• 2025/10/04 掲載

先送りが命取り…BCG日本共同代表が指摘、新規事業の「撤退力」を高めるべき3つの理由(2/2)

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日本企業は「適切な撤退」ができているかというと……

 撤退力について論じるに至った課題意識の2つ目は、日本企業が新規事業からうまく撤退できているとは言い難いことにある。たとえば、新規事業の進捗が芳しくない状態でも、経営陣は「推進チームが頑張っているのでもう少し様子を見たい」「せっかくここまでリソースをかけてきたのに、ここでやめるのはもったいない」などと考え、撤退の意思決定に至らないことが多い。また、より自分本位な目線からは「血を流すような経営判断は避けたいので、次の世代に意思決定を託そう」という気持ちも働き、撤退の議論を後回しにしてしまう状況も少なくない。

 現場の推進チームも強い責任感から頑張りすぎてしまい、自ら白旗を上げることへの躊躇(ためら)いも強い。いずれの場合も、適切な撤退ができずに傷口を広げる、あるいは貴重な人材を成功可能性の低い戦線に貼り付けてしまうことになる。このような状況が慢性化し、「我が社は始めたことをやめたり、撤退するのが苦手である」と思い込んで、やめること自体を諦めてしまう場合もある。これは健全とは言い難く、撤退力を高めることの重要性や方法論をどうにも提起したくなる。

劇的に変化しつつある経営環境…撤退の重要性も増す

 課題意識の3つ目は、いざ撤退に関してしっかり考えようと思ったとしても、新規事業における適切な撤退に役に立ちそうな定石やヒントをまとめた手引書があまりないことである。「いかに新規事業を始めるか」については多くの方々が議論を展開しているものの、やや後ろ向きとも映る「撤退」に光を当てているビジネス書はかなり少ない。さらに言えば、経営に限らずより広い範囲における撤退という行為についてでさえ、論じている書物は少ない印象がある。

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新規事業撤退力を高める』をクリックすると購入ページに移動します
 2020年代に入り、経営環境は劇的に変化しつつある。地政学的リスクへの対応、AIをはじめとした革新的技術の進展、サステナビリティの観点からの資源利用の制約など、極めてインパクトの大きいファクターが次々に出現してきている。このような激変期には、先行きが見えにくくなる既存事業を補うために収益源が求められ、同時にさまざまな事業機会も発生する。したがって、新規事業の重要性はますます高まるだろう。企業が積極的に新規事業を着工するには絶好のタイミングだが、あわせて、想定外の結果になってしまった新規事業から撤退する重要性も増していく。

 必要な撤退を決断し実行に移すことが、結果的により多くの新規事業の着工につながっていく、このポジティブサイクルを加速させる一助となるのである。

※本記事は『新規事業撤退力を高める』を再構成したものです。

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