- 2026/11/04 06:10 掲載
蛇口から酒…若者にヒット「銭湯居酒屋」の実態、飲み放題438円で儲かる緻密な仕組み(3/3)
格安なのになぜ儲かる? 利益を生む「緻密な仕組み」
低価格を維持しながら利益を出すことができている理由を聞くと、「従来の居酒屋とは異なる店舗運営の仕組みを構築しているためです」と広報担当者は回答した。「コストカットに最も貢献しているのが、蛇口を使った『セルフ式の飲み放題』です。ドリンクを作って配膳する作業をお客さま自身で行っていただくため、一般的な居酒屋と比べてスタッフによる作業を大幅に削減できます。また、モバイルオーダーも導入して少人数で運営しやすい仕組みを整えています」(バーチ 広報担当者)
「蛇口から酒が出る体験」はコストカットが第一の目的ではなく、最大の狙いはエンタメ性による体験価値の向上とSNSでの拡散性だった。結果として、顧客満足度を上げながら同時に人件費削減を達成できたという。
実際に提供してみると、「1時間で平均2.5杯」と顧客が意外と飲まないこともわかった。「蛇口から酒を注ぐ体験はしたいが、何度も離席するのは面倒」という人もいるらしい。
また、調理における原材料・工程の簡素化や標準化に加え、厨房全体に過度な負荷がかからないようメニュー構成も工夫しているそうだ。
店舗の約7割を低賃料の「2階以上」や「地下」としているのも、コストカットに直結している。上述したとおり、新規層は「体験」が来店動機になることが多く、通行量だけに依存しない集客モデルを構築できているという。
「お得感」を強く打ち出しつつも、バランスを取るための価格設定も行っている。お通し代は418円と一般的なチェーン居酒屋の相場に合わせ、22時以降は一律10%割増の深夜料金が発生する。
こうした施策の結果、FLコストを48%(原価率27%、人件費率21%)に維持。一般的にFLコストは、60%以下が適正とされる。居酒屋業態では深夜帯の人件費などがかさみやすいが、低水準に抑えられているという。
タイ進出、121店舗目標…急拡大テルマエに立ちはだかる壁
テルマエでは、2026年5月にタイに1号店を開業し、海外進出を果たした。日本人駐在員が多いシラチャに、現地のパートナー企業と協業して出店。蛇口から酒が注げる体験や低価格は変わらない。飲み放題は1時間99バーツ(約460円)、テルマエ串は1本10バーツ(約46円)だ。出店目標数としては、2028年までに121店舗を掲げる。タイでも反響が得られており、国内だけでなくアジア圏を中心とした海外展開も精力的に進めていく方針だ。立ち上げから順調に拡大するテルマエだが、さらなる成長には何が課題になるのか。
「店舗数増加に伴う『クオリティの担保』や『衛生管理』が最大の課題であると考えています。現在、食品安全や公衆衛生のリーディングカンパニーであるエコラボさんと協業して、清掃マニュアルの作成や衛生管理のオペレーション化に取り組んでいます」(バーチ 広報担当者)
衛生管理に対する消費者の目がシビアになるなか、多くの人が触れる「セルフサービス式の蛇口」というビジネスモデルに懸念を持つ人もいる。そうした課題に向き合いつつ、組織を支える体制づくりも強化しているそうだ。
当然、原価高騰への対処も求められる。テルマエでは、飲み放題プランや名物商品、生ビールなどの価格を開業以来、値上げしていない。「必要に応じて原材料やメニューの切り替えをしながら原価を調整し、当面は現状の価格を維持したい」と広報担当者は話した。
広く捉えれば競合は多いが、なかでも全国に38店舗(2026年10月下旬時点)を展開する「ときわ亭|0秒レモンサワー 仙台ホルモン焼肉酒場」は代表格かもしれない。全卓にサワーサーバーを完備し、顧客自身が好きなタイミングで注げる「0秒レモンサワー」を60分550円で提供している。
同ブランドは、仙台のホルモン焼肉店「ときわ亭」と複数の飲食店ブランドを運営するGOSSO(ゴッソ)が協業して運営する。期間限定のフェアやキャンペーンに公式アプリの運用、ユーチューバーとのコラボなど精力的に攻めている印象だ。
「銭湯居酒屋」というユニークなコンセプトはテルマエならではの強みだが、今後の成長過程では、さらなる差別化が求められそうだ。
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