- 2026/08/26 06:10 掲載
【最新調査】生成AI導入率が44%に倍増?それでも活用が進まない“5つの業務”(2/2)
【生成AI導入状況】大企業 vs 中小企業
「IPA DX動向2026」の調査結果における生成AI の導入状況を経年で見ると、「導入している」の回答率が2024年度の22.6%から2025年度の44.0%と急激に伸びています。逆に「関心はあるがまだ特に予定はない」は2024年度の27.4%から2025年度の18.4%と大きく減少しています。
一方、生成AI導入状況を従業員規模別に見ると、規模による格差が顕著になっています。
- 1001人以上の企業:導入率76.5%
- 100人以下の企業:導入率20.6%
大企業では生成AI導入が進んでいるが、中小企業はまだ初期段階にあるのではないでしょうか。
私は、AI導入にはデータ整備、システム連携、運用体制などの初期投資が必要であり、規模の経済が働くと考えています。中小企業は「AIを使う前のデータ整備」でつまずいているケースが多いのではないでしょうか。
【AI活用の成果】どれだけ価値創出につながっている?
AI利活用の用途を見ると、AI活用が進んでいる領域の上位は以下のように「コンテキスト依存度が低い」ものが占めています。- 文書・音声の要約・翻訳・校正:82.5%
- 文書・レポートの作成(社内・社外):80.5%
- 情報検索・収集・分析・レポーティング:77.0%
これらは「自然言語ベース」で完結し、企業固有のデータモデルや業務コンテキストを深く理解しなくても成立する用途であると考えられます。
一方で、基幹業務に近い領域は軒並み低くなっています。
- 業務プロセス・ワークフローの自動化・最適化:21.2%
- 経営・事業計画・マーケティング・意思決定支援:17.0%
- 自社製品・サービスの高度化:10.9%
- 生産・物流・サービス提供の計画支援:6.0%
- 不正検知・リスク管理:9.7%
これらはすべて、「データ構造が複雑」「業務コンテキスト依存」「企業固有の意味モデルが必要」といった特徴を持っています。
私は、事業の高度化や新たな価値創出につながる用途での利活用が限定的なのはデータの構造化ができていないからではないかと考えます。つまり、導入は進んでいるものの、AIが理解できるデータ構造が整っていないため、価値創出につながっていないのではないでしょうか。
【企業文化】制度は整えたのに…成果を止める“本当の壁”
「労働環境・人材育成」の「さまざまな挑戦の機会が社員の中長期的な成長につながっている」もほぼ同じ回答率であることから、チャレンジの機会や評価が十分ではないと考えられます。
「労働環境・人材育成」では、「新しいスキル等を習得することが奨励される」の「できている」の回答率が54.0%であるのに「高いスキルを持っていることが報酬に反映される」が32.3%、「学習を支援する制度やプログラムが充実している」35.1%であるなど、スキルに対する要求と育成・評価とのギャップも見られます。
私は、これは、心理的安全性が弱く、意思決定が遅く不明確であり、長期視点が欠如しており、経験学習の仕組みが不足しており、評価・報酬の連動が弱い企業が多いために起きているのではないかと推察します。
人材育成は 制度(研修・評価等)×文化(心理的安全性・挑戦・学習) の掛け算で成立すると考えられますが、日本企業は文化・風土側が弱いので、このままでは、どれだけ制度を整えても成果が出ないのではないでしょうか。
製造業DX・フィジカルAIから見た突破口
ここからは私の専門領域である製造業DXの観点から再解釈したいと思います。
製造業では、データは単なる情報ではなく「フィジカル(物理世界)の状態」をあらわしたものです。下記などの情報をデジタル化し、連携し、AIなどで活用することなどが今後求められると考えます。
- 設備の振動データ
- 加工条件
- 品質検査データ
- 物流・サプライチェーンの動的データ
AIがフィジカルに入り込み、現場の判断・制御・最適化を担う「フィジカルAI」が台頭してきています。日本企業がこの領域で強みを発揮するためには、下記などの情報をAIが扱うことができるデータに変換することが必要です。
- 現場の暗黙知
- 高度な製造技術
- 設備の精緻な制御
- サプライチェーンの複雑性への対応力
この、前提となるのは「データ連携」や「組織変革」であり、ここが弱いままではフィジカルAIの価値は発揮できないのではないでしょうか。
これを実現するためには、DXをIT部門の取り組みではなく、経営が主導する事業変革に昇華させるべきではないでしょうか。経営層が「変革の痛み」を受容しなければ、DXは効率化に留まってしまうのではないでしょうか。
「IPA DX動向2026」は、日本企業のDXが「普及したが変革には至っていない」という現実を示しています。しかし、これは悲観すべき状況ではないと考えます。むしろ、DXの初期段階が成熟し、次のフェーズに進む準備が整ったと捉えないといけないのではないでしょうか。
DXは技術導入ではなく、企業が自らの存在意義を再定義する営みです。
この調査結果が、日本企業が「効率化のDX」から「価値創出のDX」へ踏み出す転換点になることを期待したいと思います。
〔参考文献〕
・独立行政法人情報処理推進機構(IPA).IPA DX動向2026.2026年7月公開
https://www.ipa.go.jp/digital/chousa/dx-trend/dx-trend-2026.html
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