対象ばかり映していたりするケースもあったんです。たしかに日頃の情報番組のロケ等で撮り慣れた手法とは違うので仕方がないものの、今後配信番組を通じて幅広い目的の番組づくりが増えれば、こういうノウハウやも増えていくんじゃないかと。参画してくれたある局の方は、自分たちの番組が見られる場をとにかく増やしたいとおっしゃっていました。見られることで反応があり、それが制作にフィードバックされるからだと」(安藤氏)

 場数を踏むことで、番組制作能力が磨かれていく。

「東京のキー局で番組を作っている人間が、最初から優秀だったわけじゃないんです。彼らは幅広いジャンルの番組を経験し、全国を相手に番組を作り、視聴率競争に揉まれ、SNSから叩かれまくり、ネット上の流行り動画とも戦いながら、その中で磨かれてきた。幅広い実戦の場がたくさんあったということなんだと思っています」(安藤氏)

 「東京のキー局」である日テレに籍を置いている安藤氏だからこそ、この言葉には大きな説得力がある。

「記者会見で流れた動画、どことなく垢抜けてなかったですよね。その垢抜けなさも“味”なので、『のぞいてニッポン』の編集部がたまにいじりながら紹介することもあるんです。『ちょっといじっちゃうかもしれませんけど、皆さん、いいでしょうか』って」(安藤)

 垢抜けなさも“味”として材料にしつつ、人目に晒されることで制作スキルが磨かれる。遠回りではあるが、これもローカル局あるいはローカル局のテレビマンがサバイブするための、ある種の鍛錬なのかもしれない。 【次ページ】ローカル局の行末を決める「全会一致」の要素とは?

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