- 2026/08/23 07:10 掲載
「もう少し安くなりませんか」にどう返す? キーエンス流“値引き交渉術”(2/2)
顧客の値引き要求の「本気度」を見抜く、1つの質問
とはいえ、現実には「本当に予算がないケース」と「とりあえず言ってみるケース」が混在しています。この2つを見極めず、すべてを真に受けて対応する必要はありません。そこで1つ、私が値引き要求を軽い気持ちでしてくる顧客によく使っていた「リトマス試験紙」となる質問を紹介させてもらいます。それは、
「今回ご相談いただいたお値引きですが、仮に弊社が一切ご対応できない場合、御社としてはどうなるのでしょうか?」です。この問いには、値引き要求の「正当性」と「本気度」を測る効果があります。ここで重要なのは、この問いかけをするときにはあなたが示せる最高純度の決意を秘めた眼差しで相手の目をしっかり見て問いかけて、値引きの重要性を気づかせてあげてください。
この質問を投げかけられた顧客の反応は、2つに分かれます。
「実は、上長決裁が○○円までと決まっており、この価格では稟議が通らない」
「競合のA社から○○円という見積もりが出ており、御社を選ぶための社内説得材料が必要だ」
このように、きちんと理由を答えてくれます。彼らはあなたの製品価値を理解した上で、導入に向けた現実的な障壁を共有してくれているのです。この場合は先ほどの「5つの交換条件」を使い、真摯に交渉のテーブルに着くべきです。
「いや、どうなるというか……まあ、安いに越したことはないからね」
「うーん、恐らく他社も検討してみることになりますかね……」
このようにこの質問の答えに詰まると思います。彼らの値引き要求には、論理的な理由や切実な背景が存在しないからです。
もし相手がBの反応であれば、あなたが慌てる必要は一切ありません。
「そうですか。ご協力させていただきたい気持ちは山々なのですが、今回のご提案は○○様の課題解決のために算出した、本当に最大限の価格でして……!」と説明し、値引きせず突き進むか、あるいは「これ以上は1円も本来は厳しいのですが今回に限り……」と恩着せがましく500~1,000円程度でも値引くだけでご満足いただけるケースが大半です。なぜなら顧客は値引き額より「値引かれたという事実」をむしろ欲しているからです。
BtoBでは、顧客は「自分の財布」から払うわけではない
最後に、営業として大事なマインドセットを覚えておいていただきたい。それは、BtoBの世界では、顧客は本人の財布から払っているわけではないという厳然たる事実です。
彼ら担当者にとって重要なのは、「安く買うこと」よりも「課題を解決し、そしてあわよくば社内で評価されること」です。ゆえに、あなたの提案が「課題を解決できる」という確信さえ持てれば、価格は「稟議を通すためのロジック」の問題でしかなく、本当に値引き対応が必須な顧客は意外と少なかったりするものです。
「競合に持っていかれる!」というあなたの不安な気持ちはわかります。しかし、顧客の立場に立てば、競合他社をゼロから調べ直し、アポを取り、また同じ状況説明をしてデモを受けるのはとんでもない工数がかかり、面倒くさいものです。
「受注できなくなるかもしれない!」
顧客は、あなたとの商談にすでに多くの時間を投資しています。その投資を回収するために「あなたに課題を解決してほしい=あなたから買ってこれまでの苦痛から解放されたい」と思っているのです。
値引きを求められたときこそ、自社の「価値」を伝え直す
安易な値引きはあなた自身が積み上げた価値を否定し、顧客との関係性を歪めます。値引きを求められたら、まずは「なぜ必要なのか」を問いましょう。そしてもし応じるならば、それは必ず「対等な価値交換」でなければなりません。
BtoBの顧客が買うのは「価格」ではなく、「課題解決という未来」です。その確信を胸に、適切に対応していきましょう。
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