• 2026/05/20 掲載

オタフクはなぜ100年続く?実は日本の9割が同族経営、経産省が示す“お家騒動”回避術

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同族経営(ファミリービジネス)と聞くと、「お家騒動」や「ワンマン経営」「身内びいき」などネガティブなイメージを抱く人も多いかもしれません。しかし日本の全企業の9割以上はファミリービジネスであり、雇用を生み出して地域経済を支える存在でもあります。経済産業省はこうした同族企業が、透明性が求められる時代に合わせて持続的に成長するためのガイダンスを公表しました。ファミリー企業特有のリスクを回避し、次世代へ円滑にバトンをつなぐための具体的なステップについて、100年以上にわたりオタフクHDを率いる佐々木家の実践例をまじえて解説します。
執筆:小達 紀治   編集:ジャーナリスト 川辺 和将

ジャーナリスト 川辺 和将

元毎日新聞記者。長野支局で政治、司法、遊軍を担当、東京本社で政治部総理官邸番を担当。金融専門誌の当局取材担当を経て独立。株式会社ブルーベル代表。東京大院(比較文学比較文化研究室)修了。自称「霞が関文学評論家」

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「同族経営=悪」は勘違い?100年以上続くオタフクの秘訣とは…
(写真:YUTAKA/アフロ)

「お家騒動」はなぜ起きる? 同族経営の強みと落とし穴

 そもそも「ファミリービジネス」とは、創業者やその一族が世代を超え、株主または経営者として、企業の存続や発展に重要な役割を果たす会社と、経済産業省の「ファミリーガバナンス・ガイダンス(案)」(以下「新指針」)では定義しています。

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【画像付き記事全文はこちら】中堅・中小企業の大部分をファミリービジネスが占める
(出典:経済産業省

 ファミリービジネスには、「長期的な視点での投資判断」「迅速な意思決定」「地域社会への貢献」といったメリットがあるとされています。その一方、創業期には一体化していた「家族」「所有」「経営」という3つの要素が、企業の成長や世代交代とともに分離し、複雑化していく宿命も抱えています。

 結果として、「経営者の独善的行動(エントレンチメント)」や「成長意欲の減衰」、そして親族間での「お家騒動」といった“ガバナンス不全”が、デメリットとして意識されるのも事実です。新指針は、こうしたリスクが現実化することを「まれなケース」としながらも、メンバー間の関係性が複雑化する前に、早めにルールを整備しておくことの重要性を訴えています。

 ではファミリービジネス企業がこのようなリスクを回避しつつ、その強みを最大化するには具体的にどのようなルール整備が必要なのでしょうか。

同族経営の成功に必要なのは「〇〇の仕組み化」

 前提として必要になるのが、「ファミリー」の定義づけです。世代が進むにつれて「ファミリー」と呼べる可能性のある人物の範囲は拡大していき、ビジネスへの関与の在り方にも「白黒」では判別しにくいグラデーションが生じることになります。ファミリーの線引きを明確にすることが、ルール整備の準備段階で必要不可欠と言えるでしょう。

 そのうえでトラブルを未然に防ぎ、事業を持続的に成長させるために不可欠なのが「意思決定の仕組み化」です。ファミリー内の意思決定を支える「ルール」には、大きく“ソフトなルール”(価値観や行動指針などの「精神的」なルール)と“ハードなルール”(法的拘束力や制度などの「形式的」なルール)があります。

 ソフトなルールとしては「ファミリー憲章」や「ファミリー宣言」、「ファミリー協定」が挙げられます。これらは、ファミリーの理念や、メンバーの行動規範、株式承継の方針などを記したもので、一体感の醸成や、ビジネスとファミリーの関係維持を目的としています。また、一部のメンバーだけで決めるのではなく、次世代を含めたファミリー全体で議論し、納得感を持たせることが重要です(記事後半でオタフクHDの事例を紹介します)。

 ハード面では、各社の状況や形態に応じて、法的な仕組みを取り入れることが考えられます。具体的には種類株式の導入、株主間契約の締結、株式の信託契約などが挙げられます。ソフトなルールと違って一定の拘束力、強制力が期待できる一方、状況変化に応じた柔軟な対応が難しくなるという注意点もあります。

 加えて、ファミリーと定義された人が、企業活動のうちのどの部分を、どの程度まで行うのかといった「範囲と役割」の明確化も求められます。ファミリーメンバーの入退社や役員への登用基準を明確化し、不合理な処遇差をなくすなど、公私混同を避ける仕組みも重要です。

 経営の透明性を高めるため、ファミリーと利害関係のない社外役員や、「番頭」的な幹部人材を関与させることも有効な選択肢となるでしょう。株主としては、議決権行使の方針決めや、経営危機などの際の関与方針を明示するなどが検討要素です。非上場のファミリービジネスにおいても、少数株主との対話を通して、役員が説明責任を果たす必要性が指摘されています。 【次ページ】手遅れになる前に…「お家騒動」を回避する“2つの鉄則”
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