- 2026/06/12 掲載
スタバはなぜ現場発で動けるのか? 元CEOが語る、「上司を動かす」報連相と反論術
「上司の言う通り」はもう古い…“部下”という言葉の違和感
──岩田さんは新著『「君にまかせたい」と言われる人になる51の考え方』で、「上司と部下」という関係性を問い直されていますね。従来の「上司が指示し、部下が従う」という関係は、どのように変わってきているのでしょうか。岩田松雄氏(以下、岩田氏):今の時代に、「部下」という言い方が本当にふさわしいのかという思いがありました。
昔は徒弟制度のように、上司や親方のほうが仕事をよく知っているという前提がありました。しかし今は、業務の専門化がどんどん進んでいます。特にAIやITの領域では、上司よりも若いメンバーのほうが詳しいことも珍しくありません。
そうなると、リーダーに求められるのは、細かく指示を出すことではなく、方向性を示すことです。会社のミッションやビジョン、バリューを伝えた上で、後は1人ひとりが自分で判断して動く「自走型の組織」になっていかなければならないと思います。
野球でも、キャプテンと選手を「上司と部下」とは言いませんよね。キャプテンは、たまたまチームをまとめる役割を担っているだけです。ビジネスでも同じで、上司と部下という対比そのものが、時代に少し合わなくなってきているのではないでしょうか。
結局、リーダーであっても、メンバーであっても、大事なのは「人としてどうあるか」です。
──環境変化が激しくなる中で、立場に関係なく、自分で考えて動くことが求められているということでしょうか。
岩田氏:そうですね。今は本当に何が起こるか分からないVUCA(Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性)の時代です。パンデミックも戦争もありますし、AIのような大きな社会的インパクトもあります。
このような時代には、自分の目の前の仕事だけにとらわれてはいけません。よく「イノベーション」という言葉が使われますが、多くのイノベーションは、ゼロからまったく新しいものを生み出すというより、すでにあるもの同士の新しい組み合わせから生まれることが多いものです。
つまり、自分の仕事とはまったく違うところにヒントがあるかもしれない。だからこそ、専門バカになってはいけない。好奇心を持ち、さまざまな分野に目を向ける視野の広さが大切です。
もう1つ重要なのは、同じ情報に対して自分がどう反応するかです。たとえば、コップに水が半分入っている。それを「もう半分しかない」と見るのか、「まだ半分ある」と見るのか。同じ事実でも、見る側の視点によって意味は変わります。
今は情報の洪水です。その情報にどう反応するか、どう意味づけるか。そこに、視点を鍛える必要性があると思います。
「信頼される人」は何が違う? 元スタバCEOが見ていたこと
──岩田さんは日産、ゲームメーカーのアトラス、ザボディショップ、スターバックスなど、さまざまな企業で経営に携わってこられました。人を信頼して仕事を任せるとき、どのような点を見ていたのでしょうか。岩田氏:まず見るのは、一所懸命やっているかどうかの真摯さです。
もちろんミスはあります。一所懸命やっている中でのミスであれば、私は叱ることはあまりありませんでした。指導はしますが、それ以上責める必要はない。本人がすでに反省しているなら、「次は頑張ってね」と言えばいいと思います。
一方で、一所懸命さを感じないときは厳しく叱りました。手を抜いているように見える、やる気が感じられない。そのようなときは、普段あまり怒鳴らない私でも、本気で叱ったことがあります。
もう1つ大切なのは、方向性です。会社のミッションやビジョン、価値観に共鳴しているかどうかです。
仕事の細かい内容は、今や上司よりも現場のメンバーのほうが詳しいことが多い。だからリーダーは、細部まで全部コントロールすることはできません。任せるしかない。そのときに、価値観や方向性が合っているかどうかが非常に重要になります。
「この人には任せられる」と思えば、私は大まかな報告だけで後は任せます。一方で、少し不安がある場合は、「何か手伝うことはない?」と言って、こまめに報告を求めます。人によって任せ方は変えていました。
──その「一所懸命さ」は、どのように伝わるものなのでしょうか。
岩田氏:やはり、最後は行動に出ると思います。日産にいたころ、私は販売会社に出向して、飛び込み営業をしていた時期があります。当時は、販売会社で一番になって社長賞を取りたいという思いがありました。
あるとき、納車の途中で酒屋さんの自転車と接触してしまったことがありました。こちらは車ですから、当然こちらが悪い。私はその後、何度も酒屋さんに通って、「大丈夫でしたか」「申し訳ありませんでした」と伝え続けました。私はお酒をあまり飲めないのですが、ワインを買ったりしながら通っていました。
すると、その酒屋の大将が、だんだんワインのことを教えてくれたり、値引きをしてくれたりするようになり、最後には「お宅で扱っている一番高い車のカタログを持ってきて」と言われたのです。当時、フォルクスワーゲン・サンタナという高い車がありました。そのカタログを持っていくと、値引きもせずにその場でサインしてくれました。
こちらとしては、車を売ろうとして通っていたわけではありません。本当に申し訳ないという気持ちがありました。でも、そういう真摯な姿勢は相手に伝わるのだと思います。 【次ページ】“従順な部下”ほど危ない? 上司に刺さる「誠実な反論」とは
人材管理・育成・HRMのおすすめコンテンツ
PR
PR
PR