- 2026/06/12 掲載
スタバはなぜ現場発で動けるのか? 元CEOが語る、「上司を動かす」報連相と反論術(2/3)
“従順な部下”ほど危ない? 上司に刺さる「誠実な反論」とは
──本書では「従順ではない誠実さ」という考え方が出てきます。これはどのような意味でしょうか。岩田氏:私は自分の判断が100%正しいなどと当然思っていません。間違うことも多くあります。リーダーの目的は、自分の言うことを聞かせることではありません。組織として結果を出すことです。だから、チームの人が「岩田さん、それは違います」と言ってくれることは非常に大切です。
お客さまに近い人たちのほうが多くの一次情報を持っています。私は全体を見ていますが、お店や最前線の細かな情報までは分かりません。もし私が持っている情報が足りなかったり、間違っていたりすれば、誤った判断をする可能性があります。
そのときに、「それは違います。なぜなら現場ではこういうことが起きています」と言ってもらえるのはありがたいことです。
──上司に反論するのは、なかなか難しいと感じる人も多いと思います。
岩田氏:大切なのは、感情的にならず、事実に基づいて反論することです。
リーダーとメンバーでは、持っている情報が違います。現場の情報はメンバーが持っている一方で、会社全体の情報や大きな方向性は、リーダーのほうが多く持っているでしょう。だからこそ、お互いの情報を出し合う必要があります。そこで「岩田さんは間違っています」と言うのではなく、「現場ではこういう事実があります。私はこう考えています」と伝える。
それは反抗ではなく、組織として正しい意思決定をするための「誠実さ」だと思います。
──リーダー側にも、聞く耳が必要ですね。
岩田氏:そうですね。優秀なトップほど、いろいろ分かってしまうので口を出したくなるものです。けれど、全部に口を出して決めていると、周囲は考えなくなります。どうせ後で怒られるなら、最初からトップに聞いたほうが早いとなってしまう。
そうなると、意思決定する人が育ちません。経営者やリーダーにとって一番大切なことは「決めること」です。任せるなら、口を出さないことに耐えなければならない。
「船長は唇から血が出るほど唇を噛む」という言葉があります。人に任せるには、それくらい我慢する忍耐が必要なのだと思います。
上司をうまく動かす人は何が違う? 信頼される人の「報連相」
──本書では、「上司をコントロールする報連相」という考え方も紹介されています。どのような報連相をすれば、上司をうまく動かせるのでしょうか。岩田氏:まず大切なのは、ファクトをきちんと伝えることです。自分に都合のいい情報だけをだして、上司を誘導するのは良くありません。まず事実を伝える。その上で、自分の意見を言う。つまり、事実と判断を分けることです。
「こういう事実があります。私はこう考えています」と伝える。そうすれば、上司は上司で、別の情報やより大きな視点から判断できます。
──報告の量や頻度は、どの程度が良いのでしょうか。
岩田氏:信頼を得て任せられるまでは、ある程度は過剰に報告していいと思います。「もういいよ、君に任せるから」と言われるまでは、過剰報告、過剰サービスくらいでいい。任せられていないのに勝手にやると、「勝手なことをした」と思われてしまいます。
だから最初は、少し多いくらいこまめに報告する。その上で、「もういいよ」と言われたら、少しずつ減らしていけばいいのです。
──上司によって、求める報告の仕方も違いそうです。
岩田氏:その通りです。だから、上司を観察することがとても大切です。
自分の上司が、さらにその上の上司に対してどう報告しているかを見る。細かく報告している人は、自分にも細かい報告を求める傾向があります。ポイントだけを話している人は、部下にもポイントを押さえた報告を求めるかもしれません。
上司がその上司に対してどう振る舞っているかは、非常に大きなヒントになります。長いサラリーマン経験上これはかなり当たっていると思います。
──報連相は、単に上司に情報を渡すだけではないのですね。
岩田氏:そうです。報連相は、上司との信頼関係を作る手段でもあります。上司から見て、「この人は事実をきちんと伝えてくれる」「自分の意見も持っている」「都合の悪い情報も隠さない」と分かれば、信頼して少しずつ任せやすくなります。
逆に、事実と意見が混ざっていたり、自分に都合の良い情報ばかり出していたりすると、上司は不安になります。そうなると、任せられなくなる。「任される人」(=信頼される人)になるには、まず相手が安心して判断できる材料を渡すことが必要だと思います。 【次ページ】「上司は部下の全部は見えない」信頼される人の“報告術”
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