- 2026/08/04 07:10 掲載
【9月施行】行政AIの調達ルールが一新…デジ庁が改定、事業者を評価するチェック項目(2/2)
行政も事業者も要確認、新チェックシート4つの要点
調達を行うための事業者の評価や選定、契約条項策定の場面では、ガイドラインで示された「調達チェックシート」と「契約チェックシート」を使用することが求められています。今回の改定で各シートがどのようにアップデートされたのか、行政側・事業者側の双方が特に留意すべきと考えられる4つの注目ポイントに焦点を当てて解説します。■画像・音声への全面拡大
初版ではテキスト生成AIを念頭に「LLM」に限定されていた表現が、対象範囲の拡大を受け、「生成AIモデル」や「生成AIシステム」へと置き換えられました。
これに伴い、「調達チェックシート」には、対象となるAIの属性として「テキストを含む」「音声を含む」「画像を含む」といった入力・出力別のフラグが新設されています。
この分類に基づき、有害情報の出力制御や公平性の確保、テキストの差別的表現の排除に加え、「特定のカテゴリ(たとえば職業)に関わる人物画像の生成を求めた場合に、個人の属性(たとえば性別、年齢、人種)に関する偏りのない出力を生成できる仕組み」など、マルチモーダル特有の対策例が追加されています。
■知財・肖像権対策の具体化
文化庁が取りまとめた「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」や経済産業省の「コンテンツ制作のための生成AI利活用ガイドブック」の動向を受け、知的財産権や肖像権、パブリシティ権(著名人の声や容姿の保護)への対策がチェックシートに盛り込まれています。
たとえば、データ提供者との適切な契約締結や著作権法第30条の4(非享受目的)への準拠、学習データをそのまま複製物のように出力させないための学習手法の担保などが求められることになります。
■障害や攻撃から復旧できるか、「回復力」も評価対象に
予期せぬトラブルや攻撃が発生した際のレジリエンス(回復力)を評価する項目も新設されました。
たとえば、改ざんされたモデルから、正常な別バージョンや代替モデルへの即時切り替えが可能な仕組みの構築や、悪意ある学習データの局所的な除去手法の確立といった対応が求められています。
■AIに「成果保証」を求めない?契約条件も見直しへ
AIの品質は、学習データや基盤モデルの特性に左右され、一般的なソフトウェア開発と同様の成果保証が難しい部分があります。
そこで改定版の「契約チェックシート」では、「成果保証ではなく、性能改善・品質向上に向けた技術的支援を受ける等の契約形態を取ることが望ましい」との考えを打ち出すなど、事業者が提供するサービスの形態に応じて契約の内容を柔軟に設定するよう促しています。
具体的には、「成果物の定義はユーザーのサービス利用目的を十分にカバーできるよう範囲を定めること」「サービス利用目的に照らして、提供条件(提供時期、頻度、態様その他の条件)や提供する成果物の内容(性質、量、粒度その他の内容)を定めること」「ユーザーが成果物に関して知的財産権等一定の権利を取得する場合の権利取得条件(権利移転の対象、対価の有無、ライセンスの有無・内容その他の条件)を定めること」などが望ましいとされています。
9月までに何を準備すべき?行政AI案件の対応ポイント
ガイドラインの改定版は2026年9月1日に全面施行されます。これに先立って、各府省庁におけるAI統括責任者(CAIO)の設置や組織内ルールの整備に関する規定は6月30日までに必要な措置を講じることとされ、新技術に対応するAIガバナンスの枠組みについては、7月1日から適用が始まっています。行政にAI関連システムを提供する事業者側は、チェックシートのアップデートを踏まえて、著作権や肖像権に関連する法制度との整合性、レジリエンス確保の状況を改めて精査するとともに、契約内容について、AIの特性・実態に合わせて行政側と入念に目線合わせを進める必要がありそうです。
AIは技術進展だけでなく法令など制度環境も目まぐるしく変化し続けているため、今回紹介したガイドライン改定に対処しつつ、当局における議論の動向を継続的にウォッチすることも大切です。
法規制・レギュレーションのおすすめコンテンツ
PR
PR
PR