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- 2024/05/07 掲載
行政のデジタル化は「早くもオワコン」か、次代に求められる3つの柱とは
「デジタル・ガバメント」は終わったと言えるワケ
ITを活用することで行政サービスの利便性をより高めるとともに、業務効率化を実現する取り組みであるデジタル・ガバメント。国内外の政府がデジタル・ガバメントの推進に取り組む現在だが、そんな現状について「デジタル技術を活用したサービス提供のみでは、むしろ本質を見失いかねない」と警鐘を鳴らすのが、ガートナー プリンシパル アナリストのアペクシャ・カウシク氏だ。
カウシク氏によると、多くの行政機関は長い年月をかけてデジタル化の投資を進めてきたが、デジタル化に着手し始めた当初はそうした取り組みへの期待値は高くなかったという。しかしその後、デジタル移行が進むにつれて、市民の体験をより良くすることに注力されるようになった。
そして現在は、日々の生活をどれくらい良くするサービスを提供できるかにデジタル化の主軸が移り、それをすべて実現する「プラスアルファ」の時代になっている。これはある意味で、従来のデジタル・ガバメントは終焉(しゅうえん)を迎えたことを意味するとカウシク氏は指摘する。
行政機関におけるデジタル化の成熟は、新型コロナウイルスの流行も大きい。
カウシク氏によると、新型コロナウイルスのパンデミック以前は、政府の80%がデジタル技術の導入自体を目的とする初期の成熟度にすぎなかったが、その後、政府におけるデジタル化の水準が高まり、現在は、イノベーションを実現して、データを活用した市民サービスを市民から求められる前に提供する段階にあるという。
ポストデジタル・ガバメントの「3本柱」とは
このようなデジタル化を取り巻く変化を経て、現在は「ポストデジタル・ガバメント」の時代が到来しているとの見解をカウシク氏は示す。ポストデジタル・ガバメントにおいて、重要となるのが、下記の3点だ。
- 共感型サービス設計
- インサイト主導の意思決定
- オーケストレーションされたエコシステムとプラットフォーム
それぞれ順に見ていこう。
1つ目の「共感型サービス設計」では、相手の感情を推論して理解する「認知的共感」という観点が重要となる。
認知的共感自体は決して新しい概念ではなく、市民の期待や感情がどのように生まれるかをマッピングする、デジタル・イベント・マッピングやVoCといった手法も以前から存在していた。しかし、「これらの手法を上手に活用できていたわけではなく、完全に利用するまではまだ道のりは長いです」とカウシク氏は指摘する。
共感型サービス設計においては、ステークホルダーの視点を取り入れながら、エビデンスに基づくアプローチで重要な事項の優先順位を設定してサービスを設計することが大切になる。すべてのステークホルダーのニーズを中心に置き、解決すべき問題に焦点を当てて絞り込むとともに、ステークホルダーの視点を通じて提案された解決策をテストするというアプローチが理想的だ。 【次ページ】なぜ“データだけ”では「不十分」なのか
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