• 2025/09/16 掲載

「これで終わったらダメ」修羅場のガバクラ移行、次の「ガバメントAI」で生きる教訓は

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前編では、ガバメントクラウド移行に直面する自治体の現場が抱える混乱や負荷の実態、そして制度設計の課題を掘り下げた。後編となる今回は、そこから一歩踏み込み、移行後のコスト最適化や人材育成の現実、自治体同士の連携、さらに将来を見据えた生成AI基盤への展望など、「次につなげるための視点」に焦点を当て、中島淳之介氏の見解を聞いた。
企画・聞き手・構成:ビジネス+IT編集部   執筆:行政・ITライター 小池 晃臣

行政・ITライター 小池 晃臣

1993年早稲田大学第一文学部卒業後、ぎょうせい入社。地方行政をテーマとした月刊誌の編集者として、IT政策や産業振興、防災、技術開発、まちおこし、医療/福祉などのテーマを中心に携わる。2001年に日本能率協会マネジメントセンター入社。国際経済や生産技術、人材育成、電子政府・自治体などをテーマとした書籍やムックを企画・編集。2004年、IDG Japan入社。月刊「CIO Magazine」の編集者として、企業の経営とITとの連携を主眼に活動。リスクマネジメント、コンプライアンス、セキュリティ、クラウドコンピューティング等をテーマに、紙媒体とWeb、イベントを複合した企画を数多く展開。2007年より同誌副編集長。2010年8月、タマク設立、代表取締役に就任。エンタープライズIT、地方行政、企業経営、流通業、医療などを中心フィールドに、出版媒体やインターネット媒体等での執筆/編集/企画を行っている。

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nice2have 代表
中島淳之介氏
ヴイエムウェアにて、15年に渡り公共事業全般の技術取りまとめ(中央省庁・独立行政法人・自治体など)を行い、現在は退職し、nice2haveの代表として行政機関および関連事業者に向けた支援活動を継続している。2020年頃からガバメントクラウドへの考察を開始するとともに、関係する自治体およびベンダー・地場業者とのコミュニケーションを継続する地方公共団体の経営・財務マネジメント強化事業のアドバイザーとして2024年から活動し、多くの自治体および関連事業者の支援をさまざまな面から行っている

移行完了の定義は?迫る期限に揺れる現場、追いつかない議論

 前編でも触れたように、ガバメントクラウド(以下、ガバクラ)への移行に直面する自治体現場では、多くの課題が未解決のまま積み残されている。中でも重くのしかかるのが、「2026年3月までに全自治体での移行完了」という制度上の期限である。

 中島氏は「何をもって移行完了と見なすかによって、現実味の捉え方が大きく変わってきます」と指摘する。

「“形式的に動いている”状態まで持っていくこと自体は、多くの自治体が骨身を削って取り組んでいらっしゃるところだと思います。しかし、その後のコストや継続運用の見通しに目を向けると、とても健全とは言えない状況です。初年度はなんとか予算に収めたとしても、2年目・3年目には継続が難しくなる財政的リスクを抱えているケースも多く見受けられます」(中島氏)

 たしかに、ガバクラへの移行が困難なシステムについては、デジタル庁と総務省が連携して移行支援を行う「特定移行支援システム」の枠組みも存在しており、一定の猶予措置は用意されている。しかし実際には、対象となるのは主にベンダー側にやむを得ない理由がある場合に限られ、自治体が独自判断で適用を求めることは難しい。つまり、どれだけ苦しい状況であっても、法に基づき「やらざるを得ない」のが実情なのである。

「補助金が5年間延長されるような対応も出ていますが、特定のシステムだけが延長されたところで、それに連携する他の業務システムがそれに対応できるのかという問題があります。制度的な柔軟性がない中で、結局、全体としての解決にはつながっていないのです」(中島氏)

 そもそも、クラウド移行と標準化という大きな負荷を、同時並行でこなさなければならない構造自体に無理があるという声も少なくない。標準化の目的や効果についても「これほどのコストをかける価値が本当にあるのか」「コスト増に対して得られるメリット・大義を言えない」といった疑問が現場では噴出している。

「自治体職員の間では、標準化だけでも手一杯なのに、クラウド関連業務まで降ってきているという声が多数あります。制度改正などの影響で要件が変動するたびにベンダーとの調整が発生し、見積もりの高騰にもつながっています」(中島氏)

 制度としての理念に異を唱える人は少ないものの、「では、どのように進めれば良いのか」という具体的な議論が進まず、現場では不安と混乱だけが増幅している──これが、2025年半ばのリアルな現状なのだ。 【次ページ】高すぎるコストはこのまま?「来年以降」を左右するポイント
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