- 2026/08/18 06:10 掲載
AIで時短したのになぜ疲れる?脳科学者に聞く「脳疲労」、思考を手放さないAIの使い方
お茶の水女子大学ヒューマンライフサイエンス研究所助教。1984年、北海道生まれ。東京工業大学大学院総合理工学研究科博士課程修了。博士(理学)。専門は神経生理学、生物物理学。脳科学に関する一般向け著作も多数執筆。
前編はこちら(※この記事は後編です)
AIで時短したはずなのに、脳はヘトヘト…なぜ?
生成AIの登場によって、情報検索や文章作成は格段に速くなった。ところが、「以前より頭が疲れる」「集中が続かない」と感じる人も少なくない。作業そのものは短縮されているが、AIが出した答えが正しいかどうか、自分の意図に合っているかを確認する作業は、むしろ増えている。AIを使う上で必要な力について、毛内氏は次のように語る。
「AIから出てくるのは文章なので、まず『読解力』が試されます。しかも、正しくプロンプトを打たなければ、自分が求めている結果は返ってきません。つまり、何を知りたいのかを適切に言葉にする『作文能力』も必要です。皮肉なことに、AI時代なのに、私たちは読解力と作文能力を問われているのです」(毛内氏)
AIの回答を正しく扱うには、じっくり読み、疑い、考える必要がある。ところが厄介なことに、脳が疲れていると短絡的になり、AIが出した“答えらしいもの”にも飛びつきやすくなってしまうという。
そもそも私たちはAIで便利になったはずなのに、なぜ疲れているのか。そしてどのように「脳疲労」を防ぎ、AIを使っていけばよいのだろうか。
気のせいじゃなかった…「脳を疲れさせる」正体
脳を疲れさせる要因として毛内氏がまず挙げるのは、現代人が接する情報量の多さだ。「1つの要因は情報過多です。私は『情報メタボ』と呼んでいます。現代では、仕事、通知、SNSなどから大量の情報が絶えず入り、必要な情報かどうかを判断する回数も増えています。私たちは常に情報の取捨選択に迫られて脳が疲れてしまうのです」(毛内氏)
ただし、情報が多いことだけが「脳疲労」の原因ではない。毛内氏は、「受け身であること」も脳にとってストレスになると指摘する。
「受け身で情報を受け取る時間が増えると、自分で選び、試し、結果を確かめる経験が減ります。それが、自分で状況を動かしているという感覚を弱める場合があります」(毛内氏)
AIに聞けばすぐにもっともらしい回答を目の前に出してくれる。便利だが、人間はほぼ受け身だ。何もしなくても自動的に入ってくる膨大な情報、常に選択を迫られる状況、そして受け身であることのストレス…これらが積み重なって、私たちの脳は疲れてしまうのだ。 【次ページ】AIで思考が広がる人、奪われる人の「決定的な違い」
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