- 2026/11/04 06:10 掲載
蛇口から酒…若者にヒット「銭湯居酒屋」の実態、飲み放題438円で儲かる緻密な仕組み(2/3)
月1,000万円赤字から月商3倍、「蛇口から酒」で起きた大逆転
2019年に創業したバーチでは、当初「肉バル」などの居酒屋業態を中心に複数店舗を運営していた。しかし、ほどなくしてコロナ禍が到来し、宴会需要の急減により経営環境が一変した。「当時は月間で約1,000万円の赤字を抱えるほど厳しい状況で、従来のビジネスモデルを根本から見直す必要がありました。そこで着目したのが、コロナ禍でも外食需要が残っていた若年層です」(バーチ 広報担当者)
20代を中心とする若者に刺さるビジネスモデルを模索するなかで、代表取締役の高橋光基氏らによって生まれたアイデアが、「酒が出る蛇口」だった。1994年生まれの高橋氏自身も当時は20代で、「SNSで共有したくなるような新しい体験が若者にとって価値になる」と考えたのだ。
「そんなものはできない」と何度も断られながらも片っ端から業者にあたり、酒が出る蛇口を実現。2021年11月に名古屋の肉バルをテルマエに業態転換し、インフルエンサーマーケティングに注力すると、狙い通り若年層に刺さった。以前は300万円だった月商が、3倍の900万円を越えたという。
「『蛇口からお酒が出る』というわかりやすい独自性に若い世代でも気軽に利用できる価格帯、さらにSNSとの相性の良さが相まって集客につながりました。多くのお客さまが、自身でお酒を注ぐ様子を写真や動画と共にSNSでシェアしています」(バーチ 広報担当者)
そこで、自社店舗をテルマエに業態転換したほか、フランチャイズも含めて全国的に新規出店を重ねていった。出店エリアは、20~30代が多く集まる繁華街や大学生・社会人の飲食需要が見込める駅前エリアが中心だ。
テルマエの場合、「蛇口から酒を注ぐ体験」が大きな来店動機となり、駅前の一等地でなくとも事業が成立しやすい。そのため、一般的な飲食店よりも物件選定の幅を広げられる点が強みだという。
安いだけじゃない…若者らの心をつかむ“体験”
全国27店舗に広がった現在も、主な顧客層は20代を中心とする若年層だ。ただ、郊外の店舗では30~40代や家族での利用も見られる。以前の肉バルでは客単価が3,000円を越えていたが、テルマエでは約2,500円にとどまる。一方で、集客力は格段に上がった。KPIとしてリピーター数20%以上を掲げており、おおよそ半数の店舗が達成しているそうだ。
飲み放題の利用率は、開業当初から約88%を維持する。店舗数が増えた現在でも、「蛇口から酒を注ぐ体験」が来店動機になっていることが多い。SNSなどで事前にテルマエを知り、「話題の体験をしてみたい」と興味を持って来店するという。
「ユニークな体験」や「安さ」が目立つテルマエだが、リピーター獲得に向けて、飲み放題の自由度や料理のおいしさといった「居酒屋としての利便性」を打ち出すことも重要視する。最近では、馬肉を使用したハンバーグなど商品開発にも注力し、飲み放題だけでなく、「料理」を目的とした来店を促せる店舗づくりを進めているそうだ。
それにしても、1時間「438円~」という価格帯でしっかり利益が出るのかは気になるところ。どのように採算を合わせているのか。 【次ページ】格安なのになぜ儲かる? 利益を生む「緻密な仕組み」
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