• 2025/08/27 掲載

AI進化でオフィス系「新卒」の50%が消失、若者は「もう不要」なのか(2/2)

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学歴より実力の時代へ

 人材市場におけるAIの影響が拡大し、従来の学位が持つ価値が薄れる中、Z世代は生き残りをかけてスキルベースの資格取得と生涯学習に舵を切っている。AI利用が前提となる人材市場では、卒業証書の肩書きよりも「何ができるか」がさらに重要になっているためだ。

 この変化は雇用主側からも明確に発信されている。2024年初頭時点で、4年制大学の学位を要件として挙げていない求人の割合は2019年の49%から52%に増加、代わりに、特定のスキル、認定資格、実務経験を重視するとの要件が増加した。特にテックやホワイトカラー産業では、大学外でのコーディングブートキャンプ、オンラインコース、専門資格での習得可能なスキルが評価される傾向が強まっている。

 こうした動きを受け、「デジタルバッジ」と呼ばれる代替資格が急増している。グーグルのデータ分析プロフェッショナル認定から、プロジェクトマネジメント、サイバーセキュリティ、生成AIなど多岐にわたる。マイクロ資格や短期コースは、かつて大学卒業が必須だったキャリアへの新たな入り口となりつつある。

 重要なのは、雇用主がこれらの代替資格を積極的に評価していることだ。2025年初頭に発表された米国、欧州、アジアの1000人以上の採用担当者を対象とした調査では、96%の雇用主がマイクロ資格は、採用プロセスで優位になると回答。85%は関連する認定資格やバッジを持つ応募者を、持たない者より採用する可能性が高いと述べている。

 この前向きな評価は報酬にも反映されている。マイクロ資格を持つ候補者により高い初任給を提示する雇用主の割合は90%に達する。また過去1年間で、調査対象企業の87%がマイクロ資格を履歴書に記載した従業員を少なくとも1人は採用している事実も判明した。IBMやグーグル、金融業界の多くの企業が学位要件を緩和または撤廃し、評価試験や認定資格に焦点を当て始めている。

 Z世代はこの新しいスキル重視の潮流に積極的に適応中だ。Z世代労働者の10人中7人が少なくとも週に1回は新しいスキルを習得しており、67%が勤務時間外に自主的に学習を行っているという。コーディングブートキャンプの卒業生の約3分の1が、プログラム修了後1~3カ月以内に就職し、大半が6カ月以内に関連職を見つけている。

労働環境の変化が「精神面に深刻な影響」

 AI時代の労働市場の激変がZ世代の精神面に深刻な影響を及ぼしている事実も見過ごせない。キャリアのスタートは常にストレスを伴うものだが、この世代は経済的不確実性、激しい競争、そして自動化への不安という複雑な要因に直面しており、ストレスレベルは、これまでの世代を上回るものになっている。

 調査によると、Z世代労働者のうち自身のメンタルヘルスを良好と評価しているのは約半数にとどまる。また、約40%が「常に」または「ほとんどの時間」不安やストレスを感じており、その多くが仕事に関連したものだと回答している。

 2025年のMoodleによるレポートでも衝撃的な実態が明らかになった。米国の全従業員の66%が何らかのレベルの燃え尽き症候群を経験している中、18~24歳の労働者ではこの割合が81%に、また25~34歳では83%に跳ね上がることが判明したのだ。一方、55歳以上の労働者では49%と、年齢層が高いほど燃え尽き症候群の比率は低くなる傾向が観察された。

 燃え尽き症候群の主な原因として、過重労働(24%が与えられた時間内に終わらない仕事量にストレスを感じている)、経済不安(20%が不況と不確実性が職場での幸福感を損なっていると報告)、人手不足(19%が組織の人員不足により追加業務を引き受けることにプレッシャーを感じている)が挙げられる。

 若い世代においては、自身のキャリアパスの長期的な存続可能性に不安を抱く割合も高い。Z世代の約3分の2は、自動化により多くの仕事が数年以内に消滅することを懸念。また、自分の役割が数年後も存在するのか、という不安を抱く割合も多いとされる。LinkedInの労働力信頼指数では、全世代の中で最も労働市場に悲観的なのはZ世代だった。

 企業側の対応は不均一だ。最近の大卒者の92%が職場でメンタルウェルネスについて話し合えることを望んでいる一方、実際にマネージャーとメンタルヘルスについて話すことに抵抗を感じないZ世代労働者は56%と約半分にとどまる。さらに、マネージャーが支援的で包括的な職場文化を育んでいると感じているZ世代は22%に過ぎず、それがマネージャーの責任だと考える割合(その2倍)との間に大きなギャップが存在することも明らかになった。

日本でもいずれ訪れる「大変化」

 ここ10年の日本の新卒採用は、少子化で採用充足が難化し“売り手市場”が常態化、早期・長期化(内定前の配属確約や内定後フォロー強化など)した。その結果、通年・ジョブ型の併用が進んだ。しかし、生成AIの浸透により、こうした「若者・新卒偏重」の採用慣行は大きく変わる可能性がある。

 これまで日本企業は新卒一括採用を軸に、ポテンシャルを重視して若者を大量に採用し、社内教育で戦力化してきた。しかし、生成AIが定型業務や情報整理、初期分析を担うようになると、経験や専門知識を持つ人材の生産性が大幅に高まり、年齢に依存しない即戦力の採用がより合理的になる。

 また、AIを活用したスキル評価や適性分析が普及すれば、「年齢=能力」という従来の暗黙の前提は揺らぎ、多様な世代から必要な人材を柔軟に確保する動きが強まるだろう。

 つまり、新卒採用の比重は縮小し、中途やプロジェクト単位の登用など“通年・多様型採用”への転換が一層加速すると考えられる。

 AI時代の就職市場は、確かに厳しい現実を突きつけている。しかし、この世代がデジタルネイティブとして培ってきた適応力と、新しい学び方への柔軟性は、変化の時代を生き抜く重要な資産となるはずだ。

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