- 2026/06/12 掲載
スタバはなぜ現場発で動けるのか? 元CEOが語る、「上司を動かす」報連相と反論術(3/3)
「上司は部下の全部は見えない」信頼される人の“報告術”
──一方で、「頑張っているのに上司が見てくれない」と感じる人も多いと思います。成果をどう伝えるかも重要でしょうか。岩田氏:自分をアピールすることも重要だと思います。自慢話が自慢に聞こえない人っていますよね。逆に、少し言っただけで自慢に聞こえてしまう人もいる。だから言い方はとても大切です。
私は、できるだけファクトベースで話すのが良いと思います。たとえば、「何台売れました」「これだけ収益が出ました」というのは事実です。それ以上のことを大げさに言う必要はありません。10のことを100に言うと、「この人は大げさだ」と思われます。でも、10のことを12くらいに伝えるのは、私はいいと思います。さりげない自己アピールは必要です。
──上司は、思っているほど部下の仕事を見えていないのでしょうか。
岩田氏:部下が思っているほど上司は見ていません。上司はその上の上司ばかり見ています。上司にもやることがたくさんありますから。「下が上を見るのは3日で分かるが、上が下を見るのには3年かかる」という言葉があります。部下から見ると、上司のことはよく見えます。でも上司から見ると、部下の仕事は意外と見えていないものです。
だからこそ、成果をさりげなく伝えることは大切です。ただし、それは誇張ではなく、事実として伝える。そこを間違えなければ、自己アピールも悪いことではありません。
本部の命令ナシで動く…スタバが“自走する組織”を作れた理由
──スターバックスでは、ミッションや価値観の浸透が非常に重要だったと思います。社長として、どのように現場を見ていたのでしょうか。岩田氏:スターバックスにはもともと、「人々の心に潤いを与える」という素晴らしいミッションがあり、店舗で働くパートナーたちにも繰り返し共有されていました。
私が社長になった当時は、リーマンショックなどの影響で売上が落ち、社内には自信を失っている雰囲気がありました。ただ、私は入社してみて、「これはすごい会社だ」と感じたのです。財務内容も悪くないし、利益も出ている。何より、お店は素晴らしい。だから、「もう一度、自分たちのやっていることに自信を持とう」と伝えました。
たとえばフードの廃棄ロスです。売上が落ち業績が悪くなると、店舗は仕入れを減らして廃棄を抑えようとします。もちろんコスト意識としては正しいのですが、夕方に商品が並んでいなければ、お客さまを失望させてしまう。それは「ミッション」に反するわけです。廃棄ロスは少なければ良いのではなく、適正な比率を目指すべきだと伝えました。今は別の意味で廃棄ロスを減らすニーズが高まっていると思いますが。
──ドリップコーヒーの2杯目を同日内に限り安く提供する「ワンモアコーヒー」は岩田さんがCEOに就任された年に開始されました。こちらも、大きな施策だったそうですね。
岩田氏:そうですね。2杯目を100円で飲める仕組みを、国内どの店舗でも使えるようにしました。面白いのは、このアイデアを出したのがマーケティングや営業ではなく、物流の責任者だったことです。「それはいいね」と思って、すぐに進めました。
当初、私はレシートではなく券を渡したほうがいいと思っていましたが、レシートの下に印字すれば、費用もかからずすぐ始められると言われ、それならやろうと決めました。
すると、店舗のパートナーたちがそのレシートを接客の材料にしてくれたのです。朝に東京でコーヒーを買ったお客さまが、出張先の仙台や北海道で2杯目を頼めば、「朝からご出張ですか。大変ですね」と声をかけられる。同じ店舗で2回目なら、「お帰りなさい」ということもできます。
こうした工夫は、本部が細かく指示したものではありません。お店のパートナー(スタバではCEOからアルバイトまでこのように呼ばれる)たちが、自分たちで考えてやってくれたことです。それを聞いたときは、本当に感動しました。ミッションが共有されているからこそ、パートナーが自律的に動けるのだと思います。
後編では、明日からAI時代に重宝され、信頼される人材になるための考え方について掘り下げる。岩田氏が語った、唯一無二になる人の3つの条件とは──。
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