- 2025/10/03 掲載
マジで深刻な「部活限界」地域…救済に挑む「BリーグのAI活用」、想像以上の成果とは(3/3)
指導者不足の解消にもつながる「AI活用」
特に可能性の大きさを示したのが、指導者不足や試合機会の確保といった、先述した課題を解決する役割だ。部活動では指導者不足が深刻で、競技未経験者が顧問を務めるケースも少なくない。こうした状況に対し、佐野氏はAIスマートコーチの可能性を次のように語る。「AIスマートコーチには、普段の練習内容を記録して共有できる機能があります。これを活用し、離れた地域の指導者同士が連携すれば、指導の質を高められるのではないかと考えています。またAIの分析結果を活用することで、バスケ経験のない顧問や指導者でも自信を持って指導できるようになったとの声もあります」(佐野氏)
AIスマートコーチの普及が進めば、指導者間のコミュニケーションが活発になり、近隣や同レベルの学校を把握しやすくなる。これにより、練習試合や交流の機会の拡大が期待できる。少子化による学校の統廃合で練習相手の確保が難しくなる中、AIスマートコーチの役割はますます重要性を増しているのだ。
さらに、指導者を増やしていくための取り組みも進む。BリーグはJBAと連携し、指導者育成制度の充実を図っている。
「指導者数の底上げを目指し、エントリー層が気軽に受講できるeラーニングなどの仕組みを整えています。また、ユースやスクールにはどのような指導が効果的か、有識者と共に指導体系の検討を進めています」(佐野氏)

今後も、指導者不足をはじめとするさまざまな地域課題を解決していくために、AI活用はBリーグにとって欠かせない手段となっていくだろう。
生成AI活用も、成功させる「文化醸成」の秘密
Bリーグでは、AIスマートコーチ以外にも、リーグ運営のさまざまな場面でAIを活用している。たとえば、リーグ全試合で撮影される大量の写真をAIが自動解析し、選手名やプレー内容をタグ付けすることで、画像検索の効率を大幅に向上させている。また試合ごとのハイライトニュースや試合前の見どころなど、広報用リリースの作成にも生成AIを試験的に導入している。
こうしたAI活用を成功させるポイントとして、佐野氏は文化の醸成について次のように語る。
「日々、新しい技術や海外の事例を収集し、AIに対する感度を高め、社内でやりたいことがあれば『AIで実現できないか』と考える習慣を持つことが大切です。また、AIを活用するために業務プロセス自体を見直すことも重要です。そのためには、新しいことにチャレンジする姿勢が欠かせません」(佐野氏)
2015年に設立したBリーグは、事業規模としてはまだ小さい組織だ。限られたリソースの中で、ファンや地域に向けて実現したい施策は数多くあり、その達成にはAI活用が欠かせないという認識が社内全体に広がっている。
今後の展望について、佐野氏はこう締めくくる。
「私たちの力だけでできることには限りがあります。だからこそ、さまざまな企業とのつながりが必要です。また生産性を高めるだけでなく、価値そのものを向上させるためにAIを最大限活用したいと考えています。人とのつながり、AIとのつながりを通じて、2050年の『感動立国』の実現を目指します」(佐野氏)
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