- 2026/08/07 06:40 掲載
過去最高益のコメ兵、なぜ「赤字企業」を16億円で買収? 狙う「売却前データ」の正体
赤字企業を16億円で買う、異例の一手
コメ兵HDは2026年7月29日、ガレージバンクの全株式取得を完了したと発表した。モノ資産の管理・活用アプリ「cashari(カシャリ)」を運営する同社の発行済み株式を100%取得し、完全子会社とした。株式取得額は16億円。アドバイザリー費用など8,000万円を含む概算総額は16億8,000万円で、2027年3月期の連結業績に与える影響は精査中としている。ガレージバンクの2025年12月期売上高は10億5,306万円だった。一方、営業損失は2億685万円、当期純損失は2億4,261万4,000円で、3期連続の営業赤字。純資産は4,225万9,000円にとどまる。株式取得額は、直近売上高の約1.5倍、純資産の約37.9倍、コメ兵HDの2026年3月期営業利益の約17.2%に相当する。
ただし、いずれも単純計算であり、この倍率だけで買収価格が割高だったとは判断できない。
同社の売上高は2023年12月期の1億4,415万8,000円から、2年間で約7.3倍に増えた。カシャリは、利用者が持ち物を売却して資金を受け取った後、リース料を支払って同じ物を使い続けられるサービスだ。査定、本人確認、契約、入金までをアプリで完結し、リース期間の終了後は返却か再購入を選べる。貸付ではなく、売買契約とリース契約を組み合わせるセール・アンド・リースバックが基本である。
顧客規模は慎重に見る必要がある。ガレージバンクはカシャリについて累計40万ダウンロードを突破したと説明する。一方、コメ兵HDは「40万人超の顧客データ」を画像査定・与信判断の基盤として挙げた。月間アクティブ利用者数や契約者数、1人当たりの利用実績は公表されていない。
40万人がすべて収益を生む顧客だとは言えないだろう。それでも、消費者が商品を手放すと決める前から接点を持てる仕組みは、現在の利益とは別の買収価値になったとみられる。今後は、カシャリの顧客基盤や査定・与信データをコメ兵HDの仕入れや販売にどう生かし、16億円の買収額に見合う成果につなげられるかが焦点となる。
在庫500億円、急成長を支える「仕入れのジレンマ」
その半面、連結棚卸資産は前期末から100億5,200万円増え、500億4,600万円に拡大した。棚卸資産の増加を短期借入金で賄ったことなどから、有利子負債も599億3,000万円へ増えている。営業活動によるキャッシュフローは10億4,500万円の支出。コメ兵HDは、現預金と流動性の高い棚卸資産の合計が有利子負債を上回るため、リスクは限定的だと説明している。
もっとも、在庫は多ければよいというわけではない。2026年3月期の在庫回転率は前期の3.8回転から3.9回転へ小幅に改善したが、売上総利益率は22.2%から21.3%へ低下した。両者を掛け合わせた同社独自の指標「交叉比率」も85.3%から82.5%へ下がった。利益率が相対的に低い時計や金地金の販売構成比が高まったことなどが影響したという。
とはいえ、積み増した在庫を法人販売やオークションへ振り向け、売上総利益額そのものは増やした。在庫は資金負担であると同時に、販売機会を作る競争力でもある。
競合のゲオホールディングスは、店舗網を広げて仕入れ接点を増やす。2026年3月末の2nd STREETは国内931店、海外148店の計1,079店。2027年3月期には国内100店、海外38店の出店を計画している。
対してカシャリは、店舗に商品が持ち込まれる前から、持ち物の種類や査定需要に触れられる可能性がある。コメ兵HDが期待するのは、仕入れや流通サイクルの活性化と、グループ全体のGMV(流通取引総額)の非連続的な成長だ。
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