• 2025/12/06 掲載

「これ急ぎで」「確認したいことが…」次々と襲い来る忙しさの根源を断つ、簡単な方法(2/3)

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ほんの少し「変える」だけで、あなたの1日は劇的に変わる

 実は、私たちが「忙しい」と感じている時間の大半は、本当の意味での生産的な作業ではありません。

 メールへの対応、突発的な会議への出席、「ちょっといい?」という割り込みへの対応。

 これらへの反応はすべて「リアクション」です。

 相手が行動の起点となり、自分はそれに応える形で行動しています。

 ここで興味深い事実をお伝えしましょう。

 生物学的に、リアクションは疲れますが、アクションは疲れません。

 野生動物を想像してみてください。

 獲物を狙うとき(アクション)は何時間でも集中していますが、危険を察知したとき(リアクション)はぐったりと疲れてしまいます。

 私たち人間も同じです。

 自分から始めた行動は、長時間続けても比較的疲労が少ないのに対し、相手の都合で動かされる行動は、短時間でも深い疲労を感じます。

 つまり、「忙しく感じる」のは、1日中リアクションばかりしているからなのです。解決法は簡単です。

 「リアクション」を「アクション」に変えること。

 たとえばメール返信。

 これを「メールが来たから確認する」(リアクション)から「9時と15時にまとめて処理する」(アクション)に変えるだけで、自分のペースで対応できます。

 「ちょっといい?」への対応も同様です。

 「今すぐ」(相手のペース)ではなく「14時からなら30分取れます」(自分のペース)に変える。

 最初は「感じ悪いと思われないかな」と不安になるかもしれません。

 でも実際にやってみると、相手も「この人はしっかり時間管理をしている」と評価してくれることが多いのです。

 たったこれだけで、あなたの1日は劇的に変わります。

人は本能的に「サプライズ」を減らそうとしている

 神経科学者によると、生物の目的は「サプライズを最小化すること」だとされています(注1・注2)。私たちは本能的に、予想外の出来事をできるだけ減らそうとしています。

注1:Friston, K., Kilner, J. & Harrison, L.: A free energy principle for the brain. Journal of Physiology, Paris, 100(1-3), 70-87, 2006
注2:磯村拓哉:自由エネルギー原理の解説:知覚・行動・他者の思考の推論. The Brain & Neural Networks, 25, 71-85, 2018

 リアクション行動は、予想外に対応することが前提なので、生物の目的にそぐわないのです。

 重要なのは、失敗や予想外の出来事を次回の予測に組み込むことです。

 なぜなら、これから起こることはコントロールできませんが、すでに起きたことを活かして次の予測の精度を高めることはできるからです。

 具体例で説明しましょう。

 毎日15分で終える予定の資料整理が、今日は30分かかったとしましょう。多くの人は「計画通りにできなかった」と落ち込みます。

 でも、多忙感に振り回されない人はまったく違う見方をします。

 「このパターンがあることが分かった」と考えるのです。
「今日は資料が普段より多かった」
「途中で電話が入った」
「いつもと違う種類の書類があった」
 このように予想外の出来事の要因を分析すると、次回の改善点が見えてきます。

 そうすれば具体的な対策が立てられます。
「資料が多い日は30分で見積もろう」
「電話が入りそうな時間帯は避けよう」
「新しい書類があるときは15分余分に取ろう」
 つまり、次の「サプライズ」を事前に予測して対処できるようになるのです。

 これは、リハビリテーションの分野では「反復なき反復」と呼ばれています。

 同じ作業を繰り返しているようでいて、実は小さな改善と学習によって絶えず進歩している状態。

 この積み重ねこそが自分で時間をコントロールして作業を行っている感覚、つまり行為主体感につながります。

 新しいテクニックを次々と覚えるのではなく、今の作業で生じるサプライズを1つずつ減らしていく。

 この小さな作業が、あなたの時間をあなた自身のものにするのです。

「受け身」か「主体的」かで時間の感覚は大きく変わってくる

 では、リアクションをアクションに変えていくために、毎日の作業の中ではどんなことができるでしょうか。

 まず、リアクションが起きるということは、「自分以外の誰かと一緒に作業を進めている状況」にあるということです。

 1人で完結する作業では、基本的にリアクションは発生しません。

 メールが来たから返信する、会議に呼ばれたから参加する、上司から依頼されたから対応する。

 これらはすべて、他者との関わりの中で生まれるリアクション行動です。

 つまり、リアクションをアクションに変える鍵は、コミュニケーションの場面にあります。

 同じコミュニケーションでも、受け身で対応するか、主体的に関わるかで、時間の感覚が大きく変わってくるのです。

 それでは、コミュニケーションの場面で、どのような工夫をすればよいか考えてみましょう。 【次ページ】相手を尊重しているつもりが「責任を押し付ける」形にも
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