- 会員限定
- 2009/05/14 掲載
不況下、企業のIT投資の実態は?真に有効なIT活用の羅針盤(前編)
野村総研 研究理事 淀川高喜氏
IT投資を「減らす」企業が初めて「増やす」を上回る
──過去の調査として比較して、2008年度の調査結果(図1)の特徴は何でしょうか。2003年の調査開始以来、IT投資を「減らす」企業の割合が、初めて「増やす」と回答した企業の割合を上回ったことです。さらに2009年度の予測でも「増やす」企業はいっそう減少し、「減らす」意向の企業が増えています。全体では「前年度と同程度」との回答が例年通り約40%と最も多いのですが、IT投資を「減らす」企業が増えたことは顕著な特徴です。
図1 IT投資額増減の推移 |
---|
![]() ※クリックで拡大 Source:NRI,2009 |
──さらに図2を拝見すると「どのテーマに投資するか」について、ほとんどすべてのテーマについて、重視する企業の割合が減少しているようです。それほど企業は、IT投資に消極的になっていることを物語っているのだと思いますが、そのなかで、唯一「経営管理機能強化支援」が大幅に増加し、約40%の企業が「重視する」と答えています。これはどのような理由からでしょうか。
私たちも調査結果を見て意外だと思いました。「IT投資を減らさなければならない」という状況のなかで、その抑制された金額をどこに振り向けるか、どうしても実行しなければならないものを示していると思います。 この「経営管理機能強化支援」は「J-SOX対応」を示していると考えています。本調査の対象は3000社で上場企業です。他の項目は抑えても、内部統制の強化、金融商品取引法に対応できる形にしないと、次期からの上場維持に関係してくるので、「経営管理機能強化支援」が大幅に増加したのではないでしょうか。
もうひとつ、「経営管理機能強化支援」を重視する企業の業種・業務の属性を見ると、ITを使って先進的なことを行おうという企業ではありません。本当の意味で経営者の判断を高度化するためにITを上手に活用するといった高度な情報活用を志向するような性格の企業ではなく、むしろ非常に当たり前のことを当たり前に行っている企業が多かったので、「経営管理機能強化支援」は「J-SOX」対応を指していると判断できます。
──J-SOXへの投資とは、具体的にどのようなものでしょうか
会計に関わる受注や請求、決算などの業務プロセスに対してきちんと必要な内部統制が行われているかを見るものと、もうひとつはシステムそのものについて妥当な運営が行われているかを評価すること、この2つがあります。従来、大半の企業には不備がありました。J-SOX対応は業務のプロセスだけを変えれば可能になるものではなく、システム化されているのが大半なので、システムの変更が必要となり、そのため、「経営管理機能強化支援」を重視する企業が増えたと見ています。
図2 IT戦略役割の変化 |
---|
![]() ※クリックで拡大 Source:NRI,2009 |
関連コンテンツ
関連コンテンツ
PR
PR
PR