• 2025/08/27 掲載

「品切れは最大の裏切り行為」…ユニクロが絶対に在庫を切らさないワケ(3/3)

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「儲ける=信者」というユニクロ流の発想、背景には

 私が、ニューヨーク、パリ、シンガポール、上海はもとより、バングラデシュ、ベトナム、トルコなどの世界中を行脚した「経営者になるためのノート」の血肉化セッションの際に、「儲ける」という漢字は「信」と「者」に分解できるという話をよくしました(本当の語源は違うらしいですが)。儲ける=信者。ですから、真の利益とはユニクロのファンを増やすことなのです。そのためには「欲しいと思った商品が手に入る」という期待を裏切らないことが必要だと考えているのです。

 「儲ける」を「信者」と分解するという解釈は、文字通りの語源解釈というよりも、ビジネスの本質を表現したユニクロ流の発想です。その背景には「真の儲けとは、単なる一時的な金銭的利益ではなく、企業やブランドを信じて支持してくれる顧客(信者)を増やすことだ」という深い洞察があります。一時的な売上を追求するのではなく、長期的な顧客との関係構築こそが持続的な成長の基盤になるという発想です。

 実際、在庫切れによる販売機会の損失は、目に見えない大きなコストとなります。在庫過多によるセール販売のマイナスは目に見えますが、「欲しかったけど買えなかった」というマイナスは数字には表れません。しかし、そうした顧客の失望は長期的なブランド価値を損なう可能性があります。ユニクロはそうしたリスクを回避するために、緻密な在庫管理を徹底しているのです。

どの地域でも注文翌日には商品が届く仕組みの正体

 一方で、ユニクロといえど、すべての商品で常に全サイズ・全カラーが揃っているわけではありません。特に人気商品は一時的に品切れになることもあります。ユニクロはそうした状況を最小限に抑えるために、AIによる需要予測、店舗スタッフによる調整、そしてRFIDタグによる在庫の可視化といった多層的なアプローチを採用しています。

 また、近年ではオムニチャネル戦略も品切れ対策として重要な役割を果たしています。オムニチャネルとは、実店舗やオンラインストア、モバイルアプリなど、あらゆる販売チャネルを統合し、シームレスな顧客体験を提供する戦略です。顧客はどのチャネルを利用しても一貫した体験ができ、チャネル間の移動もスムーズに行えます。

 ユニクロでは実店舗での在庫がなくても、その場でオンラインでの注文が可能な「ストアフロントEC」の仕組みや、オンラインで注文した商品を近隣の店舗で受け取れる「店舗受取りサービス」など、実店舗とオンラインの垣根を越えた顧客体験の提供にも力を入れています。これにより、「その店舗に在庫がない」という状況でも、顧客が欲しい商品を手に入れる方法を提供できるようになっています。

画像
ユニクロの戦略』をクリックすると購入ページに移動します
 こうした取り組みの一環として、2020年には有明に続く国内2拠点目となる西日本EC倉庫を大阪府茨木市に設立しました。ユニクロにとってEC倉庫は単なる保管場所ではなく、デジタル時代の「無人店舗」としての役割を持っています。物理的な店舗が地域の顧客にサービスを提供するように、EC倉庫もその地域のオンライン顧客に最適なサービスを提供するための拠点として機能しているのです。

 「倉庫=店舗」という考えのもと、店舗と同じように(EC上の)販売計画を立て、有明の倉庫などと連携しながら在庫を調整しています。

 これによって、地域ごとの売れ行きのムラに対応できるようになり、配送日数の短縮や出荷残の最小化といった効果が出ています。地域特性を考慮した在庫配置や配送ルートの最適化により、顧客が欲しい商品を欲しいタイミングで届けることを目指しています。

 そのため、どの地域においても、ECサイトで注文を受けた翌日には商品を届けられるようになっています。

※本記事は『ユニクロの戦略』を再構成したものです。

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